社説 日中は共に敗者となる道を歩むのか(4/20)
小泉純一郎首相と胡錦濤国家主席による日中首脳会談が、早ければ22日からインドネシアで開くアジア・アフリカ会議の際に実現する。両国関係は国交正常
化以来の最悪状態にある。17日の外相会談でも深い溝は埋まらなかった。現状では対立がさらに激化し、双方のダメージは計り知れない。両首脳には事態の沈
静化と両国関係の安定に向けてきたんのない意見交換を望みたい。
中国は暴行の非認めよ
事態の沈静化のためにまず必要なことは、中国政府がデモにおける破壊・暴力行為を断固許さない姿勢を示し、厳しく取り締まることだ。中国当局は9日、デモの参加者が北京の日本大使館や大使公邸を投石などで破壊する不法行為を放任した。
それどころか「責任は中国側にはない」(中国外務省)、「日本は反省を迫られよう」(温家宝首相)などと正当化するような発言を行った。これが火に油を注ぐ形となり、反日デモは全土に拡大、目を覆いたくなる破壊・暴行を繰り返した。
「愛国無罪(愛国に罪はない)」というデモのスローガンは言語道断である。「愛国」を唱えればどんな暴力も許されるなら法治国家ではない。中国在留日本人や企業の損害、不安は察するに余りあるが、さらに傷ついたのは中国自体だ。
彼らの行動を厳しく批判、処罰することなしに暴行の再発は防げない。17日の外相会談で李肇星外相は破壊行為の謝罪を拒否した。小泉首相は胡錦濤主席との会談について「非難の応酬はしたくない」と述べているが、この点では明確に抗議、再発防止を強く求めるべきである。
北京や上海での破壊行為については、中国側から非公式に補償の申し入れもあるようだから相応の反省はあるのだろう。謝罪を話し合いの入り口とするようなかたくなな態度をとる必要はないが、日本側は繰り返し中国民衆の破壊・暴力行為の再発に強く警鐘を鳴らす必要がある。
手をこまぬいていれば同様の事態が繰り返される可能性がかなりあるからだ。今年は「抗日戦争勝利60周年」に当たり、様々の記念行事が目白押しだ。5月4日は抗日行動の先駆けとなった「5.4運動」(1919年)の日であり、夏から秋にかけて毎月行事が予定されている。
しかも日中摩擦の火ダネがあまたある。一連のデモのきっかけは先月後半、アナン国連事務総長が日本を安全保障理事会常任理事国の有力候補とする発言をしたことや、日本の歴史教科書検定への不満だった。
歴史認識のほかに、尖閣諸島をはじめとする東シナ海の領土・領海や台湾問題などの対立が激化している。唐家セン国務委員は18日の町村信孝外相との会談で、「これらの敏感な問題での言動を慎んでほしい。場合によっては計り知れない結果をもたらしかねない」と警告した。
中国では政治がすべてに優先する。共産党政権を維持するためには、89年の天安門事件のような事態も辞さない国であることを日本人は再確認しておく必要がある。
90年代以降の日中摩擦、対立の根源には「中華民族の偉大な復興」を旗印に富国強兵を通じてアジアの盟主の座に返り咲こうとする中国と、これを抑止しよ
うとする日米の角逐がある。中国は沖縄トラフ(海溝)までを自国の排他的経済水域と主張、台湾統一を通じて東シナ海を内海と化し、アジア太平洋における
リーダーシップを握ることを長期の戦略目標としている。
本音で話し合う時だ
対する日本は2月、日米両国の共通戦略目標に初めて「台湾海峡を巡る問題の平和的解決を促す」ことに合意。東シナ海の日中中間線付近における中国のガス田開発に対抗して、日本側海域で民間業者に試掘を認める手続きに入った。
日中国交正常化は、ソ連の脅威を抑止するという中国側の切迫した事情のもとで実現した。しかしソ連崩壊後、海洋進出を本格化し始めたこの10年余りの間に、日米が東のライバルとなり始めたのである。
中国は経済発展のため日本の資本、技術を必要としているが、台湾統一や領土・領海問題で引き下がることはない。対応を誤ると、日中の国益が正面衝突して取り返しのつかないことになりかねない。様々の中国リスクへの備えが必要だ。
首脳会談でうわべの友好を演出する時代は終わった。両国が共存共栄の関係を築けるのか、対立・抗争が泥沼化して共に敗者となる道を歩むのか。日中関係は重大な岐路にある。お互いが対抗、敵対することの甚大な不利益を直視し、本音の話し合いを始める時である。
また領土・領海の対立などでは、国際社会を味方につけた側が有利な立場を確保できる。小泉首相の靖国参拝は少なくとも現時点では、中国はもちろん国際社会の支持を得ていない。改めて再考を求めたい。
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