「プップッ プップッ」モーニングコールが7時10分に響き1 日は始まった。私は受話器をとり「helloー」と眠そうにでるやいなや、「ペラペーラペラペーラ」(まったく聞き取れない、ということです)としゃべられ、すぐに軽快なミュージックがなった。ぼう然とした私は、その音楽に向かってとても丁寧に「Thank you」といって電話をきった。
朝7:30分散歩のあと、朝食だ。きのうの夕食もそうだったが、「からい」。油断して食べると口の中が燃えるので、慎重におとなしく食べる。通訳の人が「今日はマレー料理ネ」と言うが、私には昨日と今日の料理のちがいがわからない。昨晩の料理はマレー料理でなかったのだろうか?他の人もそう思っているにちがいない。オレンジジュースがとぶように飲まれてゆく。からい。
9時(日本時間朝10時)に練習のためホテルを出発する。バスからみた街並はなかなか良好だ。ただ、よく見るとゴミは結構落ちている(注;シンガポールではゴミを捨てると罰金)。やはり公衆道徳にうるさい国だといっても、守らない奴はいっぱいいるのだろう。日本もそうだ。また、すれ違う車は日本車ばかり見られる。5年くらい前のカリーナ、シビッククラスが多い。高級なものになると、BMW、ベンツと急に格が上がる。ベンツはかなり多い。残念ながらニッサンローレルは1台も見なかった(注;当時私が乗っていた)。「ゆっくり走ろう、ロ、ロ、ローレル」ではシンガポールの街と合わないかもしれない(注;当時流行していたローレルのCMです)。
競技場で練習をはじめる。グランドはスーパーX(注;競技場の鋪装路の名前で世界的にもポピュラー)で、思った以上にちゃんとしている。日本でいえば、富津(注;千葉県富津市陸上競技場)に似ているかな?他の国の人々も走っている。日本人はみな、日本人としか話をしないし、日本人だけで練習をするので、「俺はちがう!!」と早速国際交流に走った。グランドも走らずに。まず手はじめに、ハードルをやっているノッポ の人から。めがねをかけているが、ちょっとかっこいい、ヤングマンだ。握手をしながら、
私;「Hello, I am Japanese Hurdle player」(こんちは、俺日本のハードル選手なんだ」
相手;「Hello,ペラペラペラ」(こんにちは、〜〜〜〜;注;聞き取れなくてわからない)。 気さくに話してくれた。が、向こうの話す内容に合わせていたら、どうにもならないから、
私;「This hurdles, yours?」(このハードル、君のかい?)(注;無茶苦茶な英語である)
相手;「Yes,ペラペラペラ」(そうだよ、×××××)
私;「Yah〜」(ヤー)
相手;「You're a hundled ten meter?」(君は110mハードルかい?)
私;「Yes, ひゃくじゅう meter hurdle」(そうさ、110mさ)
と、堂々とわたり合い、私はストレッチングにはいった。向こ うはちょっとヘタなハードルをし、終わったらしい。私は大声でこういった。
私;「When did you come?」(いつ来たの?)
相手;「Hong Kong」(香港!)
俺が悪かったのか、向こうがアホだったのか、やっぱり俺の英語じゃ目的は達せられないのか、と反省してしまった。香港は英語圏。どうみても私が悪い。しばし、ハードルの基本動作をしていると、Bigな姉ちゃん1人と、ふつうの姉ちゃん2人がすぐ近くで見ていることに気がついた。私を見ているのでなく、その向こうでスタートダッシュを繰り返している褐色の選手を見ているのだなァ、というのはアホでもわかる。普通のLadyにすぐ話しかけられるほど、私は度胸はない。が、Too BigなLadyに、
私;「Are you a Shot putter?」(砲丸投げの選手ですか?)
相手;「Yes!」 と気軽に答えてくれた。う〜ん、中国系かな?と思ったところで
私;「Where are you from?」(どこから来たのですか?)
相手;「ブラペ〜ラ〜」
ここで、私には「ブラナー」と聞こえたので、俺、ブラジャーのことを聞いたのかな?と訳の分からないことを考えてしまった。しかし5秒くらいで、フッと、「Oh!ブルネイ」と英語だか日本語だかわからない英語で納得した。かたことの英語でムチャクチャに5分ぐらい3人と話をし、練習を再開。やや時間も経過すると、そのブルネイ軍団およそ10名が楽しそうに写真をとっている。その光景を見ながら、俺も写してくれるかな?と突然思い、大声で
私;「Me too, OK?」(俺もいいかな?)
相手;「Come on, Come on!」(来いよ、来いよ!)
とよんでいるではないか!肩を組んで数枚の写真をとり、またわけのわからない英語で交流を深めた。
日本選手団より東南アジア系の人々の方が私にはフィーリングが合うのかもしれない。またまた、からい昼食をホテルでとり、明日のスケジュールが発表された。俺は1発決勝だから、とノンビリとプログラムを見ていると、110mH決勝のらんに、誰も名前が書いていない。「出場選手が決まってないんだな」と独りごとを言いながらプログラムを流してみていたら、「110mH Semi Final(110mH準決勝)の文字がとびこんだ。何!!!準決勝があったではないか。ちくしょうー2本走るのかー、さらに追い打ちをかける次の驚き。「0900HRS」の文字。「く、く、く、9時ィー」。 そう、9時に1発目があるのだ。ということは7時30分にはウォーミングアップを始めるのだ。ということは4時には起きるのだ。こんな事、我が日本では(注;私は、の意)10年近く経験がない。昔、走った気がするが、まさかシンガポール。そんなことシンガポール。というわけで、110mH2本と4×100mリレーに出場することとなった。
午後はフリー。みんなで、両替のため銀行に行き、S$(シンガポールドル)にかえてもらった。私は3万円をチェンジ。Isetan(伊勢丹)ショッピングセンターで買い物。日本人がそろって買い物をするのは、いかにも日本人らしく、イヤなので単独行にする。ただ、スリに遭ったりからまれたりされるとやっかいなので、おもいっきり鋭い目つきで歩くことにした。はいった店はスポーツ店とメガネ屋。スポーツ店は、いい品が全然ないので、すぐに出る。5−6軒あったが、全部そうだ。メガネ屋では、日差しがきついのでサングラスを買うため勇気を出して入った。最初の店ではとにかく知ってる英語を並べて値切ろうとした。
カタカナで表記してみると、ハウマッチ、チープ、ディスカウント、モアディスカウント、オーノー、イクスペンシブ、アーハー、エクスキューズミー!これだけで、勝負に出たのだ!
気に入ったサングラスはToo Expensive(高すぎる)のですぐにあきらめた。サングラスを10個くらい出してくれた店員さんに申し訳ないことをした。この店員さんは、背の高い日本人の私にちょっと驚き、日本人はみんな小さいと話をしていた。店員さんは、私の事を「ソルジャー( 戦闘員)か?」としきりに言っていたが、私は正直に「Athletics player」と答えてしまった(注;もちろんAthleteが正解)。今度からは陸上競技でなく、陸上自衛隊にしよう。海外派遣をよそおえばいい。2軒目でバレンチノのサングラスを買った。値切ったが、「No,this is sale!」と簡単にいわれた。そういえばまずまずのモノだし、どうやら本当に値切れなさそうなのでS$50(約4000円)で買った。値切りに失敗だ。しばらく町中をぶらつき、ホテルに戻る。
夕食は選手数名と日本料理店に行く。食事の内容および料金はこんなもんか、という程度で、可もなく不可もなく。ウエイトレスは現地の女性で、日本料理店のため箸やお茶など日本流のサービスをしてくれる。ところが、気になることがいくつもあって、我慢しなければいけないんだろうが、こらえきれず文句をとうとう言ってしまった!というのも、店員が最初にお茶を入れてくれたのだが湯のみになみなみいれた。少し飲んだ。すると、また、なみなみいれた。これを繰り返した。同じテーブルの者で協議をして、ここは日本料理店なのだから日本のマナーを教えるべきだ、ということになった。さらにウエイトレスは来て、また勝手にお茶をいれようとした時、私はサッと、
私;「In Japan,Don't full tea, About 70%. OK?」(日本では、お茶をいっぱいダメね、70%くらいよ、大丈夫?」といったつもり)
相手;「Yah〜!」(わかったよ) と返事をした。
我々は国際交流に大いに役立ったととても満足した。そして1分後、この娘はテーブル全員の湯飲みになみなみとお茶をついで、戻って行った。