チョモランマ

ネパールへトレッキングへ行って、ゴーキョピークからのチョモランマの大きな山容と出合った時、何故かこうして眺めて満足できる山ではないことを感じてしまった。
「いずれは、登りに行くことになるかもしれない」と思ったものの、その時の自分は雪山を始めて一シーズンも経っていなかった。
縁を信じるとしたら、自分にとってはチョモランマだった。出合った時のフィーリングがモノになってしまうなんて、夢物語のはずだったのが、5年後、本当にチョモランマ遠征隊の一員として、登りに行けるチャンスを得てしまった。
一生に一度だけのチャンスと思い、行くからには絶対に成功したかったから、高度順応は慎重に時間を掛けて、歩く速度まで管理しながらおこなった。調子が悪いこともあったけれども、順応が進んで体が軽くなっていくたびに、手応えが大きくなっていた。
8300mでのファイナルキャンプでの一夜は、興奮して眠れなかった。2時、ファイナルキャンプをシェルパと共に、出発した。
「先へ出なよ」 シェルパに声を掛けられた時、頂上が間近であることがわかった。一緒に肩を組んで進んだら、視界を覆うものが急になくなった。空が弧を描くように広がっていた。1998年5月19日7時30分、無風の8848mの頂上に立った。
しかし、喜んでばかりいられない現実に気がついた。岩稜だらけの帰路が待っていたのだ。下山中の事故が圧倒的に多いだけに、気を引き締めて、下山を開始した。
ひたすら下り続けた。そして、最後の雪壁を下り、約6600mの安全地帯まで降りてきた。ピッケルとアイゼンを仕舞って、夕映えの頂上を振り返った途端、喜びが爆発した。
手が届かないはずの想いが実現してしまうなんて、人生ってなんて素晴らしいのだろう!自分を信じて、続けてきて良かった!
あと一時間歩けば、共に挑戦してきたメンバー達が待つキャンプにたどり着く。
実録!頂上アタック チョモランマの写真・ルート図
高所順応方法 トレッキングの魅力
涅槃と登山