有機農業の現地普及に向けて

市場開拓


 どのような仕事に携わっていても一番難しいのは、市場を如何にして築くかにあると思います。 インドネシアで有機農業を広める活動をしていますが、その点はここでも同じです。

  派遣された当初 (2003年1月頃)、スマトラ最大の都市メダン(農場から車で約1時間30分) のスーパーやレストランでは、ほとんど有機野菜を扱っていませんでした。野菜の試作を行い 出来た野菜を見本にいろいろな所へプロモーションに行きましたが、全く反応はありませんでした。

 そんな悪戦苦闘の日々が数ヶ月が経ったある日。「ブラスタギの山奥で 日本人がなんか変なことやっている。」という噂をもとに、インドネシア人の大学講師が畑を訪れたのが最初でした。 彼女の紹介で、中国系インドネシア人が経営するメダン唯一の有機食材を扱うお店の情報を得ました。

 私の拙いインドネシア語でオーナーさんと話をさせて頂き、おかげ様でそのお店に野菜を“有機野菜”と して卸す事が出来ました。「虫が居てる」「形が悪い」「泥つきは嫌」などなど、多くのコメントをお店の方から 頂きながら も、こちらの状況を説明し、少しづつですが「甘い」「美味しい」という嬉しい声も頂けました。また、オーナーさんも畑に来られ色々お話をする機会が あり、信用を得ることができました。

  活動を始めて、2年間はその有機ショップとメダンに出来た日本食レストランに野菜を卸す程度で、 他は地元の市場に 余剰野菜を安値で卸していました。幾ら有機農業の良さを 現地農民に説明しても、利益が出なければ誰も真似しようとは 考えません。あたりまえですが...「あの日本人は金を無駄遣いして、醜い野菜を作っている!」との声を何度も 聞きました。

 次の転機が訪れたのが、活動を始めて2年経った時でした。畑の現状や私の考えなどを毎月ニュースレター として有機ショップに渡していました。その消費者の一人から、家に遊びに来ないか?とお誘いがありました。 早速お宅にお邪魔して、有機農業の事、私個人の事などを話した後、お店経由ではなく個人的に野菜を購入したいと 伝えられました。そしてその人から友人、知人を紹介して頂きました。更に新しい消費者がまた人を紹介してくださる。 といった、口コミで消費者の数が増えました。

 活動開始から2年半経った現在その数は 25軒ほどに増えました。現地農場の運営費(日本人の諸経費を除いた額)は未だに赤字ですが、その半分程は現地での収入で賄え るようになりました。 とりあえず、現時点では現地運営費を現地の収入で賄え自立運営(日本からの資金援助なし)できる状態に向けて活動しています。 そしてそこから次の可能性が見えてくると思います。

[画像/消費者と] width=
 野菜を有機農法で作る事は、難しくないというのが、これまでの活動を通しての実感です。消費者 に信用して貰えそして喜んでもらえれば、自然と口コミでその数は増えてきます。もちろん、その機会を 求めてアンテナを張っておく事や人脈を築く事は不可欠です。

 有機野菜=良い物 と考えて、作れば必ず売れる。 いや売れないはずがない。でも、売れない。と理想と現実の間で悩んだ時期もありました。でも、 大切なのはそれを作っている人であること。幾ら自分で有機野菜といっても、私自身を 信用してもらえないと有機野菜である事を信じてもらえません。その事に、遅ればせながら気が付きました。 今は、単に信用してもらうだけではなく、野菜を通して消費者に感動を与える事が出来るようになれればと考えています。

研修生


 当農場では、有機農業に関心のある人を研修生として受け入れ、共に生活し活動しています。現在、研修生の数は3名です。 一番長い研修生で2年強、この活動に携わっています。農法自体はすごく簡単なので半年も研修を 受ければ誰でも野菜を作る事が出来るようになります。

 しかし、できた野菜を如何にして売りそれで生活するか、がとても難しい所です。これまでの2年半の 活動で2名の研修生が独立しました。一人は、実家が養魚を営んでいるので、それプラスとして 有機野菜の栽培を行っています。野菜だけでは未だ生活できない状況ですが、毎週 3軒の消費者に有機野菜として出荷しています。口コミでその数は増えそうですが、野菜の生産が 未だ安定していないので待って貰っているようです。もう一人は、野菜ではなく養鶏を試みましたが有機農法では 難しく断念してしまいました。

 現状は未だに芳しくは無いですが、私が日本に戻り数年後に再びスマトラを訪れた際、研修生が有機農業で 自立した生活を行っていれば、それに勝る嬉しさはないと思います。

[画像/研修生と東京農大生と]

現地農民への普及活動


 日本人の私だけでは、現地の情報収集、イベントやセミナー参加、農民との交流を図る事は難しいです。 幸い有機農業に関心及び取り組んでいる現地NGOと交流を持つ事が出来ています。彼ら主催の セミナーに呼ばれたり、農民を集めて彼らが当農場に視察に来る事も頻繁にあります。また、大学生 が農場見学に来る事もあります。

 特に、視察に訪れた農家の人は、一概に農薬や化学肥料を使用しなくても野菜が できている状況に驚いています。ただ、やはり有機農産物のマーケットが殆ど無く、 有機農業では食べていけないので皆さん有機農業に取り組む事に躊躇されています。 そこで、まずは簡単に出来るボカシ肥の作り方を教えています。 そして、所有している畑全てをいきなり有機農法に変更するのではなく、 その一部のみを有機農法にして、できた野菜を自家消費するよう薦めています。 これならば、例え失敗しても経営的な被害は少なく、野菜を育てる農家の食生活が良くなるので彼(女)ら自身が 健康になれるます。

[画像/講演]

 当農場が日本からの資金無しで自立運営できれば農民の 有機農業に対する見方や関心の度合いも変わってくると思います。

 野菜が有機農法で出来始め、消費者が増え始めた現在、次の目標は農場の自立運営 です。まだまだ、乗り越えないといけない壁や今後いろいろと問題も出てくるとは思いますが 現地で有機農業が広まるよう進んでいきます。

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