2002 ビアライゼ − ケルン、デュッセルドルフ (第1日)
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15 Nov., 2002
やっと、ケルンビアライゼ
ずーっとケルンにはケルシュしかないと思っていた。そしてどの醸造所のものも似たり寄ったりで、上面発酵だけれども見かけも味
もピルスのようなもの、はっきり言ってこれと言うとりえのないビールだという思い込みがあった。意地悪な言い方をすれば、なんて
こと無いフツーのビールだからこそ地域性を前面に出して、「ケルシュ」という名前(ビアスタイル)をよそで造ったビールにつけてはならない、としたのだとすら思っていた。
初めてケルンにケルシュを飲みに行ったときは約3時間の滞在だった。しかもその後すぐにデュッセルドルフに行ってアルトを飲み 、夕方の列車でケルンからブリュッセルに帰るという慌しいスケジュール。案内してくれたドイツ人の知人に「キミらはクレイジ ーだ」と言われた。私もそう思った。だからいつか十分に時間をとって、また訪れるつもりでいた。
今年は、アントワープのベルギービール「24時間フェスティバル」と、その1週間後のカンティヨン公開醸造に行くことにしていたので、間の4日間でケルン、デュッセルドルフ、その周辺の町に行くことにした。ケルンはブリュッセルから Thalys という列車で たったの2.5時間だし、10日間もベルギービールばかりではいくらなんでも飽きるだろうと確信もしていたので、具体的な計画は ともかくケルン行きだけはさっさと決めた。
目的は1つ。ケルシュとは何ぞや?これを確かめるが為に4日間も費やすなぞ、またしても「クレイジー」かと思わないでもなかっ たが、ま、いまさら始まったことではない。
さて、第1日目。ビールを飲んでばかりいて、ダイヤモンドには目もくれなかったアントワープからブリュッセル経由でケルンへ。午後1時頃にケルン中央駅に到着した。ドイツに来るとなんだか落ち着くなあ。
駅のそば、ライン川沿いにある小さなホテルに荷物を置いて、早々と飲みに。かの有名な大聖堂の横もさっさと通り過ぎていく のである。知り合いのご夫婦とアントワープからの移動をご一緒したが、「飲み」しか目的の無い私は基本的に単独行動だ。 女性が一人で飲み歩くなんぞ周囲には奇異に写るかも知れない。それに、一人で食事をするのは本当は好きではないのだが、飲みたいビールがあれば、それもあまり気にはならんとよ。
さあ、スタート
ホテルと駅の途中にある Peters Brauhaus (ペータース ブラウハウス)に早速入った。こういうところはだいたいランチとディナーの時間は分かれておらず、中途半端な時間でも食事が出来る。2時半をまわっていたので、いちおう「まだキッチンは やってますか?」と聞いてから席についた。話によく聞く「ケルンでは注文しなくても勝手にケルシュを持ってくる」というのは、客の少ない暇な時間帯では起こらないようだった。しかし、人が注文するものはケルシュと決まっているようなものなので「1杯ください」だけでちゃんとお望みのものが運ばれてくる。すごいなあ。
昼食を取っていなかったのでここで何か食べておかねば1杯でフラフラになってしまう。うわさに聞いた Halve Hahn (ハルヴェ ハーン:チキン半分)と 、あとはなんか暖かいものが欲しかったので Kartoffelsuppe (カートッフェルズッペ:ポテトスープ)を注文した。Halve Hahn は、実際はトリなんかじゃなく 、なんのことはない、ゴーダチーズとバター、ライ麦パンがコロッと皿にのっかってくるだけのものだった。「あ、やっぱり。」いろんなガイドブ ックに書いてある通りだ。
ケルンに来て1杯目のケルシュだったので、他と違ってどうっつうのはまだ何とも言えなかったが、「柔らかい」と思った。「うーん、これが上面発酵ゆえの特徴か?」ケルシュはもっとホップの苦味があるものかと思っていたが意外とバランスが取れているんだなと感じた。ホップの香りはとても豊かだった。「アロマホップは何を使ってるんだろう?」後で聞いた話だが、ここは Hausbrauerei (ハウスブラウアライ:ブルーパブ、ブルーレストラン)ではなく、ただの Ausschank (アウスシャンク: ブルワリータップ)で、ビールはどこかケルンの郊外で造っているそうだ。なんだ、聞いたらあまり有難くなくなったではないか...、 と勝手なことを思った。
おなかも一杯になったところで、(そう、ドイツの1人前の量は非常に多い。)次はそこから歩いて3分くらいの Heumarkt (ホイマルクト)というところにある Paeffgen (ペフ
ケン)に向かった。ペフケンはハウスブラウアライだが、ここのはアウスシャンクである。ビールは同じだから、ま、いいか。(実は、同じではなかったのである。後日談。)着いたら...「あ、休み(Ruhetag:ルーエターク)だって。」
気を取り直して別のところへ。雨が降り出してきた。まったく、傘を置いてくると降るんだよなあ。どこでもいいからと入ったところはGilden (ギルデン)を置いているただの小さなバーだった。「まあ、いいか。一応ケルシュだし。」
...「一応」というのは、単に私がこのブランドを知らなかったからである。そのギルデンは澄んだ黄金色で、やはり冷えている。
香りも味もまるでピルスのような印象だった。でも、私がいつも飲んでいるバイエルンのピルスとは違う。ギルデンのケルシュはおい
しいとは思わなかった。苦いだけで単純な味がした。後になってこの醸造所のことを知ったとき(第4日目に詳細)、そういう味がしたことに「なるほど」と思わずにはいられなかった。そういう味。
別行動をしていたご夫婦と5時に Frueh (フリュー)で待ち合わせをしていたので、次は駅方面に歩いていった。中に入る
とすぐに Schaenke (シェンケ)といって、軽く飲むだけの場所がある。立ち飲みだ。すぐ横で50リットル、いや70くらいは
あろうかという大きな木樽からどんどんビールを注いでいるので飲みながら眺めていても面白い。そこに立って彼らを待っていると
、注いでいるおじさんが「1杯だろ?」と当然のごとく聞いてくる。早くもおじさんの手はタップをひねろうかというポジションにある。
そうか、ここに立ってるっつうことは飲むということなんだ...んなこと言われてもなぁ。
「人を待っているから、後ででいいです。」と応えるやいなや、彼らがやってきた。奥に入って適当なテーブルについた。
すぐに Koebes (クェーベス)のおじさんがやってきたので、「3つ下さい」と注文した。 標準ドイツ語ではウエイターのことは Kellner (ケルナー)というが、ケルンの方言では Koebes と言うそうだ。これをケルン在住の人に教えてもらうまでは、Kuerbis (クァビス:かぼちゃ)に聞こえていたので、「なんでかぼちゃが出てくるんだろう」と 一人で不思議に思っていた。 おじさんはやっぱり、あの穴の開いたお盆(Kranz:クランツ)にのっけて私達のケルシュを運んできた。そして、やっぱりコースターに「チョン、チョン、 チョン」と3本線を書いて去っていった。
乾杯をして、さあ一口目、という時に私達はクンクンクンと、アロマを確かめなければ、ビール好きとしての気が済まないのである
。変と言えば変かな。
ここのケルシュは香りも味も強烈さは無く、後に甘みが残った。とても飲みやすいし、フリューと言えば有名だが、これといった特徴に欠けるかな、という気もした。いままでベルギービールばっかり飲んでたからか。以前はこの場所でビールを造っていたハウスブラウ
アライだったが、需要が増えて今では別のところで造っている。それでも変わらずおいしいという評判もある。わたしはすでに食事をしていたのでチキンスープだけ(とは言ってもライ麦パンがついてくる)にした。肉だらけのメニューなので見てるだけでお腹がいっぱい。知り合いのご主人のほうは Koelsche Kaviar (クェルシェ カヴィア:ケルンのキャビア)という名のもの(実際は血のソーセージ)を、奥様のほうは焼いたソーセージにポテトの付け合せを注文した。
ちょっと飲み食いして気分もいいところで次の場所へ。ハウスブラウアライの Hellers (ヘラース)である。トラムで
何駅か離れたところにあり、暗くて方向もよく分からないので行きはタクシーで行くことにした。乗り込んで「ローンシュトラーセ
(Roonstrasse) お願いします。ヘラースです。」と行き先を告げると、運転手のおじさんは「ディスコだろ?」と言う。「え
っ?ディスコなの?ハウスブラウアライじゃないの?」車はもう走り出している。
「ちょ、ちょっと待って!そこがディスコなら私たち行きたくないんだけど。ビール飲むために来たんだから。」おじさんは、その住所にヘラースというブルーパブがあるかどうか、無線で聞いてくれた。無線で返ってきたこたえを聞いて、私とおじさんはニヤッとし
た。あるらしい。ついでに尋ねてみた。「おいしいケルシュはどこで飲めるの?」
「フリュー、ペフケン、ガッフェル、マルツミューレだな。」ふーん。
さあ、1件めのハウスブラウアライだ
6時過ぎというのは、ドイツの人にとってまだ早い時間だ。店内はガラガラ。どこにでも好きなとこに座ってくれと言わんばかり。
ここには3種類のビールがあり、私達もちょうど3人だったので1つずつ注文した。まず、ケルシュ。それと、「ヴィース」 (Wiess) そしてシュタルクビアの「No.33」。ヴィースとはろ過していない濁ったケルシュ(もちろん上面発酵)のことで、クリアでないと「ケルシュ」とは呼んではならないためこういう名前がついている。ケルンの方言で「白い」(標準語では i と e が逆のつづりで「ヴァイス: weiss」)を意味する言葉である。濁って白っぽくなっているからだ。ここのヴィースはケルシュよりホップが効いていたので、ウエイトレスにいろいろ聞いてみた。
彼女はビールには明らかに興味がなさそうだったのであまり詳しいことは得られなかったが、ここのヴィースはケルシュとは別のレシピで造っていること(「ちょっとホップが強いでしょ?」と言っていた。)、ブルワリーは地下にあり見学は出来ないこと、やはりディスコっぽい、とは言ってもいわゆるディスコとは程遠かったが、そういうおしゃれな場所であることなど話してくれた。印象としては、客層は若く、ここのビールを飲みにと言うより、雰囲気の為に来る人が多いような店だった。初めて飲んだヴィースはケルシュに比べるとイーストが入っている分、より味がある。それとバランスを取るためにホップを強めにしてあるのかな。私はケルシュよりヴィースが好きだ。
まだまだ今日は終わりではない。地下鉄で中央駅に戻り、駅前の Alt Koeln という店でキュパース (Kueppers) が 飲めるという情報だったので行ってみたが、そこはギルデンしか置いてなかった。レストランの事情が変わって、キュパースからギルデンになったのかもしれない...しかし、んなことあるか?と疑問に思いつつも、無いものは無い。じゃ、別のところに行くかとハウスブラウアライである Malzmuele (マルツミューレ)に向かった。後で分かったのは、結局これでよかったのだってこと。マルツミューレはケルンに来たら絶対飲むに値するケルシュだということを知った。歩いてホイマルクトまで行き、さあ中に入ろうとすると回転ドアが左右両方にあった。どっちから入っていいものか初めて行くところだし「アレッ」と思っていると右のドアから青年が2人 出てきた。誰かが出てきたほうから入るのがなんとなく安心だと思って、彼らが出てしまうのをじっと立って待っていると、不思議な表情をされた。彼らの言いたいことは分かってるさ。だからこっちから言ってやった。「どっち(のドア)からでもいいってことでしょ? 」、「ヤー」だって。
さっきのヘラースとは違ってこういうところはおじさんの溜まり場である。サービススタッフも男性ばかり。すっかりいい気分で楽しそうに騒いでいる。ここでも「3つ」とたのんで、まず1杯目。美しい黄金色で透き通っている。今日飲んだどのケルシュよりも香りがフ
ルーティだ。英国のエールにあるようなホップの香りがする。ホップの種類か、ドライホッピングか...。飲むとやはりホップの苦味とスパイシーさが明らかで、さらにフルーティーだ。上面発酵だから?後にはモルトの味が残る。おいしい。ちょっと何かお腹に入
れておこうと思って、メニューを見るが肉ばっかりだ。クェーベスのおじさんに「少しだけでいいんだけど...」というと、「これは少な
いよ」となんだったかを勧めてくれたが...「おじさん達にとっては少ないかも知んないけど私にとっては多いのよ。」
「じゃ、これは?」、「肉はだめなの。」
「じゃ、付け合せのイモだけにしな。」、「OK。じゃあ、それお願い。」 バイエルンのケルナーとは違って、ケルンのクェーベスのおじさんは気さくだ。とても居心地がいい。
1杯目を飲んで、もうちょっと飲みたいなと思った。ほんのもうちょっとだけ。空のグラスを見つけたらおじさんはすぐにやってくる。あ
、きたな、と思った。「Schnitt (シュニット)ってある?」おじさんは、反応しなかった。
「わたしミュンヘンに住んでるんだけど、バイエルンではシュニットっていって半分の量のビールがあるのよ。ケルンにはそういうのある?」おじさんは首を横に振ったかどうか知らぬが、ともかく「ない」といった。
「まあね。ケルシュはもともと小さいからね。じゃ、1杯ちょうだい。」
おじさんは私のビールを持ってきてこう言った。「0.1リットルのやつは、Stosschen (シュトェースヒェン)って言うんだよ。」
なんだ、あるんじゃん。早く言ってよ。とは言わなんだが、へえー、同じドイツでも地域によっていろんな言葉や食べ物やビール文化があるんだなあと、ちょっと嬉しくなった。
もう帰ろうとしているときに、店内に、ビル・クリントンがやって来たときのらしい写真が飾ってあるのに気づいた。写真のすぐそばに
座っていた賑やかなグループのおじさんに聞いた。「これって、クリントンなの?」
「ヤー、ヤー。『ミスター・プレジデント!』 んで、ここに写っているのはわたしなんだよ。」と楽しそうに話してくれた。ああ、あんた
達なら毎日ここにいそうだもんね。そりゃあ、プレジデントにも会うわな...。
長い1日だった。
| 名前 | 住所 | Tel(0221) | 交通 | 営業時間 |
| Peters Brauhaus | Muehlengasse 1 | 2 57 39 50 | 地下鉄、トラム、Sバーン、DB:Dom/Hbf (Hauptbahnhof)下車 |
11:00 - 24:30 クレジットカード使用不可 |
| Altstadt Paeffgen (Brauerei Ausschank) | Heumarkt 62 | 257 77 65 | 地下鉄、トラム、Sバーン、DB:Dom/Hbf (Hauptbahnhof)下車 または トラム:Heumarkt | 12:00 - 25:00 月曜休み |
| Hellers | Roonstr. 33 | 24 25 45 | トラム:Barbarossa Platz または Zülpicher Platz 下車 | 18:00 - 日曜・祝日休み |
| Brauerei zur Malzmuehle | Heumarkt 6 | 21 01 17 | 地下鉄、トラム、Sバーン、DB:Dom/Hbf (Hauptbahnhof)下車 または トラム:Heumarkt | 10:00 - 24:00 日曜 11:00 - 23:00 |
ケルン交通機関マップ(PDF)
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