ヨーロッパ発ビールなニュース
ビールの世界にも恐るべき速さで起こっているグローバリゼーション。言い換えると、伝統的小規模ブルワリーを次から次に飲み込んで自分の支配下に置き、一大ビール帝国を作り上げようという独裁活動。そこで生まれるビールはファストフードのように世界中どこに行っても均一な飲み物。そんな巨人に必死で対抗しようとする醸造者やビール愛好家の消費者達の活動が、ヨーロッパでは積極的に行われています。
その流れの中の出来事を「ヨーロッパ発ビールなニュース」として発信します。
| 2003年 | |
| 10月 | |
| ドリー・フォンテイネン50周年 | ベルギー、Beersel にあるランビック・ブレンダー、「ドリー・フォンテイネン」のレストランが今年50周年を迎え、そのお祝いが10日から13日まで行われた。ブレンダーのアーマンド・デベルダーの兄弟であるグイドがこのレストランを所有・経営しているが、デベルダー一家とランビックファンとでこの50周年が祝われたことは間違いないだろう。 |
| 9月 | |
| シュパーテン、インターブルーに買収される |
ベルギーのインターブルーがドイツ、ミュンヘンのシュパーテン・レーベンブロイ・グループを買ったとのニュースが20日、地元の新聞に大きく掲載された。既にベックス、ギルデ、ハッセロェーダー、ディーベルスを傘下に置き、北ドイツ市場でドイツ全体の11%のシェアを占めていたものの、このマルチナショナルはさらにシェアを伸ばすべくついに保守的で誇り高いバイエルンにまで足を踏み入れた。この買収によりインターブルーはドイツ最大のビール生産者となる。 このニュースは世界最大のビール祭りオクトーバーフェスト開催直前に発表されたこともあり、かなりの衝撃を与えた。そうして、ミュンヘンのブルワリーにのみ参加を許されているこのフェスティバルに、シュパーテンやレーベンブロイが来年からも参加できるのかどうかが早速話題となっている。 |
| ブドヴァー救われる |
チェコ政府はブドヴァーを国営のまま残す決定をしたとのニュースが8日チェコのメディアによって伝えられた。そもそもの始まりは今年6月、国営企業の民営化を進めるプログラムの1つとしてブドヴァーの民営化の可能性を財務大臣がほのめかしたもの。これに対し、ブルワリーの正式なオーナーである農業大臣は民営化に反対。 ブドヴァーはアメリカン・バドと商標権の争いを続けており、この争いを終わらせたいアメリカン・バドがブドヴァーを買収したがっていたのは明らかだ。この点においても今回の決定は我々ビールファンにとって歓迎すべきものである。しかし一方で、少なくとも2006年までは民営化の可能性がなくなったという財務大臣の話には今後が懸念される。 |
| 英国地方ブルワーに朗報!PBD見直し | 英国政府は PBD (Progressive Beer
Duty:規模(生産量)により異なる税率を課す)
を見直すとの発表をし、これにより中規模のリージョナル・ブルワーも恩恵を受けることができるようになりそうだ。 2002年に導入された3000バレル(5000hl)以下の小規模ブルワリに対するビール税50%カットは、設備投資や新たなマイクロブルワリの誕生など、全国350の小規模醸造所の安定経営、産業自体の発展に大きく貢献してきた。加えて3,000から18,000バレル規模のブルワリーに対しては、13万ポンド(約2,400万円)相当の減税が適用され、政府は大きな賞賛を得た。一方でこの範囲に収まらない中規模のブルワリからの不満は明らかであった。それを受けてか、今回の見直しは18,000以上122,000以下(EUで決められた上限)の中規模ブルワリにも減税を適用しようというもの。 |
| 8月 | |
| ブドヴァーを救え! | 5日から9日までロンドンで開催された GBBF (Great British Beer Festival) にて、チェコのブドヴァーを民営化から守ろうという署名運動がなされた。現在、ブドヴァイザー・ブドヴァーはチェコ共和国の国営企業だが、民営化の可能性があるとの噂が広まった。民営化によって、マルチナショナルと呼ばれる他国のビール会社が買収に乗り出すことが考えられる。GBBF の主催者 CAMRA は自国の伝統的なエールを守るだけでなく、他国の伝統的なビールを守ることも活動の一部としており、4万5千人以上が来場するこのビアフェスティバルでの署名運動を行った。 |
| 5月 | |
| Oud Beersel を救え! | 昨年11月に閉鎖したランビックブルワリー、Oud
Beersel を何らかの形で残そうと、ベルギーのビール消費者団体 Zythos が署名運動を行っている。閉鎖後、オーナーはこのブルワリーを売りたがっている模様。伝統的ランビックの製造業者(醸造者、およびブレンダー)よりなるグループ
HORAL を中心に、Oud Beersel を博物館として残すための活動が行われているが、この署名運動はそれに同調する消費者の動きである。 もし Oud Beersel がランビック博物館として生まれ変わったら、このパヨッテンランド地域という言わば「ランビック天国」への訪問者が増え、世界でも非常に珍しいスタイルのランビックというビールとその伝統的製造者(現在11か所が残っている)の保存に一役買うであろうことは間違いない。 ちなみに、Zythos は昨年末に解散した OBP が生まれ変わったものだが、早くも積極的な活動が見られる。 |
| 24時間ビアフェスティバル、新ロケーション | ベルギーのビール消費者団体 OBP の解散により、主催者を失った「24時間ビアフェスティバル」の次回開催の行方が心配されていたが、来年3月の可能性が高い。これまでこのフェスティバルはアントワープで行われていたが、同じ会場がもう使用できない(酔っ払いによる問題が多少ありと、小耳に挟んだ)ため、Sint-Niklaas というアントワープから南西に約25キロのところにある町が候補に挙がっている。新しい会場は、駅からも近く、今までよりも大きいとのこと。 |
| 100% オーガニック グーズ |
ブリュッセルに残る最後の伝統的ランビック醸造所であるカンティヨンが、100%
オーガニックのグーズを発表した。 ランビックとは、大麦麦芽と共に小麦を使用して造るビールであるが、ふつうなら酵母を加えて発酵させるところをそれをせずに、空中に浮遊する自然の酵母をとりこみ「偶発的な発酵」による伝統的な製法で造られる。消費者に何を提供するかについて非常に高い意識を持つこの醸造所は、その昔ながらの製法だけでなく、オーガニックの原料を使用することによって自然の味も守っていこうというねらいを持っている。 ランビックは木樽で発酵・熟成され、2年以上のものはそのままストレートで飲まれもするが、年代の違う3種類をブレンドしてグーズという「ブリュッセルのシャンパン」とも呼ばれる飲み物が造られる。通常3年物のランビックと若い1、2年ものをブレンドするため、出来上がるまでに3年以上もの期間を要する。そのため、最初にオーガニックの原料を使用し始めた1999年から今までかかって、ようやく最初の100% オーガニック グーズが誕生した。ラベルも新しくなり、「Bio」というのがオーガニックを意味する。 |
| 4月 | |
| 1パイントにつき1ペンスの増税 − 英国 |
4月9日、今年度の国家予算が発表された。注目のビール税は1パイントにつき1ペンスの増税。たかが1ペンスとは言っても、パブリカン(パブの経営者)は実際には数ペンス幅で値上げをする。消費者団体
CAMRA からは当然のごとく非難を浴びる結果となった予算発表であった。その非難の内容は、 1.ビール(税)の安いヨーロッパ大陸からの組織的な密輸を助長する。 2.消費者をパブやビールから遠ざける。結果として、ビールからの税収の増加は見込めない。 ヨーロッパでは北欧がその税金の高さで有名だが、英国の酒税やタバコ税も大陸のそれと比較するとかなり高い。5%度数のビール1パイントを基準にすると、フィンランドのビール税は50.1ペンス、英国は33.8ペンス、ベルギー7.2、ドイツ3.3、スペインは実に2.9ペンスという安さである。 |
| 旧共産圏に進出するカールスバーグ | デンマークを拠点とするマルチナショナル「カールスバーグ」が旧共産圏において急激な進出を見せている。1997年に民営化されたブルガリアのブルワリー「ピリンスコ・ピヴォ(Pirinsko Pivo)」の株の所有率を徐々に増やしているが、現在97.5%を所有する。また、ポーランドの「オコチム(Okocim)」は75%がカールスバーグの所有である。 |
| アメリカン・バド VS ブドヴァー − 英国 |
英国は唯一、アメリカのバドワイザーとチェコのブドヴァーがともに「Bud」、「Budweiser」という商標を使用できる国であるが、今回英国の最高裁は、ブドヴァーが今後も継続して「Bud」の商標を用いることを認めた。アメリカン・バドを製造しているアンホイザーブッシュ社は世界各国で、ブドヴァーに対してこの商標の使用を阻止する訴えを起こしてきているが、判決はその国により異なる。ハンガリー、イタリア、オーストラリア、アルゼンチン、デンマーク、ロシア、フィンランド、ニュージーランド、スペインなどではアンホイザーブッシュが勝利している。 この争点はどちらが先に「Budweiser」の名前を使用し始めたか、であるが両者の言い分はこうである。アンホイザーブッシュは、ブドヴァーの創業より19年前の1876年、すでに「Budweiser」の名前を使用し始めた、よって我々が先である、と主張する。一方ブドヴァーは、我々はチェスケ・ブデヨヴィチェ町(ドイツ語名ではブドヴァイス(Budweis)町)でビールを造っている唯一の醸造者であり、「Budweiser」という名前は何百年以前からブドヴァイス(つまりチェスケ・ブデヨヴィチェ)で造られるビールの呼び名として使用されていたものだ、よって我々の方に使用権があると言う。 私個人的には、ヨーロッパ特にドイツに住んでいると、村や町の名前に -er をつけてそれをビールの名前にする、名前になるのがごく普通のことなので、もし私が裁判官だったらブドヴァーに勝利を言い渡すでしょう。しかし、まずいビールの代名詞となってしまった感のある「バドワイザー」の名前をいまさら使わなくても・・・。 |
| トーマス・ハーディーズ・エール復活 |
英国の詩人・小説家、トーマス・ハーディの没後40年を記念して1968年に初めて造られて以来、1999年ものを最後に製造中止となるまで世界中のビール愛好家に飲まれてきた「トーマス・ハーディーズ・エール」が4年ぶりに復活する。このエールの輸入業者であったフェニックス・インポート(米)が、エルドリッジ・ポウプ・ブルワリー(英)より、商標、レシピを買取り、このビンテージエールを復活させることが決定した。今後、トーマス・ハーディーズ・エールは英国デヴォンにあるオハンロンズ・ブルーイングで造られる。8月ごろには市場にでる見込み。 そもそもこのエールが姿を消したのは、エルドリッジ・ポウプ・ブルワリーがパブ・ホテルビジネスに専念するために醸造を止めたからであった。このようなことはヨーロッパではよくあることで、こうして復活する例は少ない。 |
| ツール・ド・グーズ開催 |
ランビック(ビール)の産地、ブリュッセル近郊のパヨッテンランドで4月27日、「ツール・ド・グーズ」が開催される。この2年に1回のイベントは、HORAL(Hoge
Raad voor Ambachtelijke Lambikbieren)
という伝統的ランビックを守り、かつ広めていこうとする団体(現在9か所の醸造者、ブレンダーが参加)によって運営される。この日は、7か所のグーズ製造者(Drie Fonteinen,
Boon,
de Cam,
de Troch,
Hanssens,
Mort Subite,
Timmermans)を訪問することができ、その場で試飲もできるという。各製造者をまわるバスも出ている。 このツアーを催す目的は、ベルギーのスペシャリティ・ビアとしてこの地域を代表し、また伝統的なビールであるランビックやグーズ(年代の異なるランビックをブレンドしたもの。ビールのシャンパンと言われる)をもっと一般の人々に知らしめるためである。同時に、HORAL とその活動を知ってもらおうというねらいもある。詳しくは HORAL のサイトから。 |
| ビール税増税をあきらめる−フランス | フランス政府は今年初め、アルコール度数 8.5%
以上のビールを対象に増税を導入した。1リットルあたり2ユーロ(約257円)の税金を課すという大幅増税は、国民の健康のためだというのがフランスの言い分であった。しかしながら、高アルコール度のビールを多くフランスに輸出している隣国ベルギーはこの増税をEU公正取引規約に違反する保護政策だと非難し、またEUもこれを支持したため、2月にこの増税は保留となった。4月に入り、フランスが正式に増税を取り下げた。 トラピストビア(修道院ビール)をはじめベルギーでは 8.5% 以上のビールが多く造られており、これがもし導入されていた場合、ビールの輸出産業、とくに小規模醸造所にかなりの打撃があったであろうと予想されていただけに関係者は胸を撫で下ろしているところであろう。ちなみに日本のビール税は1リットルあたり222円である。 |
| アメリカン・バド、スウェーデンで勝利 | いわゆるチェコのブドヴァーとアメリカのバドワイザーとの商標に関する争いであるが、ストックホルム地方裁はアメリカン・バドの勝利を言い渡した。これにより、チェコのブドヴァーはスウェーデン国内では自社のビールに「Budweiser Budvar」、「Budweiser」、「Budweis」のいずれの名前も付けてはならなくなったばかりでなく、10万ドル(約1千200万円)の損害賠償の支払いを求められた。チェコのブドヴァーは現在、Budweiser と名乗れない国においては「チェックヴァー」(Czechvar) http://www.czechvar.com という商標を使用している。 |
| 3月 | |
| アメリカン・バド VS ブドヴァー − スイス | スイスでは元祖ブドヴァーの勝利。連邦裁判所の決定により、アンホイザー・ブッシュはスイスで「Bud」、「American Bud」の商標が今後も使用不可能となった。輸出先として、チェコのブドヴァーとスイスの関係は古い。 |
| オーストリアビール消費者団体が EBCU 参加 | 3月26日にスコットランドのエジンバラで開かれた EBCU (European Beer Consumers Union) ミーティングで、オーストリアの新しいビール消費者団体 BierIG が正式に迎え入れられた。BierIG は9月にザルツブルクで第一回ビアフェスティバルを開催する準備を進めている。 |
| シュタルクビアフェスト 2003 | 毎年3月から4月にかけ、ミュンヘンとその周辺地方のブルワリーがそれぞれ「シュタルクビアフェスト」を行う。アルコール度数 6-8% の下面発酵のビール(ボックビアとも呼ばれる)がこの期間だけ飲める。ブルワリーによって開始日が異なるのであらかじめチェックして行きたい。 |
| カンティヨン公開醸造 3月8日 | ブリュッセルに残る最後の伝統的ランビック醸造所で行われる、年2回の公開醸造。午前6時半開始という早さにもかかわらず、世界中からビール好きが集まって楽しい1日を過ごす。1世紀前から変わらない製法でビールを造る過程を実際にこの目で見ることのできるイベント。ビール好きなら一度は見ておきたい。詳細はこちら。 |
| 新ベルギービール消費者団体 Zythos 誕生 | 2002年12月10日に解散を決定したベルギービール消費者団体 OBP の後継団体として、Zythos が誕生した。18年間続いた OBPが解散を決定した主な理由は、内部の諸問題によりこの組織の安定した運営がもはや困難になったためだということである。解散決定から数ヶ月間、今後の成り行きに関して様々な憶測やウワサが飛び交う中、再び希望が見えてきたことに、元会員のみならず世界中のベルギービール愛好家達は胸をなでおろした。非常に残念な終わり方であったものの、OBP がベルギービールとその文化、伝統のために様々な業績を上げたことは事実であり、それらを新しい組織にもうまく受け継いでいって欲しいと願う。Zythos の正式な発足に関しては、法的手続き等にかかる時間も要するため、OBP の解散と同時期の 6月になると見られる。 |
| 2月 | |
| アムステルダムのブルーレストラン「Maximiliaan」が再開 | 去年の12月に閉鎖したブルーレストラン
Maximiliaan の行方が注目されていたが、新オーナー
Beiaardgroep
のもとで営業を再開した。オランダのビール消費者団体 PINT
が会報誌2月号で伝えた(記事)。 1992年、ホフマン兄弟によってアムステルダムで2つ目のインディペンダントブルワリーとしてオープンした Maximiliaan は、レッドライトディストリクトにも近い街の中心にあり、若者やビール愛好家で賑わっていた。しかしながら、伝統的方法で少量のビールを造り (年間 1,000 hl)、それを提供していくことは、経営的な面で困難があったようだ。今年2月に入り、オランダにビアカフェを数件持つグループ Beiaardgroep によって、名前も新しく「Amsterdamse Bierbrouwerij」として営業再開するとのニュースが伝えられた。 アムステムダム市内 (住所:Spui 30) に 「Eet & Bierencafés De Beiaard」というビアカフェを所有する同グループは、醸造を始めるという長年の希望がついにかなったとしている。 |
| CAMRA ナショナル・パブズ・ウィーク | 英国のビール消費者団体 CAMRA - Campain for Real Ale は、2月22日より第1回「ナショナル・パブズ・ウィーク」を開始した。英国では毎月20軒のパブが閉鎖し、また成人の27%がまったくパブに足を運ばないという調査結果に懸念を感じた同団体が、人々に「ちょっと行ってみようか」という機会を提供しようと始めたものである。全国のパブはそれぞれプロモーションやイベントを行い、この全国パブ週間を支持した。また、数十名の国会議員による支持も得られるなど、まずまずの成功だったと言える。 |
| 2002年 | |
| 11月 | |
| Oud Beersel 閉鎖 | パヨッテンランド(ブリュッセル郊外)地域で、ランビックという伝統的なビールを醸造してきた Oud Beersel が閉鎖した。この醸造所ではランビックをベースにした、ビールのシャンパンと言われる「グーズ」、チェリーを丸ごと漬け込んだ「クリーク」を伝統的な方法で造っていたが、それらは地域の人々や世界中のビール愛好家に愛飲されてきた。それだけに、このニュースは多くの人々に衝撃を与えた。後継者の問題があったと思われるが、家族経営であるゆえ、家族間の問題があれば即ファミリービジネスの存続にかかわるという現実を映す出来事である。残ったランビックは、同業者である Boon、Drie Fonteinen に引き取られた。 |
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