EBCUミーティングがバンベルクで行われた


Nov 2001

関係ないけど遊びに行きました

ヨーロッパ各国(一部を除いて)には、ビールの消費者団体があり、それらが集まってEBCU (European Beer Consumers Union)を作っています。(詳しくは www.dma.be/p/bier/5_1_uk.htm ) 2001年現在、メンバー国は10カ国、メンバー総数は約7万人です。各国の代表者が年に2回、ヨーロッパ内のビールの有名な都市(毎回変わる)でミーティングを行いますが、今年の11月、ラオホビアで有名なドイツのバンベルクに彼らはやってきました。

私はEBCUとは直接関係ないのですが、イタリアの Unionbirrai の代表として参加しているロレンツォ・ダボヴェ氏に会いにミュンヘンからバンベルクまで行って来ました。また、EBCUの各国の代表の人々と知り合いになれる機会だと思って片道4時間の電車の旅をしてきました。

まだ真っ暗い早朝、6時15分の列車に乗り、2度乗り換えて10時半にようやくバンベルクに到着。ホームでロレンツォが迎えてくれて、いっしょにタクシーで近郊のシェスリッツ (Schessliz) という小さな村へ向かいました。途中、モルトのメーカーとして世界的に有名なヴァイアマン (Weyermann)のそばを通りすぎ、目的地の「ブラウエライ・ゼンガー」に着きました。他のメンバーは一足先に来ており、ブルワリー見学はもう、始まっていました。

シェスリッツには3つのブラウエライ(ブルワリー)があり、そのうちの1つ、ゼンガーさんのブルワリー見学です。

ここでビールが冷却される。浅くて広いところはまるでベルギーのカンティヨン(ランビックという自然醗酵ビールをつくっているブルワリー)とそっくり。なんと、この部屋の屋根には、これまたカンティヨン同様、所々に穴があった。偶然の一致か? それとも、昔はどこもこうだったか。きっとそうだろう。
ここは、ビールが熟成されるところ。タンクが5つ。中央はゼンガー氏。何かをチェックしたところかな。
ゼンガーさんがつくるビールは、これだけ。一種類。アンバーカラーの美しいモルティなビール。木の樽から直接注がれる。つまり、圧縮ガスを使用せずに注ぐので、ビールに含まれる炭酸は 発酵過程でできた自然の炭酸だけだ。そのことにゼンガーさんはとても誇りを持っている。
EBCUの会長、テリー・ロック(左)と握手をするゼンガー氏。

ここにも後継者不足問題

3代目のゼンガーさんには息子がおらず、二人の娘さんのパートナーは醸造に興味がないそうで、後継ぎがいないと非常に残念そうでした。かと言って、身内でない誰かにこのブラウエライを渡すくらいなら自分の代で終わらせようと思っているそうです。絵に描いたような職人気質のゼンガーさんからは、これまた家族経営を守り抜くという、典型的ドイツ人だという印象を受けました。

こういうビール職人(こんな名前のビールが昔ありました。今もありますか?)とラインハイツゲボート(ドイツのビール純粋令)が存在するからこそドイツ、特にバイエルンでは地元で本当においしいビールが飲めるのだと思います。しかし、ゼンガーさんのようにかたくな過ぎて、身内に後継者がいないがために素晴らしいビールが世の中から消えていくのは、非常に、非常に残念です。

ドイツにもようやくビールの消費者グループ。しかしまだ早い?

今回はドイツでEBCUのミーティングが開かれましたが、実はドイツにはそのような消費者団体はまだありません。「まだ」というのは、今回のこのミーティングで「これから作ろう、そしてEBCUは喜んでドイツをメンバー国として迎え入れますよ」という決定がなされたからです。そして、その創立者となるであろう人は長年ドイツに住んでいるアメリカ人、トマス・ペレラという男性です。私は即、彼にたずねました。どうやってメンバーを集めるのか、本当にドイツ人のメンバーが集まると思うのか。と言うのは、私はどちらかと言うとこのような消費者グループ(醸造者団体ならもちろんドイツにも存在しますが。)という考えは、まだドイツ人には早すぎると思うからです。

第一に、彼らは地元においしいビールがあり、それをありがたいと思わず当然のことだと思っているからです。「そんなグループをつくらんでも、俺にはこのうまいビールがあればそれで十分だ。」と言うことです。ラインハイツゲボートがある限り、それは大きく変わることはないでしょう。まずいビールがなければ「おいしいビールを提供される消費者の権利」を叫ぶこともないし、職人気質のブルワーはまだまだたくさんいて、彼らの素晴らしいビールは別に高価でもなく、かえって都市部より安いくらいですから、いくら自己主張ばかりするドイツ人といえどもビールに関しては特に声を荒げて言うこともないのでは、と思ってます。そもそも、彼らにとってビールは水のようなものですから、あまり関心もないはずです。その割には、「ドイツのビールはうまいだろ?」とやたらと自慢げな人もいます。(ちょっと話がそれました。)

第二に、彼らは自分たちのビールを誇りに思いすぎるがゆえに、他国の素晴らしいビール(例えばベルギービール)など興味もないし、バラエティなども必要ないのです。フルーツやスパイスを使っているベルギービールは、ドイツの純粋令にのっとってつくられていないので、悲しいかな、そもそも、ビールだとは認められないのであります。オクトーバーフェストを見てご覧なさい。あれだけの人があれだけの期間に飲むあれだけの量のビールは、たった一種類「オクトーバーフェストビア」だけなんですから。...私が声を荒げてしまいました。期間限定でつくられるオクトーバーフェストビアそれ自体はすばらしいビールです。

かたや、CAMRAのGBBF (Great British Beer Festival) やベルギーのビアカフェでは600種類以上、日本のビアパブ(ブルーパブではなく)でも、100種類以上の中から好きなビール、試したことのないビールを選ぶことが出来るのです。

小さくてもいいから、はじめよう

これは私の個人的な意見ですから、EBCUの決定、方向性にどうこう言うつもりはありません。協力もしたいと思っています。とりあえずはやってみなければ分かりませんから。現在5万人以上もの会員を持つ英国のCAMRAも最初は小さなグループだったんです。しかし、お上がビールの質を決める(ラインハイツゲボート)のではなく、私達消費者が私達の飲むビールの質を決めるときがドイツにやって来るのはいつになるのでしょうか。興味深いことです。

 

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