意外と簡単。ビールを造ってみた
1 May, 2003
おいしいビールを「飲む」ためにヨーロッパにやってきた。そして私はミュンヘンに住んでいる。ミュンヘンのビールはおいしいと皆が言う。それでも自分でビールを造ってみようと思った。意外と簡単じゃん。 (とは言ってもビギナーゆえ、熟練した方、プロの方のアドバイス求む!)
| 材料 − ビールのタイプはブランシュ(ベルギータイプの小麦を使った白いビール) | ||
| ペールモルト(オーガニック) | 2kg | モルトとは大麦を途中まで発芽させたものである。でも、見かけは麦。麦芽とも言う。 |
| ウィートモルト(オーガニック) | 1kg | 小麦のモルト。ベルギータイプはモルトにしていない小麦を使うのが本来のレシピだが、モルトも使ってみた。 |
| ウィート(オーガニック) | 800g | 小麦。ふつうの(モルトにしていない)小麦も、本来のレシピに従って使用。 |
| オートミールフレーク(オーガニック) | 200g | ネットで見つけたレシピに使用してあったので真似してみた。 |
| コリアンダー(挽いたもの) | 8g | マルクトでわざわざ買ってきた粒のコリアンダーをコーヒーミルで挽いた。 |
| オレンジピール(キュラソー) | 15g | 本来のレシピに従って、ベルギーから取り寄せたキュラソーオレンジの乾燥した皮。 |
| オレンジピール(スウィート) | 10g | コリアンダーを探していたときにマルクトで見つけた。せっかくだから使ってみた。 |
| イースト(液体) | 1袋 | Wyeast のベルギー白ビールタイプのイースト(酵母) |
| ● 前準備として、2日前にイーストの袋を「パンッ」と叩いた。叩くとイーストが起きて活動を始める。 | |
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前準備その2として、前日にモルトと穀類をガリガリと挽く。手動のミル。自分で挽くのは今回が初めてなのでどのくらいの粗さで挽けばいいかよく分からない。 試しに小麦を粗挽き、中挽き、細挽きでやってみた。中挽き(写真:左の皿の上)に決めた。なんとなく。 小麦は硬いが、モルトにした小麦や大麦はさくさく挽けた。1粒を3つに割るくらいの大きさに挽くとよいと聞いたことがあるが、そう簡単にもいかない。やはりなんとなく「こんな感じかな」でやった。 |
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| ● 前準備その3として、道具を殺菌・消毒。なんのことはない、バケツにハイター(ドイツのは「クローリクス」という。)の200倍液を作ってそれになんでもかんでもつけこんどきゃいいだけ。前日の夜にやって翌日すすぐ。 | |
| ここから当日。メーデーで休日。外はポカポカ陽気。家にこもってビール造るのもまたいいじゃない? | |
| ● マッシング:大きな鍋に43℃の湯を15リットル用意する。(マッシング:挽いた穀類を湯に浸して麦芽から糖分を抽出すること) 40℃で30分。モルト、その他を全量入れると温度が40℃に下がる計算。蓋をしておけば30分くらい温度を保てるでしょう。もし下がりすぎたらお湯を足せばいいし。 この鍋はサーモスタット付きの電気鍋なので、つまみを回して温度を上げることだって可能。29リットルのこの鍋はわざわざ専用に買いました。 次は47℃で10分。小麦やオートミールを使っているので、この温度でしばしの間(10分)おいた方がよいとのプロのブルワーからのアドバイスに従って。できたビールが沈殿物でドロドロになるのを防ぐためだそう。45℃になるまで加熱したところでスイッチを切ると余熱であと2℃くらい上がる計算。 その後、66℃で50分。この66℃まで一気に持っていくところがポイントらしい。チンタラやってはいけない。あとは温度をキープ。 |
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その間、ホップの準備をしておく。煮込みの最初に入れる「ゴールディングス」と「ザーツ」を測って1つのタッパに密封。煮込み終了前15分に入れるザーツを別のタッパに。100g単位で購入するので、使用する量より余る量の方が多い。余ったものは瓶に保存。ヨーロッパは乾燥してるので湿気にはあまり神経質になる必要はないが(余談:それより女性は保湿に気を使う)、香りが逃げないように密封保存しておいた方がいいだろうってことで。 それにしても、ザーツの香りはクラクラくるほど素晴らしい。これがうまくゴールディングスと調和して素晴らしいビールになればいいなあ。この2種のホップの選択は、ヒューガルデンがそうだと CAMRA の Brew Classic European Beers At Home のレシピに書いてあったのでそうしただけ。なんら他の意図はない。 ビールの材料も今やインターナショナルだ。ゴールディングスはイースト・ケント産。しかし、ベルギーからネットで購入したので、イースト・ケント・ゴールディング種をベルギーで栽培したものかも知れない。ザーツにおいても同様。それでも元々は英国とチェコから来たものだから、ドイツ産のモルト、アメリカ産のイースト、ベルギー産のオレンジピール、ミュンヘンの水を使って日本人が造るベルギータイプのビール。 そんなことを考えてるうちに、そろそろマッシングの終了。 |
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| ● ヨードテスト:多分大丈夫だと勝手に腕を信頼しているのだが、ヨード液(せっかく買ったし)を使用して、でんぷんが残っていないかどうかテスト。小学校の実験でジャガイモの切り口にたらしてみて青紫に
なったのを思い出しつつ・・・。汁を小皿にとってヨード液をたらし、青紫にならなければでんぷんが糖分に変わったっつうことでマッシング成功。 終了時はこんな(写真)感じ。(でいいのかな?なんせ、まだ経験不足でして。) |
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| ● ロータリング:麻の袋(大きな布巾を2枚、袋状に縫い合わせただけのもの)をプラスチックのバケツ内につけて輪ゴムで固定したものの中にマッシュ(鍋の内容物)を移す。あれ?この前にマッシュの温度を上げておくんだったっけ?つっても、もうやっちゃってるし、いいか。かなりええ加減。なんせ内容物が大量なので、2リットルの片手鍋ですくってバケツに移す。全部移したところで、まだマッシュが落ち着いていないっつうのに早速バルブを開けて麦汁を取ってみる。やっぱり濁ってるよなあ。濁った麦汁は上からバケツに戻す。 ちょっと時間を置いた方がよさそうなので、その間に空になった鍋を洗う。でかいし、電源コードが付いてるので、洗うのも慣れが必要だ。バケツに戻り、また「下から麦汁を取っては上から戻し作業」の繰り返し。単純作業なので頭は他の事を考えている。 ロータリングという用語はドイツ語の醸造用語「laeutern」(動詞、発音:ロイテァン)、「Laeuterung」(名詞、発音:ロイタルンク)から来たものだということが容易に想像される。英語圏の人たちが英語読みをして、-ing をつけて名詞化して「lautering」となったんだなあと、そんなことが頭に浮かんだ。醸造とは関係ない laeutern の意味は「純粋化する」ということ。ドイツ語の勉強もしました。 さて、麦汁が純粋になるまで(澄んでくるまで)下で受けては上から戻しを繰り返すのだが、どうせ濁ったビールを造るんだから・・・と、適当なところで取れた麦汁をさっき洗った鍋に移し始める。(麦汁の回収) 時々、コップに移して味見。甘い。前回別のビールを造ったときのはもっと甘かったような気もする。糖分が少ないとアルコール度の低いビールができる。夏向きに軽いビールもいいなあ、と途中で路線変更もありうるのがホームブルーイング。使用している受けの容器は「ボダム」のコーヒー用パーコレータ。要するになんでもいいのよ。役目を果たせば。 |
濁ってる・・・
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● スパージング: 麦汁を取った後に残るマッシュ(写真右)の上からさらに76℃の湯をまわしかけて、いわば二番茶のようなものを取る。湯をシャワー状にまんべんなくかけられればベストだが、そんな装置はない。よって、鍋に76℃の湯を沸かし、例の片手鍋を右手に、目の粗いざるを左手に持つ。鍋からざるを通して湯をかけるとそれらしくボドボトと水分が落ちてくる。上出来じゃない? ![]() かけた湯がモルト殻のフィルター層を通って下りてくるまでちょっと時間がかかる。スパージングでとれた麦汁はずっと澄んでいる。 あれ、これくらいクリアになるまで実はロータリングしなければならなかったのかしら?(写真左)1杯目を味見するとまだまだ甘い。 麦汁が目標の量になるまでこうやって鍋に移していく。18リットルのビールを造るためには最低20リットルは取っておかなければ。それでも少ないかな。 |
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| ● 比重を計る。ぷかぷか浮かぶ比重計というものを麦汁に浮かべて、糖分がどのくらい含まれているかを測る。20℃で測れと注意書きがある。ちょっと温度高いけどそのまま測っちゃえ。あれ、8%しかない。20℃だったら数値が違ったりするのかと試しにやってみると、10%になった。注意は守るもんだな。それでも10%は低すぎるかな。これだと 多分3%ちょっとのアルコール度にしかならない。瓶内で2次発酵させるとしても4%にも満たないかも。ベルリーナ・ヴァイセみたいに軽いシャンクビアだ。(以前ドイツのビール税は初期比重によって 4段階に分かれていた。アインファッハビア、シャンクビア、フォルビア、シュタルクビアの順にアルコール度も強くなり、税も上がる 。現在、税金のための区別としては用いられていない。) | |
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煮込み:ホップの約4分の3量を投入して90分間ガンガン沸騰させる。写真右はホップを入れたところ。かたまりが広がったらこんなにたくさんあった。フワフワだ。 この間ただひたすら煮込むだけ(写真下左)なので、鍋やなんかの洗い物をしたり、食事をしたり。ビール造りはキッチンで行うのでこんな日にのんきに食事の用意などできるもんではない。前日に作っておいたカレー(これも前準備のひとつ)をチンして、さささっと食べる。 75分経過したところで、アロマ付け用のザーツホップとコリアンダー、オレンジピールをドバッと入れる。(写真下右)香り用のホップは煮込みすぎると香りが逃げてしまうので、終了前15分に投入するのだ。 |
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灰汁が浮いてる。気になってすくいました。 |
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● 冷却:
そうして次はガンガン煮えたぎっている麦汁を一気に短時間で25℃まで冷ますのだ。ここで「なに、ほっときゃそのうち冷めるさ」とのんびりやっていると雑菌が入って変な味のビールになってしまう可能性がある(らしい)ので、そうなったら今までの全ての労力と時間とお金が無駄になってしまう。 そうならないための特別兵器がこれ(写真)。片方のホースを水道につなぎ、水を通すと銅のパイプをグルグル通ってもう一方のホースの口から出てくる仕組みだ。冷水が通るこの変な形をしたもの本体をそのまま麦汁の入った鍋にどーんと沈めると、約15分から20分で25℃まで下げることができるというもんだ。 たかが趣味のホームブルーイングに、こんな大層なものが果たして必要か迷ったのだが、あってよかった。時間と労力の短縮。それに、私は電気鍋を使っているのでこれは必需品だ。コンロにかける普通の大鍋の場合は流しや風呂に水をためて冷ますことも可能だが、この細腕ではムリだし。 |
これ重いよ。 |
| ● フィルタリング: さあ、これをろ過して発酵タンクに移す作業だ。私の電気鍋にはタップ(蛇口)が付いているのが自慢でね。ちょちょっとひねると麦汁が出てくるので、それをフィルター付きのジョウゴでプラスチックの発酵容器に流し込む。あ、フィルターに何やら不純物が引っかかっている。さらに細かな不純物を取り除くため、ジョウゴの出口のところにお茶用の紙フィルターバッグを取り付けて二重にろ過することにしよう。ちょろちょろとしか流れないので時間がかかる。そのうち麦汁の水位が減って底に沈んだホップが見えてきた。ホップの花の間に沈殿物がくっついている。これがたんぱく質かなあ。ホップはフィルターの役目もするって本当だ。(この作業は両手がふさがっていたので、写真は無し) | |
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● イースト投入:
まず、手を洗う。さらにエチルアルコールを手にスプレーする。パンパンに膨れ上がったイーストの袋にもシュッとスプレー。袋を開ける前にここで雑菌をシャットアウトしておかなければ、イースト(も菌だけど)が変質してしまい、違う味のビールになってしまう(らしい)。袋を開けると「プシュッ」とガスが出てくる。イーストのニオイだ。中の液体を発酵容器に入れ、蓋をして完了。 この後、イーストの活動を活発にするため麦汁に空気を溶け込ませてあげなくてはならない。酵母も呼吸するのね。容器をしばらく揺するか、熱帯魚用のブクブクってやつを利用してやるかで世のホームブルワーはこのプロセスを行っているようだ。しかし、どうも熱帯魚のイメージと後で飲むビールを結び付けたくなくて、私は最初から「ブクブク」は却下した。残るは「揺する」だけれども、この細腕だし。 さっき、ジョウゴから発酵容器に移したとき 30cm くらいの高さからドボドボと落ちたのでその勢いで麦汁が泡立った。ひょっとして空気はもう充分含まれたんじゃなかろうか?そういうことにしよう。 そうして無事に仕込みの全過程が終了し、発酵容器は居間の隅っこに落ち着いた。 |
15L 出来た。 |
| ● 発酵: 12時間後くらいから盛んに発酵が始まった。容器の蓋に取り付けた栓が上下してどんどんガスが出ているのがおもしろい。中では何が起こっているんだろう。どうしても気になって覗いてみた。ついでに写真も取ってみた。うわぁ。 |
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