GBBF 2002 ランビック テイスティング by Lorenzo Dabove
もちろんランビック
GBBF 開催の数ヶ月前、BSF マネジャーであるイアンからメンバー宛にメールが来た。BSF でテイスティングをやろうと思うが、誰かやろうと思う人は?という内容であった。すぐにロレンツォが「ランビックテイスティングをできるよ」と返信してきた。もちろん。彼はベルギービール特にランビックのエキスパートでもあり、イタリアを代表するビアテイスターである。このとき私は、このテイスティングに行こうと決めた。彼以外にできる人はいないからである。
ちょっとナーバス
テイスティングは GBBF の3日目であった。当日までロレンツォはちょっと緊張しているようであった。なぜなら英語でやらなければならないからだ。彼は英語よりフランス語のほうができる。「大丈夫だよ。私が手伝うからね。」と励ましておいたが、効果は無かったと思う。
この数週間前に「ねえロレンツォ、あなたのテイスティングに参加してもいい?」と聞いて、「じゃあ、キミを僕のアシスタントとして連れて行くからね、準備しておいて。」と返事をもらっておいたのだ。やったー。実はこの時点ですでにこのテイスティングは満席に達していて、オフィシャルに申し込むことはできなかったのである。まあ、見学みたいなもんだからランビックはもらえないとしても、参加して学べるだけでも幸運だ。
エンターテイナーでもある
これに参加したい人はもちろん私だけではなかった。BSF バーの常連客のおじさんは、申し込みが遅れてダメだった、と残念そうだった。結局見学しについてきたのは、イタリア人ホームブルワーでロレンツォの弟子でもあるニコラ、フランス人のグウェン、イアン、そして私、なんだか関係者がたくさん...(こんなに何人も仕事を抜けていいのか?)申込者はなんと50人。彼は一人一人と「よろしく」と握手した。こんなテイスターは見たことない。彼はビールも好きだが人も好きである(ベルルスコーニは悪い奴だそうな)。ジョークと笑いでリラックスした楽しいテイスティングは予定をオーバーして2時間にも渡った。
すごい鼻
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参加者の中には初心者もいたので、ランビックの説明から始め、6種類を試飲した。
1. Cantillon 2 years
old straight lambic(Cantillon:唯一の伝統的ランビック製造者) (Oud Beersel:伝統的ランビックブルワー、ブレンダー、しかしボトリングは
Boon による) さまざまな言葉でアロマを表現するが、ランビックなだけにいろんな言葉が出た。ビネガー、フルーティー、ナッティー、メタリックなどはいいとして、ポーク(豚肉でしょ?)、レザー(皮)、ホース(馬!)なんてどこからくるの?彼の鼻と舌は、ベルギーのブルワーも一目置くほどすごい。
写真:ランビックの説明をするロレンツォ |
特別ゲスト
ロレンツォの隣に青年が座っていた。カンティヨンファミリーの友人で、グーズミュージアムの運営に関わっているイヴァンであった。「このためにわざわざベルギーから来たの?」と聞いてみた。「いや、それが spontaneous(偶発的)なんだよ。このビールと同じでね。」GBBFに来るついでにカンティヨンファミリーからロレンツォへの預かり物があって、それを渡しに来たところ、タイミングよくこのテイスティングに借り出されたというわけであった。実はロレンツォはずはりジャン・ピエールを呼びたかったのだが、残念ながら都合が合わなかったそうだ。それでなくても、ロレンツォはブルワーやブレンダー達と個人的に知り合いなので、彼からはいろんな逸話が聞けたりする。
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写真左:ランビックを取り巻く現状について説明するイヴァン 写真右:熱心な参加者たち |
問題と情熱
ランビックのテイスティングをやるのは易しいことではない。初心者に事細かに説明していたらいくら時間があっても足りないし、よく知っている人はもっといろんなことを質問したいからだ。試飲をする時間も質疑応答の時間も必要だし、よく2時間で収まったなあというのが後の感想。その限られた時間の中で、ベルギービール特にランビックの専門家であるロレンツォとイヴァンは、かれらの情熱を参加者に伝えた。
ご存知のように、ランビックはブリュッセル南西の地域、Zenne川流域の谷 Pajottenland でしか作ることができない。イヴァン曰く、世界中どこでも自然発酵のビールを造ることは可能だが、空中に浮いている酵母とその環境が異なるため別の地域で同じものは造れない、できない、ということだ。そう言われてみればそうである。Payottenland で造られる自然発酵ビールがランビックである。現在残っているランビック醸造者のうち伝統的なブルワリーは、ブリュッセルの Cantillon と Beerselの町にある Oud Beersel (とは言っても、ここのブルワーはかなりの年配で後継者もいないため、醸造とブレンドは自らやるが、瓶詰めは Boon でやっている。)の2つだけ。その他のランビックブルワリーは伝統的な製品と並んで、甘くしたもの、フィルターしたもの、パスチャライズした製品も製造しているため純粋に伝統的とは言えないのだ。伝統的ブレンダーの Drie Fonteinen ですらレストランで出すクリークには甘さを加えている。加えてないものは、頼めば出てくるかもしれないが。
不自然に甘いと感じたらそれは疑ったほうがいい。例えば2年物のストレートランビックはまだ糖分が残っていてほのかな自然の甘味があるが、3年物は完全に発酵しているので甘味は残らない。グーズやフルーツランビックはボトル詰めされてからさらに寝かされるのでその間に残っている糖分も発酵してしまう。フィルタリングしたり、パスチャライズして生きた微生物を殺してしまった場合は、これに糖分を添加しても発酵しないが、これはいわゆる死んだビールである。さらにひどいのは、サッカリン(甘味料は発酵しない)を加えること。この「甘い」傾向は、ランビックだけではなく昨今のベルギービール全般に言える。年々甘くなっていくベルギービールに気付いたら、ブルワリーに問い合わせたほうがいいかも知れません。
自称「パヨッテンランドのプリンス」であるロレンツォは、イタリア人でありながら、ベルギーに残っている伝統的ランビックを守ろうと、誰よりも情熱を傾けている。その活動の一環としての、このテイスティングである。「(ベルギー人でなく)イタリア人がランビックのテイスティングをすると言うのは変に聞こえるかもしれないけど、僕のせいじゃない。君たちのせいだ。(It’s not my fault, but YOUR fault!.)」と冗談まじりにイヴァンに向かって言った。周りは笑ったが、イヴァンは真剣な顔をしていた。そうなんだ、我々ベルギー人がもっと声を大にして訴えなければならないんだ、と言わんばかり。
これだけでは終わらない
ロレンツォはランビックの偉大な貢献者である。どれだけの人々が彼によって本当のランビックに目覚めたことか。それだけに彼はカンティヨンファミリーとも近い。それを物語る写真があった。ビアカフェでジャン・ピエールと二人で肩を組んで映っているのだが、なんとジャンの手にはベルヴュー・クリークの缶が。なんとも楽しそうな表情で映っている。冗談で撮った写真にしてもすごい冗談だ。そんなことができるのも、彼だから。
そしてその特権をさらにランビックを守るために利用する。今回、テイスティングに参加した人々がカンティヨン醸造所を訪問する時には、あらかじめロレンツォに連絡を取ると、彼は折り返し手紙を送ってくれる。それには「○○さんは私のランビックテイスティングに参加した方です。くれぐれもよろしく。」というようなことが書かれている。それを持って行けばジャン・ピエールも伝統的ランビックの愛好者が来たなと分かるという訳で、ブルワリー見学もより楽しくなり、またまたカンティヨンの支持者が増える、つまり、本物のランビックの保存につながる、そういうことだ。
言うまでもなく、このテイスティングは大成功であった。
おまけ:ランビック愛好者のための「飲め」リストとカフェリスト(情報提供はもちろんロレンツォ)
Frank Boon: Gueuze Mariage Parfait, Mariage Parfait Kriek, Moriau Oude Gueuze
Girardin: Girardin 1882 (black label)
Lindemans: Lindemans Fond Gueuze
De Troch: De Troch ongefiltered gueze
Belle-Vue: Sèlection Lambic
De Keermaecker: Mort Subite ongefiltered-black label
全て酸味の強い伝統的ランビックです。手に入れるのが難しいものがあります。
カフェ リスト
| 地名 | カフェの名前 | 住所 |
| BEERSEL | In 't Bierhuis | Laarheidestraat 228/232 |
| In De Drie Bronnen | Hoogstraat 13(実際は閉まっているらしい) | |
| Festzaal | Hoogstraat | |
| Drie Fonteinen | Herman Teirlinckplein | |
| Au Grand Salon | Herman Teirlinckplein | |
| Centrum Hotel | Steenweg op Ukkel 11 | |
| In De Oude Pruim | Steenweg op Ukkel 87 | |
| In De Nieuwe Pruim | Steenweg op Ukkel 110 | |
| Cafe' Camping | Steenweg op Ukkel | |
| Au Chevalier | Beersel Kasteel | |
| HALLE | De Triangel | Basiliekstraat 25 |
| De Fazant | Grote Markt 8 | |
| In De Post | Grote Martkt | |
| De Lamme Gisj | Ninoofsesteenweg 231 | |
| LEMBEEK | Cafe' De Kring | Stevens Dewaelplein 15 |
| SINT-PIETERS-LEEUW | In De Oude Smis Van Mekingen | J.B. Cardijnstraat 10 |
| Herberg Moriau | Rink 30 | |
| VLEZENBEEK | In T'vagevuur | Vlezenbeeklaan 91 |
| In De Kongo | Vlezenbeeklaan 144 | |
| Zaal Elysee | Vlezenbeeklaan (kerk) | |
| SINT-ANNA-PEDE | Bruegehlhof | Rollerstraat 83 |
| SCHEPDAAL | In De Rare Vos | Marktplein 22 |
| WAMBEEK | Den Esseleer Bij Germaine | Langestraat 69 |
| SINT-MARTENS-LENNIK | De Klosken | Brusselsestraat 24 |
| DENDERLEEUW | De Heeren Van Liedekerke | Kasteelstraat 33 |
| GOOIK | In Den Haas | Wijngaardbosstraat 6 |
| De Cam | Dorpstraat 67a | |
| In De Groene Poort | Doorpstraat 31 | |
| KOKEJANE-HERNE | 't Fonteintje | Assesteenweg 69 |
| ZELLIK | In De Zwaan | Steenweg Op Gent 539 |
| BEKKERZEEL | Lambic Kelder | Notelaarstraat 32 |
| Cafe' Van Hoedenhoeve | Notelaarstraat 10 | |
| ASSE | In De Koekoek | Edingsesteenweg 200 |
| RELEGEM | Den Ouden Belg | Dorpstraat 40 (kerk) |
| MOLLEM | Bij Rie Van Mollem | Dorp 6 |
| BRUSSELS | De Zageman | rue de Laeken 116 |
| Bier Circus | rue de l'Enseignement 89 |
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