ハワース リアルエール&パブ ガイド

訳:小池ひさこ

このガイドは CAMRA に依頼されて私が訳したものです。
ハワースのツーリストインフォメーションにはこのガイドの小冊子が置いてあります。


リアルエールとは?

エールとはビールの別名です。伝統的な方法で造られたビールのことをリアルエールと言い、「エール」は「ビール」よりも古い言葉です。リアルエールは通常、水、モルト(大麦麦芽)、ホップ、イースト(酵母)から造られますが、その他の自然の原料を使用したリアルエールもあります。

ビールの醸造は英国に古くからある習慣で、その醸造方法は何世紀もの間に少しずつ変化してきました。最初はほとんどの家庭や宿で独自のビールを醸造していました。当然ながら、造りすぎてビールが腐ってしまうこともあれば、逆に少なすぎて足りなくなることもありました。そして次第に、必要なときに醸造者から必要なぶんだけを買うほうが効率的だという考えが定着してきました。それでもパブや宿では醗酵の終了したビールを買うことはなく、醗酵が終了する前のカスク1に入ったエールを買い、数日間涼しい貯蔵庫にねかせておいたのです。その間にイーストは底に沈殿し、炭酸をつくりだします。この炭酸によって、グラスに注いだときの「ヘッド」(泡)ができるのです。パブのオーナーとスタッフはビールを最も飲み頃の状態で客に出すため、取り扱いに関して十分な知識を持っていなければなりませんでした。

約20〜30年前、大規模なブルワリー(醸造所)はもっと安くビールを造ればそれだけ利益が増えるという考えのもとに、いろいろな方法でコストを抑えました。まず、安い原料の使用です。例えば、糖分(後に醗酵によってアルコールに変化する)の供給源であるモルトは高価なため、一部を砂糖で代用しました。アルコール度数の低いビールは原料が少なくてすみ、醸造に要する期間も短くてすみます。なかでも最もひどいのは、ビールを造るのに使用されたイーストが熱処理されて殺されたり、ろ過によって取り除かれたりしていることです。このような状態でパブに送られたビールは、イーストを含んでいないのでねかせる必要はなく、すぐに客に出すことができるのです。こうして醗酵が止められたビールには、炭酸を補うために人工的に炭酸ガスが加えられますが、これにより質の劣るビールが生産されます。質の劣る味をごまかすため、このようなビールは低温に冷やして飲まれます。
The Campaign for Real Ale (CAMRA) は、ブルワリーに対して質の高い「リアルエール」を造り続けるようキャンペーンを行っている団体です。またパブのオーナーに対しても、客がリアルエールを選べるようにリアルエールを売りつづけるよう説得する活動も行っています。このガイドでは、ハワースで伝統的なリアルエールが飲めるパブを紹介します。

リアルエールはどのようにして造られるのでしょうか?
エールは普通、水、モルト、ホップ、イーストから造られます。英国には多様な地質があり土地によって水質も異なるため、結果として醸造に使用される水はビールの味に大きな影響を与えます。

モルトは穀物の一種である大麦からつくられます。大麦に水分を与えて発芽させると、含まれるでんぷんが糖分(モルト)に変化します。できた大麦モルトをゆっくりとローストし乾燥させ、貯蔵できるようにします。モルトの糖分はイーストによる醗酵の結果、アルコールに変化します。より深くローストされたモルトを原料に混ぜると、イーストが使用することのできないより複雑な構造の糖分により、ビールに独特の風味が加わります。

使用されるイーストの種類もまた、ビールの味に影響を与えます。ヨーロッパ大陸式のビールは下面醗酵イーストから造られます。このイーストは酸素の少ない醗酵タンクの底に留まります。他との違いを重んじる英国では、上面醗酵のイーストを使用します。これはビールの醗酵時に上面に浮かびます。(下面醗酵ビールより)速く醸造することができますが、同量のモルトに対してわずかにアルコール分が少なくなります。最後に、ホップがさらに風味を加え、同時にビールの防腐剤の役目を果たします。ホップには苦味と、繊細なアロマ(芳香)があります。リアルエールには通常、苦味が強く、はっきりしたアロマを持つ種類のホップが使われています。

さあ、ここで大規模ブルワリーのビールとリアルエールとの非常に重要な違いについて述べます。よく「ケグビア2」と呼ばれるリアルエールではないビールは、いわば死んだ無菌ビールです。イースト菌を含んでいないため、すぐにでも飲むことができます。つまり、貯蔵庫でねかせるための場所も取らないし、飲み頃を見極める熟練も必要としないのです。しかしながら、腐るのを防ぐために非常に低温で保存しなければなりません。低温のビールには香りがほんのわずかしかありません。ケグから注がれるときには圧縮ガスが使用されます。ガスは低温の水によく溶けるため、よってケグビアは炭酸がとても効いています。それを飲むとビールは体内で温まり、同時に胃の中に入ったガスはどちらかの方向から体の外へ出なくてはなりません!それに対してリアルエールは生きています。パブの貯蔵庫にねかされている間、少しずつ熟成し、醗酵を続けています。貯蔵庫は常に冷たいというより涼しい状態に保たれています。でなければ、いつまでたっても飲み頃にはならないからです。リアルエールは普通ハンドポンプを使って注がれるので、ゲグビアほど炭酸は効いていません。ぬるいと感じられることもあるリアルエールの温度はアロマと風味をたのしむための適温です。ハンドポンプでビールを注いでいたら、それはリアルエールだというしるしです。


リアルエールを飲む

さあ、次は実際にリアルエールを飲みに出かけましょう。ワース谷(Worth Vally)のパブはどこもフレンドリーですが、あなたが旅行者なら初めての土地で慣れない飲み物を注文するのは難しいこともあります。英語にいまひとつ不安を抱いている場合はなおさらです。しかし幸運なことに、外国語が苦手な私たち英国人は、あなたにとって外国語である英語が難しいということが十分理解できます。ですから、欲しいものを指さしていくつかの単語をいえば通じるはずです。

パブに入ったらまず、バーカウンターに行きましょう。スタッフは普通一人ずつ順番に応対しますから自分の番が来るまで待つこともあるでしょう。そのときにはあなたが客であり、順番を待っているとわからせることが重要です。手にお金を持ちバースタッフを真っ直ぐに見るといいでしょう。どれを注文すればいいか、なんと発音するのかわからなくても心配要りません。リアルエールはラベル付のハンドポンプが目印です。欲しいビールを指さし、グラスのサイズといくつ欲しいかを言います。英国では「パイント」(約560ml)か「ハーフ」(約280ml)で注文します。注文するビールが気に入るかどうかわからないときは、まずハーフを試してみてください。グループのそれぞれが違うビールを注文して、お互いのグラスを試すのもいいでしょう。


パブリスト

この歴史的土地ハワースで、伝統的方法を用いて醸造されたリアルエールが飲めるパブの簡単なリストです。キースリー(Keighley)は家族経営の地方ブルワリー、ティモシー テイラー(Timothy Taylor)の本拠地です。ティモシー テイラーは1999年の英国チャンピオンビアに選ばれた 「ランドロード」(Landlord)を含む6種類のビールを造っています。

1. オールドサン(The Old Sun)‐広い空間のパブ。テトリービター(Tetley Bitter)、テイラーズ ゴールデンベスト(Taylor's Golden Best)が飲める。終日、毎日営業。週末ランチがある。大スクリーン テレビ、ビリヤード台、音楽(時々)がある。

2. オールドホワイトライオン(The Old White Lion)- 数部屋からなるパブレストラン。小さな暖かい雰囲気のバーがあり、シークストン ベストビター(Theakston Best Bitter)、ウィルソンズ ビター(Wilson's Bitter)が飲める。食事は11.30am〜2.30pm、6pm〜9.30pm。

3. キングスヘッド(The Kings Head)- オープンフロアのバーエリアでは、マーストンズ ぺディグリー(Marston's Pedigree)、バートンエール(Burtoon Ale)、テトリービター(Tetley Bitter)、定期的に変わるゲストビア3が飲める。終日営業、食事は、月、火:正午〜4pm、水〜土:正午〜8.30pm、日:正午〜4pm。

4. ブラックブル(The Black Bull)- ブラムウェル ブロンテの椅子が呼び物の広いバー。終日営業。カースル エデン エール(Caltle Eden Ale)、ボディントンズ(Boddingtons)、フラワーズ(Flowers)のビールが飲める。食事は、日〜木:正午〜9pm、金、土:正午〜5pm。

5. フリース(The Fleece)- キースリーのティモシー テイラー ブルワリー所有のパブ。終日営業。テイラーの6種類のエール、ランドロード(Landlord)、ベストビター(Best Bitter)、ゴールデンベスト(Golden Best)、ラムタム(Ram Tam)、ダークマイルド(Dark Mild)、ポーター(porter)をすべて飲める。食事もできる。店のポリシーにより、これらのエールのうち一つはいつも1パイントが99ペンスで買える。

6. オールドホール(The Old Hall)- オープンフロアのバーエリアは終日営業。テトリービター(Tetley Bitter)、ブラックシープ スペシャル(Black Sheep Special)が飲める。食事は終日OK。ただし日曜はランチとディナーの時間帯のみ食事可。

7. ロイヤルオーク(Royal Oak)- オープンフロアのパブ。キースリー ワース谷 スチーム レールウェイ ステーションの向かい側。ビールは時によって変わるのでバーカウンターでチェックしてください。

注:ビールはブランドとスタイルによってその味も異なります。ゲストビアだけでなく定番のビールも、パブの経営者の方針や、その時にバーに出しているものにより変わります。パブはその雰囲気と特徴によってそれぞれ異なった良さがあります。


1 カスク (cask) : カスクそのものはビールを入れる樽のこと。ここでは特に「生きたビール」の入った樽を意味する。

2 ケグビア (keg beer) : 熱処理された、言わば「死んだ」ビール。ケグはビールを入れる樽のこと。

3 ゲストビア (guest beer) :パブが契約している醸造所のビールとは別に、オーナーが選んだ完全に独立したビールのこと。

 

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