イギリス人の「個」とドイツ人の「個」


27 Jan., 2002

ドイツ人の同僚が言った言葉がずーっと気になっていました。「英語って、どうして I (私)って大文字で書くのかしら。」 私にとっては新鮮な疑問でした。中学で習い始めたときから既にそういうものだったんですから。何の疑いも疑問もなくこれまでずーっと I は大文字で書いてきました。この同僚、言葉を続けて「『私』、『私』って、そういうの嫌いだわ。」 自己主張が強いと言いたかったのか、エゴが強いと言いたかったのか、ドイツ語の「私」 = ich (文頭以外は小文字で書く)と比較していることは明らかでした。

うーむ。ちょっと待てよ。私に言わせりゃ、よっぽどドイツ人のほうが自己主張が強くて、自分さえよけりゃ人はどうでも良いという態度を取ってるんだけど...。(いや、これには本当にうんざり、とドイツに住む外国人は口をそろえて言います。)

そこでわたしは、またしても素人の文化比較論などを展開しようと試みるのです。ドイツ語を母国語とする人と英語を母国語とする人の「個」に対する考え方の違いについて。

イギリス人は自分の「個」を大事にし、お互いの「個」を尊重します。親子であっても、上司と部下であってもお互いに「個」を尊重した表現が使われます。例えば、親が子に、上司が部下に何かしてくれと頼むとき、それが当然その人がすべき事(仕事)であっても、「Could you (please) 〜 ?」という丁寧な依頼の表現が使われます。家族や親しい友人間で、ごく簡単な事を頼むとき(そこの雑誌をちょっと取ってくれ、とか)は「Can you 〜 ?」でもよいでしょうが、仕事では最低でも Could you 〜 ?/Could I 〜 ? などを使用する方が、人間関係も仕事も円滑に運ぶことは間違いありません。

一方、ドイツ人は英語で言えば Can you 〜 ?/Can I 〜 ? にあたる表現を使うことが多いようです。(あくまでも私の印象ですが。)初対面であってもそんな感じですから、ぶっきらぼうな表情の割にはなんとカジュアルな人達だ、もしくは、失礼な人だ、と私なんかいまだに違和感があります。時には、買い物をしていてお店の人に何か商品に関するアドバイスを受けている場合など、彼らに「Sie muessen 〜」 (= You must 〜)を連発されることもあり、なんだかこちらはだんだんと不愉快になってくるのです。ドイツ人の彼らとしては、「あなたがそうなさることを強くお勧めいたします。」という意味でこの muessen を使うのでしょうが、私にとってはこの表現はダイレクトすぎて、少々うんざりします。しかし、まあ、郷に入っては郷に従えといいますから、これはこれでよしとしましょう。

余談ですが、ただ、この調子でドイツ人が直訳英語で You must 〜 と言ってくるときには、本当に閉口します。英語の must という表現の強さと使用上の注意について親切心から教えてあげるべきか、いや、彼らにとっては大きなお世話だろうから、彼らの「個」を尊重してそのままにしておくべきか、いつも迷うところです。

話を元に戻すと、I と大文字で書く英語圏の人々は、「私」が大切ですから相手の「私」も同じように大切にします。結果として、私は私のやりたいようにやるからあなたもあなたの思う通りにやってくれて結構、私のアドバイスはこうだけれども、その通りにやるかどうかはあなたの決めること、という風に、本人に決定の余地を与えているような気がします。ich と小文字で書く国の人々は、私の ich は実は「Ich」で、あなたの ich は「ich」である、という「個」のあり方であるような印象を受けます。(私感) 私の言っていることがあなたにとっても正しいことで、私のアドバイスはあなたにもきっと有益のはずだから、あなたは私の言う通りにしなさい、と本人には選択の余地すらないような気がします。一般的に、ドイツ人にはおせっかいオバさんが多いようです。

ここでさらに疑問が出てきました。「(わたしは)〜します。」と、「私」という言葉をあまり口にしない私達日本人の場合はどうなんでしょうか...。日本人の「個」に対する考え方とは。私はれっきとした日本人ですが、即答するにはあまりにも長く日本から離れています。ぜひ、皆様からのご意見お待ちしております

 

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