やる気のない自販機


19 Apr., 2003

「オレ、この自販機嫌いなんだ。」とは、ある喫煙者のことば。それが最寄なのだけれども素通りする。50mほど歩いて次のタバコ自販機が見えてきた。「オレ、これも嫌いなんだ。」とまた素通り、その20m先の自販機でやっといつものゴロワーズを買う。どれだって同じじゃん?日本の感覚ならそう。

有人か無人かの違いだけで、結局は自販機もその国のサービス精神と同じだと思う。日本のようにいつでもどこに行っても丁寧なサービスを受けられるわけではなく、あたった人によって気持ちのいい笑顔の応対を受けることもあれば、「どっちが客や?やる気がないんやったらとっとと帰れ!ああ、胸くそ悪いわ。」と言いたくなったり、バリエーションに富むのがドイツのサービスである。

それと一緒で、きちんと仕事をする自販機もあれば、「えっ?なに?タバコ?はいはい、分かりましたよ。ああ、だるぅー・・・。」と、のらりくらりとやるのもある。件の自販機はどういうのかと説明すると・・・。まずコインを入れる。ドイツでは一箱3ユーロ(約400円、今日現在)で、使えるコインは2ユーロ玉、1ユーロ玉、50セント玉である。札なんてとんでもない。

買いたいタバコのボタンを押す。すると、古臭い小さな液晶ディスプレイに一言『売り切れ』と表示される。じゃあマルボロ・ライトにするか、と別のボタンを押すとまた『売り切れ』、んじゃあミディアムでもええわい、とそこらじゅうのボタンを押してみるがことごとく『売り切れ』、『売り切れ』、『売り切れ』、しまいには『アホ、それも売り切れじゃ。ざまあ見ろ』と言われているような気さえしてくる。「だったら最初から売り切れのやつを教えろ!シャイセ!(くそ!)」と喋らない自販機に向かって悪態のひとつもつきたくなるもんだ。

「もうええわ、てめえなんかから買うか!」と、コイン返却ボタンを押すと、今度はウンともスンとも言わなくなる。「おい、金返せ!」と激しくボタンを押してみても、相手は彼のコインを飲み込んだまま知らん振りである。こんなの詐欺じゃん。でもあきらめるしかない。やる気のないやつにはいくら言ってもムダ。

しかしこの自販機でも、お金を返してくれるときもあるのだ。それがまた実にむかつくやり方なのだが。またコイツ飲み込んでしまうんじゃないかと半ば恐る恐る返却ボタンを押す。しばらく間があって、「あ、またやられた・・・」とうなだれた瞬間、このやる気のない自販機は「持ってけ、ほれ!」と言わんばかり、「ペッ」とコインを吐き出す。その間の良さは下手な漫才より笑えて、部外者の私には拍手喝采ものである。客であるはずの彼は黙って地面に落ちたコインを拾い、別のちゃんと仕事をする自販機からようやくタバコを買うことに成功するというわけだ。

日本の自販機はすごいよなあと思う。お札を入れてもちゃんとおつりが返ってくるし、売り切れのものはボタンを押す前に分かるし、お金もちゃんと返してくれる。「ありがとうございました」なんて喋るのまであったりして。


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