ダックスフントの顔が細いのはどうして?足が短いのは?耳が長いのは?
13 Oct., 2002
私の日常生活には、コテコテのバイエルン人(皮のズボンをはいて、ビールを飲んで、どこへ行ってもバイエルンの方言で話すひと)と交流する機会はあまりない。彼らの集まる場所というのはだいたい決まっていて、私にはそんなとこに行く用事はないのだ。ドイツ人ですら分からないときのあるバイリッシュという方言は、外国人の私にはそもそも理解不可能だと思っているのである。
そんなある日、オクトーバーフェストで丸1日楽しんだ帰り、同じ地下鉄の駅で降りたおじさん二人とおばさん一人のグループに誘われて私と二人の友達はフラフラと近くのカフェに入った。おじさんたちも、まあ、よく飲んだんでしょう。危険ではないけれど、ずいぶんと陽気である。「ほら、おごりだから、一緒に来な。」
ビールは水も同然のこの地域では、看板に「Cafe」と書いてあっても必ずビールは置いてある。私達は、一見して常連だと分かる(陶器のマイジョッキで飲んでいる)バイエルン人のおじさんが一人で座っているテーブルに、どわーっとおじさんを囲むように座った。こっちは日本語、あっちはバイリッシュで、なんとも不思議な会話が始まった。わたしは両方の話していることが分かるが、通訳をしてしまうとみんな私にしか話しかけてこなくなるので、だまって見ていた。ほっときゃ、身振り手振りでもなんでも通じるのである。
友達の一人が、日本で飼っているダックスフントの話を始めた。「ダックスフント」という一言で話は分かるのである。ウーリという名前の例のおじさんは標準語の「ダックスフント」に最初ピンとこなくて、他のおじさんたちの助けでやっと理解した。バイリッシュでは「ダクサー」だとかなんとか(うろ覚え)と言うそうだが、ウーリは私の友達に向かって
「ダクサーだろ?鼻がこうで、こうで、胴が長くて、脚がこうで、こうで、耳はこうで、こうで...。」
95%は身振り手振りの世界である。ドイツ語では「このように、そのように、そんな風で」というとき「so」という単語を使う。ウーリは
「鼻が so, so, so... 脚が so, so, so... 」
so しか言ってないのである。私の友人はというと、
「そう、そう、そう。そうなのよ。」(日本語で)と、やはり「so」しか言ってない。「so」だけで会話している...。恐れ入りました。
ウーリ曰く、バイエルンではダックスフントの顔が長いのは、ビアジョッキに顔を突っ込んで最後の一滴を舐めるためだそうだ。脚が短いのは、飲みすぎても足がもつれないように、耳が長いのは北からプロイセン人がやってきたときに目隠しをするためだそうだ。ダックスフントは狩に使われる犬かと思っていたが、どうやらバイエルンでは違うようである。
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