グランパスの子供たちがやってきた
19 May, 2002
子供って、こんなにかわいかった?名古屋から飛行機を乗り継いでミュンヘンにやってきた9歳と12歳の子供たちはみんな真っ赤なグランパスのジャージを着て、彼らの体には大きすぎるスーツケースを慣れない様子で押しながら、空港の到着口から出てきた。みんな「ここはどこだろう」と言いたげにキョロキョロしている。中には既に不安そうな表情を浮かべた子もいる。小さい、かわいい。日ごろドイツの子供ばかり目にするせいか、体格だけはよくて小生意気な子供たちがやって来るもんだと想像してたら...。
名古屋グランパスの少年チームが、このドイツ、オーストリア遠征で初めて海外体験をする。サッカーは国境のないスポーツだ。最近の日本人選手の海外進出を考えても、彼らの年齢で世界レベルのサッカーを体験するのは決して早すぎることではない。私はこの日、彼らを迎えてホテルまで案内し、お世話する手伝いをした。
9歳の子供たち12人、チームの監督さんと一緒に、何台かの車に便乗してミュンヘン郊外の小さな村にあるこじんまりしたホテルへ向かった。私は6人の子供たちと一緒に大型タクシーに乗り込む。長距離フライトの疲れを見せないくらい彼らは元気だ。結局、約30分の移動の間中彼らはずうっとしゃべっていた。星は日本よりドイツのほうがきれいだとか、車はやっぱり逆を走るんだとか、機内食はまずかっただとか。九州出身の私からしてみると彼らの言葉はとてもおもしろい。発表されたばかりの日本代表チームの話題になると、同じグランパスのGKをもってして「楢崎は点取られるがぁー。」とか、サントスのことを「あいつはぁ...」とか。おいおい、キミたちも将来は彼らみたいな代表選手になりたいんじゃないの?それをあいつ呼ばわり?いいねぇ、子供は言いたい放題で。
この中から将来、海外チームで活躍する選手が出るかもしれない。そんな彼らに、質問してみた。「好きな外国の選手は誰?」
「フィーゴ!」、「ジッダーン!」
「こないだのチャンピオンズリーグの決勝はすごかったね。ジダンのシュート。」みんな見たのかなと思って、言ってみた。
「あいつ、うまいけど髪がないんだよなぁ。」...子供は怖い。
別の車で子供たちを乗せてきたドイツ人2人と一緒に、ホテルの部屋割りをして監督さんと子供たちを案内した。彼らドイツ人たちは日本語が出来ないし、子供たちもまだ英語すら習っていないので、コミュニケーションは身振り手振りだ。こっちの心配をよそに子供たちは平気な顔で案内された部屋番号を探す。「アインツ、ヌル、ドライ」と、なんとドイツ語で部屋番号を言っていた子がいたらしく、案内役のドイツ人はとても驚いていた。
言葉が通じるかどうかなんて、子供にはあまり関係ないようだ。大人になってから海外に行くとまず言葉が大問題だが、小さいうちから身振り手振りでコミュニケーションをする体験をしていると、大人になってからも外国に対する不安も外国人に対する恐怖感もあまり持たないのではないかと思う。これは、サッカー選手だけではなく、日本人一般にとっても将来的に大切なことではないだろうか。
彼らは、Jリーグのプロチームに属する子供たちだ。プロの育成を受けている。今回の遠征ではドイツ、オーストリアの同じくプロチームの子供たちと試合をする。同じ立場の同じ年齢の選手たち同士の交流もあるはずだ。私はサッカー素人だけれども、グランパスの子供たちには今回の滞在を通して、かけがえのないものを学んでほしいと思った。それは、この遠征をオーガナイズしたご本人をはじめ、快く受け入れてくれた現地のクラブ、滞在中お世話になるホテルの方々など、さまざまな形でかかわったみんなの願いではないかと思う。
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