イタリアの物乞いはちゃっかりしてます


ロレンツォとアレッサンドロはミラノに住む友人です。彼らがミュンヘンにやってきたので案内しながら街を歩いていました。ホフガルテンという庭園があり、そこでバイオリンを引いているおじさんを見かけて、私はある話を思いだしました。「あのね、ちょっと前に楽器ひきのおじさんがいてね、」と、私は彼らに話し始めました。

そのおじさんとは、以前私が働いていたミュンヘンの日本食レストランに、店内で楽器をひかせてくれと入ってきた小柄で色黒のどこかの小さな国からやってきた男性でした。こういう人たちはレストランをまわって、楽器をひき、お客さんからお金をもらって(おそらく)生活しているのだと思います。このおじさんの楽器は何かの民族楽器なのでしょうか、私には手作りの鉄琴のように見えました。残念なことに、彼の音楽はドイツの一般の人々には受け入れられないようで、店長は店内でひくことを断りました。すると、おじさんは「明日、国に帰るんです。今晩が最後なんです、どうかひかせてください。」と訴えましたが、結局許してもらえずそのまま帰っていきました。私は、最後なんだからちょっとくらいひかせてあげてもよかったのにと、おじさんに同情しました。店をあとにする彼の背中を見ながら次に入って店ではひかせてもらえるようにと祈りました。翌日、ある別の店で私がビールを飲んでいると、なんとその日国に帰ってしまったはずの鉄琴のおじさんがやってきて、ひき始めたではありませんか!おかしくて、おかしくて、大笑いしました。ちなみに、彼の音楽は私にも受け入れがたいものでした。

という話を、ロレンツォたちにしました。彼は、「そういう(ちゃっかりした)人の話ならイタリアにもいっぱいあるよ。」と、彼の見た物乞いの話をしてくれました。

その1:路面電車の中

その物乞いは乗客たちに、自分が失業して、養う家族がいて、国は何も助けてくれず生活に困っているのだと訴えていました。乗客の中には彼にいくらかお金をあげる人もいたのかもしれません。しかし、ある日、ロレンツォは彼を見かけました。競馬場で馬券を手にエキサイトしているその物乞いを。

その2:横断歩道で

その物乞いはいつもその横断歩道のそばの路上にいました。彼は脚が悪く、歩くのすら困難なようで、仕事などとても出来そうにありませんでした。道行く人々にお金をめぐんでもらうしかなかったのかもしれません。弱い人にとてもやさしいロレンツォはいくらかを彼にあげました。一度ではなく、何度も。しかしある日、ロレンツォは見てしまいました。その物乞いが走ってその横断歩道を渡っているのを。そばで聞いていたアレッサンドロは「みんなからもらったお金で脚を治したのかもしれないよ、ハハハ。」と冗談を言いましたが、ロレンツォは以来、彼にはビタ一文(リラ)あげていないそうです。

こんな話ならイタリアには山ほどあるよ、と言う彼らの住む国には一度しか行ったことがありませんが、それでもこんな人たちが普通にいそうだということはなんとなく分かります。隣りの国なのに、こんなにも違うのかと、驚くやら、面白いやら、ヨーロッパならではです。

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