文句は言いよう


26 July, 2003

ドイツ人のいい加減さとサービスのお粗末さには、住んで4年たった今でもむかつく。「ああ、また文句言いに行くのか・・・。」言う方だって不愉快になるのだ。しかも相手の言葉で苦情を言うのは、こっちにとって不利である。

アマゾン・デーエー (amazon.de) でデジカメを買った。アマゾンで注文するとドイチェポストが届けてくれる。これが曲者でね。昼ごろに「小包デース。ピンポーン」なんて来られても、「てやんでぇ、こっちは高い税金払うために毎日働いてんだ、夕方出なおして来いっ!」と言ってみたくもなるが、不在なので言えない。後日、ヒラヒラと不在票を持って最寄の郵便局に取りに行くのが普通。

「まあ、でも今回はデジカメだから受け取りも楽しみだし。」と、翌朝、いそいそと郵便局が開くと同時に取りに行った。カウンターで不在票を渡して、受け取った小包は「あれ?小さいなあ。」一緒に注文したメモリーカードだけ先に発送されたんだなとすぐに察しがついたので、後でアマゾンに電話してカメラはいつ配達されるのか聞いてみればいいやと、その小さい荷物だけ受け取って素直に去った。

その後、仕事の合間に電話で問い合わせてみた。アマゾン曰く、「22日に届けましたが不在だったので持ち帰りました。郵便局で受け取ってください。」
なぬ?いやーな予感がした。「今朝、行ったんです。そしたらメモリーカードしか受け取りませんでしたけど。別々に梱包して送ったんでしょ?」
「そうです。2つ一緒に郵便局に持ち帰ったと、ここ(アマゾンのコンピュータ)に記録されてますので、取りに行ってください。ちょっと待ってね、いま小包番号をあげますからそれを郵便局で渡して・・・えーっと番号は・・・。」あーあ、またやつら、いい加減な仕事しやがって。その度にこっちは時間と労力を費やすことになる。ポストに行ったら文句の一つや二つも言ってやりたいところだが、いや、それは得策ではない。逆切れされて、私のカメラを探してくれなかったら損するのは私だ。まったくむかつく話だが、ここはこっちが穏やかに話をせねば。

ドイツ人は相手が客だろうと何だろうと、自分の非を絶対に認めたがらない人が実に多い。また、それが余計なエネルギーを使わなければならない理由なのだが。(余談ですが、ドイツの人間関係っつうのは「上司は、説き伏せても、絶対に言い争いはするな」というのが常識だそう。つまり相手が上司でなければガンガン言い争ってくる。ああ、疲れる。)ましてや、相手が外国人だと「あんたにはドイツの事情が分かってないのよ!」と言わんばかりの態度でまともに聞いてくれないことだってある。このように言葉や相手の偏見、ついでに体格の違いというハンデを抱えて、それでもこっちの思うとおりに動いてもらうにはいろいろな策を講じる必要があるのだ。

まず言葉での説明を補うために、ビジュアルなものを準備する。この場合は、アマゾンの「注文確認書」兼「発送済み確認書」(ドイツ人はこういう証明書のたぐいに弱い。黄門様の印籠に値する。)のプリントアウトと、その日の朝に受け取ったピクチャーカードの小包そのもの。次に、焦らず、感情的にならず(むかついているときほど困難だけど)、余計な説明は省いて、こっちは何を求めているのかを単文で言う。そうして、用件を伝える前の「笑顔で挨拶」がとても重要なのだ(と思う)。

郵便局に行って列に並んだ。「今日は、あの人と、あの人と、あ、あのババアがいる。あのいつも感じのいいおじさんになればいいなあ。ババアにだけは当たりませんように。」と、できるだけ手ごわくない局員が当たるようにと願いつつ順番の来るのを待った。狙っていたおじさんの窓口がもう少しで空きそうだという時、ババアが「こっちよ」と合図した。以前、彼女にはむかついたことがあるので、この瞬間、「ああ、やられた・・・」とすでに運が遠のいて行くのを感じつつ、気を取り直し、笑顔を作って対戦した。そのやりとりはこうである。

「こんにちは。小包を取りに来たんです。でも、あのオレンジのカード(不在票)は今朝、渡しました。そのときこれだけ(朝に受け取った小さな包みを取り出しながら)もらったんです。本当は2つあるはずなんですけど。ほら、ここに(アマゾンの確認書のプリントアウトを広げて)商品を2つ買って、両方とも同じ日に発送されたってあるんです。」
「ちょっとその小包見せてもらえる?うーん。じゃあ、本当は2つ小包があるはずなんだけど、不在票には1つって書かれていたのね?」
「そうなんです。」(困っちゃった、という感じを出して。役者やねー。)

彼女はその小包とプリントアウトを手に、カウンターの裏に探しに行った。しばらくして怪訝そうな表情で戻ってきた彼女の手にはもうひとつの箱が!
「もう1つの小包、見つけたんだけどね・・・。」
「スーパー!!!」(じゃあ、はよくれっ。)
「でも、どうやって2つあるってわかったの?」
「アマゾンに電話したんです。そしたら、一緒に送ったけど別々に梱包されてるって言われて。(いいから、はやくして!)身分証明、必要ですか?」本人の確認をするために荷物受け取りには、IDカードや免許証などを提示しなくてはならない。
「ええ、お願い。えーっとこれがあなたの・・・。」
「はい、はい、ファーストネームです。」やっと受け取りのサインをして、さあ帰ろうというとき、

「どのくらいドイツに住んでるの?」予想外の質問であった。
「4年です。」
「来てからドイツ語勉強したの?」
「ええ。こっちで始めました。」
私は日本人なので、こんなおしゃべりしてるよりあの長蛇の列を見てごらんよとどうしても後の人の心配などをしてしまうが、彼女はそんなこと構っちゃいない。
「4年でそんなにうまくなったの?ドイツに来て十何年も経つ人たくさんいるけど、それでもすごく聞き取りづらいひとが多いわ。あなたはうまいわ。学生なの?」
ちょっと小慣れた発音で話すと、彼らは「うまいのね」とまんまと騙されるのである。それに、このときは超シンプルな単文作戦だったのでなおさらひっかかったらしい。

それより私が驚いたのは、前回私にあんなに意地悪な応対をした彼女(もうババアと呼ぶ必要はなくなったなあ)の、この態度の変わりようだ。よっぽど機嫌がよかったのか、前回たまたま不機嫌だったのか・・・。無事にカメラを手に入れたばかりでなく、誉められるというおまけまでついて、大満足で家路についたのは言うまでもない。

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