4年ぶりの里帰りレポ その3: 日本は(もっと)おいしい(はず)
24 March, 2002
日本は(もっと)おいしい(はず)
里帰りしてきた人々が皆、口をそろえて言う。「日本の食べ物は本当においしいよー。魚は新鮮だし、お米はおいしいし、もう2キロも太ってきちゃった。」なので、私は何キロ太ってもいい覚悟で、二週間の滞在中かなり期待して毎回の食事に臨んだわけだが、「あれ?こんなもんか?」と思うことがしばしばあった。日本からドイツに持ち帰ってきた食品を使って自分で作った食事の方がよっぽどおいしかったりするのだ。なぜ?なぜ?なぜ?
それは、無いものねだりだ。手の届くところにあると有り難味が減る。いつでも手に入る、そこにあるのが当然になると、貪欲になれない。
例えばオニギリ。ドイツでオニギリを食べると非常においしい。温かいご飯に梅干を入れて、パリパリの海苔を巻いてほおばる。大げさだが、ちょっとした至福の時である。一方、日本では自分で作る必要も無く、夜中でもコンビニに行けば様々なオニギリが並んでいる。具もバラエティに富んでいるし、どれものりはパリパリだ。ドイツでずーっと食べたいと思っていたコンビニのオニギリだ。いざ、食べてみると「あ、こんな味だったな。」と、気持ちが入っていないのに気づく。
新鮮な魚はどうか。日本で食べた鮨や、刺身、魚はさすがにおいしかった。もともと、なまものはそれほど好んで食べない方なので、せっかく帰ってきたんだからという気持ちで食べたに過ぎない。(おいしかったけど。)他に食べたもの?うどん(どん兵衛含む)、そば、たこ焼き、てんぷら、菓子パン、柿ピー、ごぼう、鍋、大黒屋の天丼、その他いろいろ、今思い浮かべるとどれもすごくおいしそうだが、実際に日本で食べたときは、申し訳ない、「ふーん、こんな味ね。」と、味わうと言うよりは確認するような感じであった。もったいない。
短期間とは言えども、日本に滞在している限りはそういったおいしいものが、簡単に手に入る環境にいるのだ。珍しくも何とも無い。私のドイツでの環境はどうか。ドイツにいても、ある程度の都会に住んでいれば日本食は手の届くところにある。ミュンヘンにも日本食レストランはあるし、私自身、一年前まで日本食レストランで働いていたので、鮨や刺身なんかは毎日見ていた。日本人と一緒に暮らし、日本の会社で働いて、自分で日本食を作って食べれば、好むと好まざるにかかわらず周りには日本的な環境が存在する。飢えることは無い。
ロンドンに住んでいた4年前は飢えていた。物価の高いロンドンで日本食レストランに行くことはほとんど無かった。同居人はイギリス人とアイルランド人で、イギリス人の会社で働いていた。この時は、日本食を見るだけで感動したものだった。しかし、今の生活、環境を考えると、日本食に感動するまでには至らないだろう。わたしはイギリス人ほど食事に無頓着ではないが、グルメでもない。今は時間の方が大事なので、食事や料理には時間をかけたくない。普段は適当にさっと食事をして、時々レストランで和食を食べればいい。
そういう生活をしてきて、日本食いっぱいの日本に行っても、さほど有り難味は感じられないというのが、「あれ?こんなもんか?」と思った理由であろう。もっと日本はおいしいはずだったんだけどなあ。
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