ロンドンより新鮮直送!

 じおじおのロンドンレポ 7


14 April, 2002

☆近くて遠いアイルランド


St. Patrick's Dayという日をご存じでしょうか?
3月17日、この日はアイルランドの守護聖人、セントパトリックを祝う日です。アメリカでは、誰もがアイリッシュになる日と言われるように、この日のパレ−ドは盛大なものです。アイルランド移民の子孫が多いからですが、特にシカゴやニューヨークのパレードは有名なのではないでしょうか。みんなシンボルであるシャムロック(クローバーのような植物)にちなんだ緑色の服を着たり、顔を緑色に塗ったりして街を闊歩しています。最近は日本でも、アイルランド人気のお陰で結構知られてきているのではないかと思います。東京・表参道では毎年パレードが行われ、ギネスビールの無料配付がされたりするので、イギリスに来る前の数年は毎年見に行っていました。

イギリスではといえば、アメリカほど盛大ではないまでも、やはりアイリッシュ系のパブは緑のもので飾られ、カード屋にはSt. Patrick's Dayを祝うカードが並び(これはどういう人に何の為に送るのかは定かではありませんが)、今年初めて公式な行事としてトラファルガ−広場を中心にパレードが行われたようです。

ところが、イギリスには「アイルランドに行った事がない」というイギリス人は意外に多い。去年の夏にダブリンに遊びに行ったのですが、その際イギリス人の同僚に、「アイルランドに行く」という話をしたら、顔を曇らせ、返ってきた言葉はなんとも悲しいものでした。
アイルランド人はイギリス人を嫌っている。イギリス人がもしアイルランドのパブにでも入って、地元の人と話をしようものなら、話をした人は、飼っている犬が殺されたりするんだよ、と。もちろん、アイルランドが好きでよく遊びに行くイギリス人も何人か知っています。彼女の話も事実かもしれませんが本当に稀なことだと思います。でも、彼女のようにこれを信じて、一生アイルランドに行こうとしない人は結構いるのではないか、と思うのです。

つい最近、北アイルランドへ小旅行をしました。北アイルランドは、イギリスの一部でありながらアイルランド島の北部に位置します。というよりは、アイルランド島に位置しながら、イギリスの一部である、と言った方がよいかもしれません。

街を知るには市内バスツアーに参加するのが一番、と申込をしました。オフシーズンの、それも平日ということもあり、参加者は私達三人とアイルランド人夫婦の5人しかおらず、ブラックキャブに乗り込み、キャブの運ちゃん・ポールさんの案内でベルファスト市内を回ることになりました。こういった市内観光ツアーは、他のヨーロッパの都市に行く際もよく利用するのですが、今回のベルファストほど歴史を生々しく感じたことはないかも・・・。刑務所跡地の裏側にある住宅地は完全にプロテスタントとカトリックが分かれており、プロテスタント側にはユニオンジャックが、カトリック側にはアイルランドの国旗が棚引いていました。住宅の棟の横壁には彼らのそれぞれの主張を示す絵が描かれています。その間にある警察署は、刑務所並みかそれ以上に高そうな有刺鉄線付きの壁に囲まれ、街を走るパトカーはまるで装甲車です。街のど真ん中にある Europa Hotel はクリントン前大統領も泊まった有名なホテルですが、今までになんと40回も爆破事件にあったそうです。

なぜそうであるか。簡単に言うと北アイルランド独立派とイギリス維持派、いわゆるカトリックとプロテスタントの対立なのですが、そこにはもっと深い、クロムウェルの時代に遡る歴史的な問題があり、私の限られた知識ではとても説明できません。北アイルランドの首都ベルファストは、とてもこじんまりとして、ロンドンのように汚くなく、すっきりとした印象を持ちました。人々も優しく親切で、街を歩いている限りはなんの危険も感じません。ポールさんの話では、対立・紛争を繰り返す人達も、観光客には優しいのだそうです。だから実際に、観光として、こういう壁に描かれたものを見学する分にはなんの危険もないようです。

しかし、最近にもベルファストでは、カトリックスクールへの襲撃や郵便局員の殺害事件(イギリスの公務員だから殺害されたと言われています)など、カトリックとプロテスタントの対立による事件がまたもや表面に浮かび上がってきています。宗教色の薄い日本で育った私にとっては、カトリックもプロテスタントも同じキリスト教やん、みんな仲良くしようよ、と一言で片付けてしまいたいのですが、渦中にいる人にとってはそんなに単純ではないんですよね・・・。ただ、こういうニュースがますますイギリス人を、北アイルランドだけでなくアイルランドからも遠ざけてしまい、そのせいで、さらに偏った認識を持たれてしまうのは悲しいことです。

 

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