じおじおのロンドンレポ 1
22 Jan., 2002
☆愛すべきチューブ
私はロンドンに暮らし始めて1年半になりますが、今ではすっかりバス好きになりました。バスの話はまた次の機会にということで、今回は地下鉄のお話です。
ロンドンに来た頃は、地下鉄(Underground)が便利だ、と思っていたし、Tubeという愛称で親しまれているように、本当にチューブのような丸い穴をそれにきっちり合わせたように作られたまーるい車両が走っているのがもの珍しくもあり、こればかりを利用していました。
ところが、そこは世界初の地下鉄網というだけあります。さすがに木の床の車両は減ってきましたが、丸い穴を拡張するのは不可能らしく、車両のサイズは変わらないまま。昔のイギリス人がそんなに小さかったとは思えませんが、少なくとももう少し肥満度は低かったのかもしれない。通勤時間ともなると、人数的にはそんなにたくさん乗っている訳ではないのに、でかい人に光を遮られ視界が妙に暗いのです。その上、空調がほとんど効かない。去年の夏にはある路線で、駅ではないところで列車が止まってしまい、満員電車状態の車両内が40度以上に上がって病院に運ばれる人が続出、というニュースもありました。そして、この車両が止まる、遅れるというのが日常茶飯事。信号機故障で止まる、駅のエスカレーター故障や、駅構内の定員オーバーで駅が封鎖になる、などなど・・・1日にこういう場面にぶつからない日はありません。
それもこれも、「世界初」というのが曲者なんですね。古くなるとガタが出る、というのは考えないのか、考えたくないのか、信号機など、なんと1940年代のものが今だに使われていたりするそうです。はあ・・・。最近は元国鉄の問題も含め、イギリスの交通機関の最悪さは毎日のようにニュースでとりあげられています。そんなわけで、ケン・リビングストン(ロンドン市長)はこの難しい問題の根本的解決を避け、バスの利用をすすめる戦法に出たようです。バスの路線は増え、値段も据え置き・・・。そんな彼に乗せられ、私もすっかりバス派になってしまいました。
でも、あの、赤と青のツートンの「Underground」のサイン、独特の字体、Baker Street 駅のシャーロックホームズやVictoria駅のVictoria女王に見られるようなその独自のデザインなど、私としても、まだ真新しいWestminster駅のような近未来的な雰囲気よりもずっと好きです。古くて故障ばかり、文句はいいつつもなぜか我慢してしまうのは、この愛すべき部分がなくなるのではないか、という不安がイギリス人の心のどこかにあるのかも知れない。産業革命の栄光を未だに引きずっている、ともいうかもしれません。これは今この国に山積する様々な問題に共通するジレンマのような気がします。
そして彼らは今日も遅れることを予測しながら、時間を潰す必須アイテムである新聞や本を片手に、「チューブ」へと吸い込まれて行くのでした。
© 2002 Hisako Koike. All rights reserved.