翻訳への能力アップに毎日5時間
國弘先生にはファンレターも差し上げたのですが、お忙しい中わざわざ返事を頂けました。そのアドバイスに従って広島の丸善に出向き、最初のうちはラダー版と呼ばれる初心者向きの原書を読んでいきました。やがてはヘミングウェイのノーベル文学賞受賞作 「老人と海」 や、エリック・シーゲルの 「ある愛の詩」 、続いて日本文学を英訳した本 (太宰治の 「斜陽」 や三島由紀夫の 「金閣寺」 、遠藤周作の 「海と毒薬」 、石原慎太郎の 「太陽の季節」 など) を読破して、翻訳のニュアンスを掴んでいったのでした。
最初のうちこそ、1ページ読むにも50回以上辞書で意味調べをしなければなりませんでしたが、そんな面倒な作業も、やがては1,2回で済むようになり、さらには前後関係からいくと、この意味で使われているとしか考えられない、といった類推が的確に効くようになって、辞書を引く手間が激減したのでした。
日本文学の原著と英訳本とを首っ引きで読み込んでいき、5,6冊を読み終える頃には、スムーズに英文を理解できるようになっていました。そうした勉強の成果を改めて國弘先生にご報告すると、その返事として先生が編集なさった 「狂ったサル」 (ビタミンCの発見でノーベル化学賞にも輝いた、ジル・セント・ジュルジュ博士の著した警告の書です) 他数冊を贈っていただき、貪るように読んだものでした。
語学の学習に限らず、初めのうちはモタモタして無駄な時間がかかるものですが、倦まず弛まず努力を続けていけば、1000時間が経過する頃になって、突然目の前が開ける感じがしてきます。それまで辞書なしではろくに読み進めなかったのが嘘のように、少々分からない単語が出てきても、なぜかすっと理解できるようになるのです。
僕の感覚では、高1の正月を過ぎて、もうじき2年生になろうかという時期から、大量の英文を読めるようになっていったと記憶しています。
さらに文法的な基礎も完璧でなければならないと思い、「英文法精解」 (木村明著・培風館) という700ページを超える本を5回に渡って繰り返し覚えていったのです。
この実力アップのトレーニングを、毎日英語だけに最低5時間、丸2年続けました。そして高3になった始業式の日から、新品の英文解釈の教科書を3日かけて読み終えました。その中に載っていた、黒人作家リチャード・ライトの 「ブラック・ボーイ」 に興味を持って、早速丸善で原書を手に入れたのでした。
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