翻訳出版の夢破れる

 
 完成させるとすぐに、僕は数社の出版社に前書きと後書きだけをコピーして送ったのでした。が、・・・・・・18にしてそれだけのものを訳しあげた努力は感嘆に値するけれども、冒険小説や推理小説ならいざ知らず、純文学で黒人の書いた長編を読んでもらえる出版環境にない、つまりは商売にならない、と断られてしまったのでした。

 アーサー・ヘイリーの 「ルーツ」 はまだ放送前で、誰も黒人の悲しい人生など興味を持ってもらえるとは思えなかったのでしょう。黒人文学を翻訳するには、時間がほんの数年早すぎたのです。 

 しかし僕としては自信満々だっただけに、自分の天才を世に知らしめることができないという現実は、あまりにもショックでした。 

 両親は毎晩2時3時まで頑張っているのを、受験勉強だと信じ切っているのです。けれどもこのままでは、再び不合格になってしまうのは目に見えている !!

 ・・・・そんな絶望感に駆られ、天才を実証して見せた誇りは地にまみれ、息をするにも胸が痛くて、空気の薄く感じるのを精一杯深呼吸しながら、この僕が、今となっては誰よりも楽天的なこの僕が、自殺に逃げ込みたい気分になったものでした。


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