亀田 3 兄弟の生き方


 ボクシング一家の亀田家は、父親の英才教育のもと、幼少期から3人そろって世界チャンピオンを目標に掲げ、義務教育などそっちのけで、徹底的に我が道を往く在り方が問題となりました。

 特に子供以上に幼稚な精神構造に見える父親の態度が、あまりにも不遜で非常識だったため、世間のバッシングを受けたのは記憶に新しいところです。あんなヤクザまがいの親に育てられ、世界のレベルも知らずに自惚れているガキなど、何ほどのこともあるまい、と毛嫌いをした人も多かったに違いなく、次男が初めて世界戦に挑戦した内藤選手との一戦で、目も当てられない反則を繰り返し、惨めな敗北を喫したとき、世間は一斉に亀田家へのバッシングを展開しました。

 しかし、あれから数年が経ち、地道に修練した長男と次男が世界チャンピオンに就いている現在、当時ほどの反発は薄れ、スパッと綺麗なノックアウト勝ちでベルトを維持しなければ、まだまだ技術的には単調である、などと批判はされても、誰からも総スカンを喰らうような状況は改善されていると見て良いでしょう。只、ここで僕が問題にしたいのは、三男坊の存在です。

 彼は三兄弟の中では最も才能があるとされ、中学もほとんど不登校の状態で、兄たちについてボクシング一筋に打ち込み、勉強などそっちのけだったようです。最年少でオリンピックに出場し、金メダルを取るという道が閉ざされると、単身メキシコに修行に出、格下ばかりと戦っている、といった日本のマスコミの悪口に苛立つこともなく、勝利を積み重ねたようでした。そして今、日本に帰り、兄に続こうと世界戦を視野に入れてランクを上げているわけです。

 その彼について、長男が明石家さんまにこんな話をしていました。メキシコで数年を過ごす間に、日常会話をマスターしているのは勿論のこと、向こうの知人とメールの遣り取りをするにも、スペイン語をバリバリに使いこなしているのだそうです。

 アメリカと国境を接しているあの国は、当然英語も第二国語として常用しているでしょうし、義務教育で英語しか習っておらず、その運用能力の面でも三男の域に達する同級生が何人いるかと想像するだけでも、三男が必要に迫られて独学で獲得した語学力がどれ程のものか、評価せざるを得ません。

 非情なバッシングにさらされた上二人の兄に比べれば、まだまだヤンチャさの残る態度が端々に見受けられますが、やがて公約通り世界チャンプとなり、タイトル防衛を重ねるにつれ、世間体も洗練されていくでしょう。

 独りよがりの自信は、世界レベルの天才がしのぎを削る場では、あっという間に馬脚を現し、失意に変わるかもしれませんが、有言実行が出来たならば、もはやオオボラを吹かなくても済むようになります。そうなった亀田3兄弟の揃い踏みを、僕は楽しみにしているのです。

 ただし、僕自身は汗臭いことは大嫌いで、基本的にスポーツを楽しむことなどありませんし、中学や高校で、勉強そっちのけでクラブにいそしみ、日曜や祝日だというのに練習にかり出されたり、親子して試合があるとあちこちに遠征しては自分の時間を浪費するのを、バッカみたい、と考えるタイプなのですが、やるからには亀田3兄弟のように、日本を飛び出して夢を実現させるまで帰ってこない、という真剣さがあれば、大いに応援します、ということです。

 ちなみにうちの娘も家内の差し金で幼稚園の頃からクラシック・バレエを続け、これまでに何百万では済まず、一千万近くの散財をしたはずですが、御陰でいかにもバレリーナ体型の、一緒に歩いていても何人かは振り返って見直されるようなすスタイルを手に入れたのですから、家内の目的は充分満たされたのかもしれません。

 しかし、それでもなお、夏の糞暑い中、熱中症で死亡したという記事を見ない年はないほど危険な時期に、未だに屋外のスポーツを強要するのは、絶対に間違っています。30 度を超えた日は一切練習を休みとし、どうしてもやらなくてはいけないのなら、朝練に午前 5 時にでも集合をかけ、午前 8 時までの 3 時間と、ナイター施設を借り切って、夕飯後の 20 時にでも集合して深夜まで 4 時間、1 日に 7 時間みっちり練習させ、将来はプロで活躍できる人材を育てるのが目的なら、大いに頑張って貰い、勝つことを第一義として試合に励むのであれば結構なことで、拍手を送ります。

 それを金がかかるだの親の反対があるなどと言い訳を先行させ、これまで通りのありきたりな中途半端の練習しかとしないのなら、どこまでが本気で、どれだけ優勝に固執しているかさえ疑わしく、そのあげくに熱中症で病院送りされる生徒を出してしまうクラブなら、辞めてしまえ、と言いたいのですが、中学・高校時代の運動の大切さを説かれて反駁されるなら、せめて真夏や真冬の運動に適さない季節は休部とし、学校の本来の目的である勉強合宿を、クラブとして顧問の先生が受験科目について指導する形にすべきです。

 甲子園を真剣に目指している有名高校など、1年 365 日のうち、360 日はクラブとして駆り出されると聞きますし、亀田家3男のように海外スポーツ留学も有りでしょう。そこまでやらせるなら、体調管理を第一に考えた上で、徹底的にやらせばいいし、プロになれなくても、本気の努力は何かの形で実を結ぶと思います。しかし、あくまでスポーツを体力の維持ととらえ、勝敗にこだわらず、和気藹々とクラブを楽しむのであれば、目の色を変えて練習させる必要はないはずです。


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