周囲に愛される生き方
これまでの話をお読みになれば、随分挑戦的で喧嘩腰の生き方をしてきたのかな、と想われるかもしれませんが、僕自身はいたって人当たりの良い、柔らかな行動を取ってきました。我を通して軋轢を生むよりは、優しい善い人だと感じて欲しいし、周りの誰にでも感謝されて生きたいと願っていました。僕が初めて出版したエッセイのタイトルは 「 従順な反骨 」というのですが、親や先生といった自分の目上の人たちに対しては、極めて従順な態度を取ってみせましたが、心の中では一筋縄ではいかない、頑固な反骨心に溢れていました。それを表沙汰にして我を通すのはスマートとは言えないと考え、上からの忠告に関しては反抗することもなく、ごくごく善い子でいたのでした。
これだけは是が非でも譲れないという一点を除いては、日常的に素直であるべきでしょう。少なくとも自分に善かれと思って薦めてくれているものを無下にする必要はありません。アドバイスに従って相手に感謝すれば実りは大きくなりますし、翻って将来、ひとから 感謝される立場に立てると信じます。感謝される、ということは即ち、周りの人を助けてあげ、その人達から尊敬される人間になるということに他なりません。
かつての教え子に T 君という男子生徒がいました。中学に入る直前に両親が離婚し、看護師の母親一人に育てられることになったわけですが、仕事で帰宅する時間も不規則な母親に代わって、家を支えなければなりません。彼は母親が勤務に就いている日は、食事・洗濯・掃除をきちんとやり遂げると決め、そういった家事を済ませてから勉強に取り組んだようです。
中学に入れば小学の頃とは違い、ぐっと勉強すべき内容が増えるから、遊び半分の意識を変えて、やるべき勉強は 「 自分の学年プラス一時間 」 を毎日実行すれば、トップに立つことも可能だ、とハッパをかけていたので、彼は僕の言葉を忠実に守り、中 1 の頃は 2 時間、中 2 になると 3 時間、中 3 では 4 時間をノルマに努力し、中学入学当初は 30 番辺りだった成績が自然と上がっていき、中 2 の終わり頃には 5 番以内に入るまでになっていました。
中 3 になって間もなくお母さんが再婚しましたが、新しいお父さんはタクシーの運転手で、こちらも時間に不規則だったらしく、家事を担当することは変わらずに続けたそうです。そしてそのお父さんから誕生日祝いに買って貰ったワープロ ( パソコンではなくワープロというのですから、何年前のことか想像できるでしょうが ) を非常に喜んでいました。
塾での授業中も、さっさと問題を解き終わった彼に、周囲で頭を抱えている友達を教えてやるように言うと、僕の説明を真似て、隣近所の同級生に説明をしてくれましたが、ひとに解って貰う喜びを見出したのか、僕に頼まれるまでもなく自主的に教えるようになり、さらにはせっかくのワープロを充分に使いこなすことも兼ねて、英単語や新出漢字の小テストを作って友達にやらせてみたり、やがては中間・期末テストの模擬問題を五教科にわたって自作し、テスト期間中に塾の仲間に配ったりと、大活躍を始めました。
おかげで彼のクラスは全員が目を見張るほどの成績上昇があって、学校のトップ 15 番以内に、13 人が当塾の生徒で占められるほどでした。勿論問題を作る側にいた彼自身も中 3 てなると常に 1 番を続けられるまでになっていました。友達からの誕生プレゼントも、女子からのバレンタインチョコも、学校内では渡しづらかったのか、塾の中での手渡しとなり、僕から大きな紙袋を貰って、抱えるようにして満面の笑みで帰っていったものでした。
誰からも好かれるというのはこういう事なのだな、と羨ましいほどでしたが、岩国高校に進学してからも、深夜 2 時過ぎに仕事を終えて帰宅するお父さんが体の心配をするほど、毎晩遅くまで勉強部屋には灯りがついていて、いい加減にして寝なさいと注意されるほど頑張ったおかげで、高校でも常にトップを維持し、早稲田の政経学部を突破したと報告に来てくれたのでした。
大学受験なんて所詮、出題のレベルは決まっているのですから、頭の出来云々ではなく、いかに地道に、コツコツ努力するか、なんですね。お父さんやお母さんから、そろそろ寝ないと体をこわすよ、と心配されるほど勉強していますか、と問いたい。高校時代にそれが出来れば、誰でも東大や京大や早稲田や慶応に受かるんです。そして自分だけの勉強にしないで、周りの友達に教えてあげられるように、難しい問題を噛み砕いて説明してやれるまで深く理解できていれば、大学生になっても一流の家庭教師になれるし、進学教室で花形講師として活躍できることでしょう。そして就職先として、政治の世界に進もうが、経済の道を選ぼうが、自分を中心とした周囲のひとが幸せになり、その人達から感謝されるように仕事をしていけば、必ず満足した人生を歩めるに違いありません。
だから、頑張れ !!
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