暑中見舞い

 

「マクドールさん、ルックにご飯を食べさせてください〜!!」
熱気にやられ、青い顔をしたまま石版前に立つ魔法兵団長に、ユノスはキレたらしい。
どうせまた、ろくに食べてないに違いない。
しかたないなと、ルックが口にできそうな貢物を用意して。
何なら食べるかなとあれこれ考え、見舞いに行くというのに、何故かうきうきとしてしまう。
数年前にもまったく同じことをしてたなと思うと、懐かしさとおかしさがこみ上げた。

「ルック、入るよ」
コンコンと形だけ音を鳴らし、返事も聞かずにドアを開ける。
アダリー作の「せんぷうき」とやらが置かれ、ルックの部屋は城内より幾分か涼しかった。
「……何しにきたの」
部屋の主は、少々不機嫌そうに、ベッドから上体を起こした。
ユノスが少し長めに設定した彼の昼食休みは、やはり食事時間には使われていないようだった。
「ちょっと早めの暑中見舞い」
冷水の中につけておいた、つるりと瑞々しいぶどうの房。
待ってても手を伸ばしてこないことはわかりきってるので、黙って皮をむいた。

「はい、口開けて。あーん」
「……あんた馬鹿?」
「食べないの?じゃあ、僕が食べる」
ぱくりと口に含むと、じわりと広がる爽やかな甘さ。
美味しいと二つ三つほおばりながら、「ほら、ぬるくなる前に」とルックの手のひらに一粒。
「どう?」
黙ってもぐもぐと口を動かす辺り、異存はなさそうだと解釈。
「もっとどうぞ。種はちゃんと出してね」
でないと、お腹から芽が出てくるかもと笑うと、ルックは顔をしかめた。
「昔、西瓜を持ってきたときも同じことを言っただろ」
「あぁ、そう言えば、あの時のルックは可愛かったなぁ」
当時の姿を思い出し、高らかに笑う。
僕の言葉を真に受け、三日ほど悩み、リュウカンやマッシュのところに相談しに行ったらしい。
その後、ルックは僕やシーナのせいでひねくれに拍車がかかったみたいだけど、
ま、今でも十分おもしろいことに変わりはない。

昔話を繰り広げながら、ふたりできれいにぶどうを完食。
「じゃ、ちょっと片付けてくるね」
手早く持ち込んだお皿などを、まとめて。
「……ごちそうさま」
投げかけられた小さな声に、笑みがこぼれる。
「どういたしまして」
できうる限り、優雅に一礼。

「あ、晩ご飯、一緒に食べようね。ハイ・ヨーに食べやすそうなものリクエストしとくから」
去り際にそう言い残して、ドアを閉める。
この際、一方的だろうがなんだろうが問題はない。
律儀な彼は、自分のために用意された料理を無碍にすることはできないから。
さぁて、何を作ってもらおうかなと、僕は足取り軽くレストランへと向かうのだった。