ひとさじの幸福

 

グレミオ手製のケーキを囲んで、のんびりとお茶を飲む。
少し前までなら、何を呑気なことを、と呆れるところだが、言っても無駄なのでもう諦めた。
案外僕もこの軍の雰囲気に毒されているのかもしれない。
「よく甘いものを食べながら、甘い紅茶が飲めるね」
クリームたっぷりのケーキを目の前にして、砂糖の入ったつぼを取るシキ。
「個人の嗜好の問題だよ。幸せの補給」
「幸せの補給?」
確かに彼は甘いものが好きだから、このティータイムは幸せに違いないのだろうけど。
「甘いものが幸せの味って言うのはよく聞くだろう?
だから、紅茶に入れるのは砂糖じゃなくて、ひとさじの幸福なんだよ」
「・・・単に甘いものを食べるための口実にしか過ぎないように思うんだけど」
「そういう台詞は、実際に一口飲んでみてから言ってよ」
シキは、砂糖つぼから砂糖をすくった。
”ひとさじの幸福”が、紅茶にゆっくりと溶けていく。

「はい、どうぞ」
にっこりと笑うシキから、カップを受け取って。
一口飲んで、即座に返した。
「・・・やっぱり僕には理解できない」
彼のいう幸福とは、ひどく甘ったるい味がした。