春色

 

「はい、ルック」
「何、これ?」
「買い物しに行ったから、服買ってきたんだ」
微笑み付きで渡された服の入った袋にルックは困惑した。
「何で、僕に・・・」
物を貰うことには慣れていない。まして、自分のためになど。
「似合うと思ったから」
シキはさらりと答えた。
「だからってわざわざ買ってもらう理由はない」
袋を返そうとするルック。
「いいから、開けてみてよ」
シキに促され、不本意ながらそれでも少しはわくわくしてルックは袋を開けた。

「女物じゃないか、これ!」
眉間に皺が寄っているのに変わりはないが、口調がきつくなる。
「うん、でも多分似合うよ。サイズも大丈夫だと思うし」
着てみたら分かると思うけど、とシキは続けた。
「・・・絶対着ないから」
「せっかく買ったのに」
「返品しろ!」
すでにルックの怒りは臨界点に達しそうになっている。
先ほどちょっとでも期待したのが馬鹿みたいだとルックは思った。

「わかった、残念だけど返品するよ」
暫く言い争いを繰り広げていた二人だったが、ルックのあまりの剣幕についにシキが折れた。
それでもまだ、シキは似合うと思ったのになぁと未練たらしく呟いている。
「大体、どこが似合うって言うんだ!」
ルックは未だ怒りが冷めない。
「春色」
「・・・え?」
シキがぽつりと言った言葉が理解できず、ルックは聞き返した。
「色がルックに似合うと思ったんだ。きれいな春の色」
ルックは一瞬黙って、ふうんとこぼした。

服の入った袋を持ったシキが石版の間を後にしてから、確かに色は悪くなかったとルックは呟いた。