英雄論

 

最初は、ユノス様だった。次は、軍主様。そして、今ではデュナンの英雄。
大仰な名は、いつまで経っても慣れることなく。
お守りくださいだとか、流石だとかは、時に重くのしかかる言葉だ。

「ずっと、じぃちゃんとナナミとジョウイが僕の世界のすべてだった。
それだけを守れたらいいと、今でも思ってるんです。最低ですよね」
こんなこと、マクドールさん以外には言えやしないけど。
たくさんの、同盟国。そして、そこに暮らす人々。
僕が、それらを守り戦うための同盟軍軍主だなんて。

「マクドールさん、僕は、世界中の人達が皆幸せになるなんて事はないと思ってるんです。
……でも、僕が知る全ての人には幸せになって欲しい」
いろんな人に出会い、この城に来て、失いたくないものが増えた。
それはきっと、ジョウイにとっても同じことだろう。
すべての人を守るとは言い切れない。僕の持つ力は、ほんのわずかだから。

「別にさ、たくさんの人を守るための英雄じゃなくたっていいんだよ。
一人のための英雄が、結果としてたくさんの人を守ることになれば。
英雄って、そういうもんなんだと僕は思うよ」
すこし困ったような、でもやわらかい雰囲気で、トランの英雄はそう言った。

「きみはやっぱり、やさしい子だね」
ぽんと頭の上に、手袋ごしのあたたかい感触。
あなたはやっぱり、僕とはちがうほんものの英雄。