| 革命の原動力
シキが石版の間に来た瞬間、珍しく陰った顔をしているな、と思った。
相変わらず、目が合うと、へらりと笑いかけてくるけれど。
「どうかしたの、お飾り軍主殿?」
辛辣な言葉を返してやると、笑みは困ったものへと変化した。
棍にすがるようにして、へなへなと床に座り込む。
「ねぇ、ちょっと聞いてくれる、ルック?」
「…どうせ僕に拒否権はないんだろ」
「まぁその通りだけどもさ」
うつむき加減から上げられた顔は、少し微笑んでいた。
「戦争がなくなって、みんながしあわせになればいい、なんて今更そんなきれいごと、言えやしないんだけど」
実際に戦死者や負傷者の数を聞いちゃうとね、と少し落ちた声。
「いつまで経っても、現状を見つめたくなくて、遠くから理想だけを述べる。
そんなのは、やっぱりお飾りでしかないんだろうね」
むしろ口出すな!みたいな雰囲気になってるしなぁ最近の会議…と、最後はぼやきに近い形で。
「…あんたみたいなのがいるから、できることだってある」
つぶやくようにして、そう告げる。
シキは、ぱちぱちと目をしばたかせ、「もしかして励ましてくれてるの?」なんて、馬鹿なことを聞いてくるから、切り裂きを食らわせて。
何事もなかったかのように、石版守を続ける。
きれいごとを追い求める存在こそが歴史を動かすということを、
自身が革命の原動力だということを、
ぼんやり軍主は理解していないようだった。
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