6月9日

 

「魔法兵団長殿、ユノス様から伝言です」
「ユノスが、伝言・・・?」
普段なら自分で呼びに来るはずなのに。
軍主の珍しい行動に、ルックはいささか驚いた。
「はい。至急大広間にいらして下さいとのことです」
大広間に来いとはよっぽど何かあったのかと、少し不安がよぎる。

ぱぁんと派手に何かが鳴った。
「ルック、おめでとー!」
「・・・は?」
紙吹雪やら何やらをまといながら、ルックは不思議そうな顔をしていた。
「これ、アダリーさんの新発明品。”くらっかー”って言うんだって」
「ケーキやごちそう、いっぱいあるからね!ちなみにこれは私が作ったの!」
「大したもんじゃないけど、これ・・・」
次々と聞こえてくる色々な言葉に、ルックは混乱する。
「ちょっと待て。何なんだよ、この馬鹿騒ぎは・・・」
「え、だって今日ルックの誕生日なんでしょ?」
きょとんとした顔のユノス。
「・・・誰がそんなこと言った」
苦い顔で、ルックが訊いた。
訊くまでもなくあいつらだと確信していたけれど。
「シーナとマクドールさん」
その言葉を聞くと同時に、ルックは転移した。

「ユノスに何吹き込んだのさ」
突然現れたルックに二人が驚いた気配は全くなかった。
「昼前だったね、シーナ。僕の勝ち」
「くそ〜、思ったより大分早かったな」
シキの言葉に、シーナは悔しそうに舌打ちをする。
二人の会話にルックは眉を顰めた。
「へぇ、しかも人がいつ来るか賭けてたわけ?」
「ご名答。さすがだね、ルック」
「あんた達は一体何がしたいんだよ・・・」
「ルックを楽しませようと思ってるだけ」
悪びれもなくそう答えるシキに、ルックは返す言葉が無くなった。

「何で勝手に誕生日って思ったのさ」
「よくあるだろ、3月7日生まれでサナとか五月生まれだからメイとか」
「・・・相変わらず女性の名前には詳しいんだね」
「そりゃもちろん」
「というわけで、6月9日だったらルックだなって」
シーナの言葉を受けて、シキが付け加える。
「別に誕生日じゃないよ」
「それでも、自分の名前と同じ日って何だか嬉しくならない?」
「くっだらない」
「まぁ、パーティーする口実ぐらいにはなるだろ?」
楽しいそうにシーナはそう言った。

「つーわけで、行くか!」
「そうだね」
「ちょっと待ちなよっ!」
「はいはい。シーナ、そっち持って」
「了解」
「なっ・・・!」
両側をシーナとシキに挟まれて、ルックは身動きが取れなくなった。

「おーい、主役連れてきたぞー」
「シーナ!マクドールさんも!ルックを連れてきてくれたんですか?」
「今日はルックの日だしね」
「僕は関係ないっ!」
ルックの意に反して、その場はどんどん賑わっていく。

その日大広間では、わいわいがやがやと騒ぐ声が夜更けまで響いていた。