| まほうつかい
「やぁ、”まほうつかいのお兄ちゃん”」
「うるさい」
マクドールさんのその一言に、ルックは思い切り顔を顰めていた。
「マクドールさん、こんにちは!」
階下にマクドールさんの姿を見つけて、僕は駆け寄った。
「こんにちは、ユノス」
にこっと微笑む、マクドールさん。
「”まほうつかいのお兄ちゃん”のこと、よく知ってますね」
ルックがそう呼ばれるようになったのは、ごく最近のことなのに。
「あはは、情報源みたいなものがあるからね」
シーナか、ビクトールさんか、それともフリックさんか。
その辺りだろうなぁ、と思い当たる人物を頭に浮かべる。
ルックも同じようなことを思ったのか、後で覚えてろと不穏な台詞を吐いていた。
まほうつかいのお兄ちゃん。
ルックがそう呼ばれるようになったのは、数日前からだった。
守護神の一部が欠けて、ちょうど石版の近くに落ちた。
その時、一人の女の子がそこにいて。
何人かの人が(もちろん僕も)飛び出したけど、どう考えても間に合わなかった。
けれど、強い風が吹いて。欠片は飛ばされていった。
「まったく、何が守護神だよ。石版に傷が付くところじゃないか」
いつもの口調でルックがそう言っていた。
「・・・僕には助けたつもりなんて全くなかったんだけど」
お礼だと言って、花を持ってきた女の子にルックはそう言った。
「でも、ありがとうって言いたかったの!ありがとう、まほうつかいのお兄ちゃん」
にっこりと笑った子供の前では、さすがのルックも閉口するだけだった。
「それで”まほうつかいのお兄ちゃん”が定着しちゃったんだね」
「そうなんです。今、ルック大人気なんですよ」
魔法を教えてくれだとか、飛んで行っちゃった風船を取ってだとか。
「僕は便利屋じゃないんだけど」
憮然とした顔で、ルックはそう言っているけど。
「何だかんだ言ってても、結局いつも相手してあげてるんですよ」
小声で、マクドールさんにそう告げる。
「それがルックだからね」
マクドールさんは、笑ってそう言った。
不器用で優しいまほうつかいは、今日も不機嫌そうな顔で石版の前に立っている。
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