| 指先ショート
「シキ様、頼まれていた資料が出来ました」
確か彼女は魔法団員だったけ。ルックといるのをたびたび見たことがある。
名前を思い出そうとしたけれど、結局思い出せなかった。
「ありがとう」
ゆっくり差し出されたそれを取った時、かすかに指先が触れた。
途端、彼女は勢いよく指を離し、顔を赤くして、失礼しますと叫び出て行った。
・・・やっぱり何か気になる。
動かしていたペンを止めて、僕はシーナのところへと向かった。
「シーナ、僕の指って何かおかしい?」
手を広げて見せながら訊ねる。
「いや、別に」
「やっぱりそうだよね」
「何かあったのか?」
大したことじゃないんだけど、と前置きをして僕は事のあらましを喋った。
「あー、そりゃその子がお前に惚れてるんだ」
「は?」
「お前外面は柔らかいから、結構人気あるんだぞ?」
「外面って、失礼だな」
「だって、お前中身変だろ」
「シーナよりはマシだ。で、それがどう関係するの?」
「・・・鈍」
「鈍くて悪かったな」
「好きな奴に触れたら、誰でもドキッとするだろ。ショートしたような感じになったり」
「例えが下手」
「うるさい」
自分の指に何かあるのかと思ったのが馬鹿らしくなるぐらい、単純な理由。
好きとかってそんなもんなのかな、とぼんやり思った。
部屋に戻って、再び先ほどの資料に目を通す。
不可解な点について、彼女を探すのも面倒だからとルックに聞きに行った。
「ルック。さっき魔法兵団員にもらった資料で、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
資料を渡した時、触れた指先がびりっとした。
”ショートしたような感じになったり”
さっきのシーナの言葉が浮かんできて、まさかと思いながらも鼓動が早なる。
「・・・静電気」
「え?」
「意外と痛いから嫌なんだ、静電気」
ルックが顔をしかめながらそんな事を言っている。
静電気。あぁ、なるほど。
一人で動揺して、馬鹿みたいだ。
「返せ」
「は?」
「僕の心拍数を返せ」
「あんた、何わけわかんない事言ってんのさ」
困惑しているルックを見て、混乱してろと半ば八つ当たり気味に思う。
自分の思考回路がショートしてるんじゃないだろうかと、まだほんのり熱を持つ指先を睨みつけた。
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