
@「クロール」・・・推進力はキックよりプルで
とにもかくにも25メートルや50メートル泳げるようになればよいと言う人もいるでしょう。ですが、泳ぎにはクロールの外、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライがあります。4泳法が出来て初めて泳げるようになったと言えます。
例えば、海に出ればプールと違って波もあります。絶えず水の動きが変わり、いきなり体がひっくり返されるかもしれません。こんな時4泳法を覚えて水中でいろいろな動きが出来るようであれば、より安全度が増します。水中でどんな状況になっても、対応出来るようにする為にも、4泳法を知っておくことは大切なのです。
スイミングスクールでは、勿論将来の選手養成のためという目的もあって4泳法を教えますが、それだけではありません。水中でいろいろな筋肉を動かすことで、体の発育、発達を促進していく効果もあるのです。ですから、皆さんにはぜひ、4泳法を身につけてもらいたいのです。
その基本はなんと言ってもクロールです。最初から平泳ぎや背泳ぎをやる人は先ずいません。クロールは、キック(ばた足)やプル(手の掻き)、息継ぎを習得するのに一番適しています。それに4泳法の中で一番スピードがあり、長く続けて泳げます。クロールで覚えたことは、他の泳法にも応用が出来ますから、先ずクロールから始めるのが自然なのです。
その際、覚えてほしいのは、上手なクロールの推進力の大半は、バタ足のキックよりも腕で水を掻くプルだということです。そのため、プルの役割は重要です。浮き身の姿勢をとり、足にブイやビート板を挟み、キックをせずにプルのみで泳ぐ練習をしましょう。
プルでうまく捕らえて進めるようになったら、キックとのコンビネーションで泳いで見ましょう。その際に、体が沈んでしまったり、ふらついたりすることがあります。浮き身の姿勢が悪かったり、背中が曲がっていたり、正しい角度で手を水に入れなかったりと原因は幾つかあります。コーチなどにチェックして貰いアドバイスを受けることが大切です。
A「背泳ぎ」・・リラックスが大切
唯一、仰向けになって泳ぐという特殊な泳法です。なぜ、ひっくり返ってまで泳がないといけないのかと、思う人もいるかもしれませんが、どんな状況でも泳げるようになる為に大事な泳法ですから、しっかり練習しましょう。泳ぎ疲れたら、時々上を向いて空を眺めるのもいいものですよ。呼吸も自由に出来ますし、仰向けになる不安さえ乗り越えることが出来れば、どんどん上達していきます。
自由形の推進力はキックよりプルだと言いましたが、背泳ぎはキックのウエートが大きい泳法です。ですから、キックから習得していきましょう。これは仰向けに浮く姿勢をマスターすることに繋がります。キックで推進力を得れば浮力も生まれます。バタ足を裏返しにしてやる感じで、キックは膝が曲がらないように。足首の返しも大事です。蹴り上げるときは、足の甲にのった水を押し上げるようにし、キックを打ち下ろすときは足の裏で水を掴むような気持で下へ押さえ込むようにします。
といっても、最初から仰向けに浮くのは難しいですから、指導者の補助のもとでやってみるのが一番です。ビート板などを持って浮く感覚を身に付けましょう。無理に頭を上げようとするとお尻が下がって体が「く」の字になってしまいます。余計な力を抜いてリラックスすることが大事です。
呼吸は上を向いているので比較的簡単ですが、顎を引きすぎると気管が閉じて呼吸が難しくなるので注意しましょう。それと、鼻から息を吐くように注意すれば鼻に水が入るのも防げます。
プルは腕を交互に回転させます。片方の腕を真っすぐに伸ばして回し、小指の方から水に入れるようにします。入水させた手は、肘を曲げ、手のひらで水を押しながら腕を下ろしていきます。太腿のところで水を強く押し出す感じです。腕は肩の延長線上に真っすぐに入水させます。斜めに入水すると深く水がかけないし、真っすぐに進めません。
B「平泳ぎ」・・・足裏で水をつかむ
昨年、北島康介選手が男子200メートル平泳ぎの世界記録(当時)を樹立しました。今一番注目されている種目が、平泳ぎかも知れません。
この泳ぎは、下半身のキックと上半身の掻きのコンビネーションが身上です。特に難しいのは、カエルのように膝を腰の方に引きつけてから蹴るという独特のキックでしょう。足の裏で水をキャッチして体を前に押して前進する感覚を養うことが先決です。中には、膝と足首の関節の特徴から比較的スムーズに出来てしまう人もいますが、少数派ですね。北島は足の裏で水をつかむ感覚が特に優れていますが、これも最初から出来たわけではなく、徐々に習得していったのです。
指導者が一緒にいたほうが上達は早いです。水の中で足の土踏まずを持って修正しながら練習するのです。時間が掛かりますが、これが一番いい方法です。膝から下の足をお尻に引きつける際に推進方向へ足を曲げる為、どうしても水の抵抗を受けて、スピードを殺してしまいます。膝を曲げる角度や足を伸ばすタイミングが難しいので、しっかりと練習しましょう。
充分に足を引き寄せてから、足の裏を「ハ」の字の形にしてキックしなければなりません。足の甲でけると、平泳ぎと認められないので注意して下さい。水を挟み込むように蹴った後は両足の親指が擦れる位に、しっかりと伸ばします。
手の掻きの基本は、ハート型です。両手を伸ばして手のひらを同時に外側に向け水を掻き出します。そこからハートを描くようにかき、胸の前で手のひらを合わせた時に、胸から上を水面に出して呼吸をし、素早く顔を水中に沈めます。そして両手を伸ばし、体の線が一直線になるように、けのびの姿勢に入ります。それをキックとのコンビネーションを取りながら繰り返すのです。遠泳の時には顔を出したまま目標物を確認しながら泳ぐことも出来ます。
ストロークをぎりぎりまで減らした泳ぎで北島が好記録を連発しているといっても、最初から真似することはいいとは思いません。段階を踏んでいくことが大事なのです。
C「バタフライ」・・両足をひれのように
イルカの尾ひれの動きに似たドルフィンキックと腰の上下運動が組み合わさったダイナミックな泳ぎがバタフライです。この泳法の創始者が日本人であることを知っていますか。ヘルシンキ五輪平泳ぎ代表だった長沢二郎さんがその人です。
ドルフィンキックは左程難しくないと思いますが、腕を同時に掻くのが難関です。水から腕を抜いて前に戻すのが遅れると体が立ってしまいます。平面的な動きを覚えるまでには時間が掛かるかもしれません。ですが、日本人が考案した泳ぎですし、上手に泳げると格好いいですから、ぜひトライしましょう。トップクラスの泳ぎが出来なくてもいいのです。ある程度の泳ぎが出来れば充分です。
キックは腰の上下動と連動して行います。両足をそろえて伸ばし、両膝をそろえたまま足を引き上げ、曲げた膝を一気に伸ばしながら同時に打ち下ろします。体全体が「へ」の字になる感じです。いるかの尾ひれの役目を果たすわけですから両足は1本のひれのようにしなやかに動かさなければなりません。蹴り上げは足の裏、打ち下ろしは足の甲でするのが鉄則です。足首を水上に出すと水しぶきが派手に出る割には推進力は弱まるので注意しましょう。
手の掻きは、クロールのプルを左右同時に行う形をイメージして下さい。それを足で2回キックを打つごとに1回プルを行います。1回目のキックは腕が入水する時、2回目は腕が水をかき終わり、腿の下で掻き切るときに行います。このタイミングを体に染み込ませることが大事です。
両方の指先を同時に入水させ、肘を曲げながら水を掻いてお腹の下まで掻いたところで、呼吸のために水上に顔を上げます。陸上や水の中で立ったりして、上半身だけのプル練習を何度も反復しておきましょう。
4泳法をマスターしたら、バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の順番で泳ぐ個人メドレーの練習に入るのが普通です。個人メドレーで50メートルずつ200メートル泳げるようになれば、海で泳いでも不安も無く楽しく過ごせるようになっている筈です。つまり「泳げる人」なのです。