前立腺がん[ぜんりつせんがん]

(時事通信社・家庭医学)
 膀胱の出口にある前立腺のがんです。初期にはほとんど症状はありませんが、少し進んでくると軽い排尿困難を伴うようになりますが痛みはありません。
症状だけでは前立腺肥大症と区別できません。さらに進行すれば、排尿困難、頻尿、残尿感などがあきらかになってきます。がんが尿道に顔を出すくらいに進行すると尿道出血するようになります。しかし、出血しても痛みはありません。
 がんが骨などに転移すると骨の痛みがあらわれてきます。いろいろな骨に転移するので、その日によって痛む部位が異なります。放置すれば尿閉から尿毒症となりますので、早期に治療することが大切です。

診断
 最近では血中の腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)測定により、簡単に予測できます。PSAが4ngml以下であればがんはないと考えられます。4〜10ngmlをグレー・ゾーン(灰色領域)と呼び、がんが隠されている可能性がありますので、しっかり精査しましょう。PSAが10ngml以上のときはがんの可能性が非常に高くなります。しかし、前立腺の炎症でも高くなることがあるので、泌尿器科医にしっかり診てもらいましょう。血中PSA測定はスクリーニングとして優れていますが、そのほかに超音波検査や直腸指診があります。ゴツゴツして石のようにかたい前立腺を触れればがんと考えられます。
 骨の転移は骨シンチグラフィー(放射性物質を注射して骨への取り込みを調べ、黒いスポットがあれば転移の可能性が大です)で診断します。最終診断は前立腺生検(直腸から細い針を刺して前立腺の一部を採取し、顕微鏡で病理学的に調べてがん細胞を確認する)により確定します。PSAが高くても前立腺生検でがんが証明されない場合も多いので、すぐに悲観することはありません。
 がん細胞には高分化腺がん、中分化腺がん、低分化腺がんがあり、
高分化腺がん・中分化腺がんは比較的良性ですが、低分化腺がんは予後がわるいとされています。前立腺がんは進行具合により、病期ABCDの4段階に分かれており、病期ABは前立腺の被膜に包まれたがんですが、病期Cは被膜浸潤があり、病期Dは周囲の臓器にまで進展しているものをいいます。

治療
 第一選択は前立腺全摘ですが、適応があるのは病期ABです。病期CDではがんが外に顔を出しているので、前立腺全摘の適応外ですが、病院によっては病期Cまで全摘するところがあり、必ずしも一定の結論が得られているわけではありません。全摘の適応にならない病期CDのがんでは、一般にホルモン療法をおこないます。これは男性ホルモンが前立腺がんを刺激し、がん細胞が増殖するという理論から導き出された治療です。もっともてっとり早く簡単なのが去勢術です。これは両方の睾丸をとってしまい、男性ホルモンをなくしてしまいます。これに対して、脳下垂体の黄体ホルモン刺激ホルモン(LHRH)に似た薬剤(LHRH agonist)を注射し睾丸から分泌される男性ホルモンをなくすという治療法もあります。しかし、この注射は4週間に1回うたなければなりません。
 最近、3カ月製剤、6カ月製剤が開発され、近く発売される予定です。このほか、経口薬として女性ホルモン剤や抗男性ホルモン剤などがあります。放射線療法も有効です。このようにいろいろな治療法がありますが、完全に治癒できるのは前立腺全摘のみで、ほかの方法はどれも数年から10年後には再発してきます。前立腺がんはあまり悪性ではなく、5〜10年は生存できますから、気長に治療するようにしましょう。
 治療による副作用はインポテンスです。前立腺全摘でもホルモン療法でも必ずといってよいほどみられます。前立腺全摘の際に神経温存手術をする方法もありますが、がんを残す可能性が高いので、インポテンスにはならないかもしれませんが、あまりおすすめできません。そのほか、前立腺全摘すると数パーセントの人で永久に尿失禁がみられます。しかし、大部分の人は手術後2〜3カ月もすれば尿失禁しなくなります。また、女性ホルモンの長期投与により心筋梗塞や脳梗塞が起きることがあるので注意しましょう。