嗚呼国立劇場

平成22年6月26日 我々雄勝法印神楽保存会一同は、遂に、遂に国立劇場単独公演を果たすことができました。
 しかも、こちらからの企画持ち込みではなく、出演依頼を受けてのことです。これも、今日まで当団体を支えてくださった皆さまのと、芸風を守り抜いてくださった先輩神楽師のおかげだと思っております。

 当日終了まで、そして、終わってからも色々な出来事がありました。それらをすこしずつUPしていきたいと思います。


 1.突然のことで
  あれは確か、神楽保存会の総会の後、懇親会の席でのことと記憶しております。会長副会長より「国立劇場より出演依頼がありました。しかも単独公演ですので、会員の皆様一緒に国立に行きましょう」との挨拶があり一同掛け値なしに喜びました。突然のことで、出演が決まった喜びで、詳細のことなどなにも案ずることなく喜びました。


 2.演目を確認して
 春祭りもまぢかというあたり、副会長より演目が決まりましたとの報告がありました。
 湯立ての神事を含め全部で10番。一時の部「湯立ての神事、五矢、岩戸開、橋引き、産屋」四時の部「道祖、鬼門、叢雲、魔王退治、日本武尊」・・・確かにお客様目線でいったらハズシのない演目で順番的にも飽きない順番となっていました。しかし、楽屋事情からいうと少々つらい構成でした。今回の構成メンバーは18名で、内2名は湯立て神事のために宮司をお願いし、裏方専門で2名の新米神楽師を予定していた為、実質演者14名です。
 ちなみに通常の祭りですと、14名もいればどんな演目でもできます。ただし、演目順番は、出演者が多いものと少ないものを交互にし、次の演目支障をきたさないようにした場合です。つまりは祭りのイメージで「なんでもやれますよ」と当方が回答したのをどんな演目をどんな順番でもととらえられてしまったのでしょう(笑)演目でいうと、岩戸開と橋引き、叢雲と魔王退治の部分です。不幸中の幸いで、偶然にもこの二演目の間に15分の小休止が入ることとなり九死に一生を得ました。



 3.上演時間のやりくり
 今回の公演は一時の部、四時の部ともに2時間15分の尺で公演するということが決定していました。ここでもひと波乱ありました。一時の部は通常の舞を奉納すると2時間45分はかかります。演目は決まっていて尺も決まっている。(汗)なんでこのようなことが・・・っと申しますと、これは国立劇場様と我々の解釈の相違から発生したものでした。演目の一番目です。「湯立て神事」!!これです。オファーは湯立て神事。こちらの解釈は舞台清め?ここです。正式な湯立て神事は30分かかります。国立劇場様の手元にわたしたデータは舞台清めの画像データ。もちろん正式な湯立て神事は当方にいらした時に見ていただいていたので、違いはわかるだろうと当方は勝手な判断をした訳です。よーく考えてみれば、雄勝法印神楽にどっぷり浸かっている雄勝町の住民ならまだしも国立劇場様のスタッフが勘違いするのも当然です。(今思えばです)
 そういった中でどうしたら芸風を変えず奉納できるか、試行錯誤の始まりです。雄勝法印神楽は通常の舞と短い時間で奉納する「短」が存在しています。各地区での祭りでは、その地区の都合や天候により「短」で奉納することはよくあります。コース料理に例えるなら、濃厚重厚な伝統料理のフルコースを皿数品数をかえず、一品当たりの量を減らすやり方です。これなら新しく作った創作神楽にならず、且つ時間内にやれることが判明し事なきを得ました。



 4.稽古と感謝の気持ち
 それでも、やっぱり不安は残ります。より本番環境に近い緊張感でやりたい!!神楽師一同は考えました。「じゃあこうしましょう・・・」宮司から提案がなされました。それは、本番環境を作るということでした。もちろん国立劇場なみのホールを借りるということではありません。本番に近い緊張感の中で奉納するということです。宮司の提案はこうでした。
・今までにない舞台でやれば緊張感がある稽古になる
・観衆の前で奉納する
・本番同様の装束で奉納する
 具体的に表すと今まで奉納したことのない場所として大浜葉山神社を舞台として奉納する。そこに目の肥えた地元住民を招待し、感謝の気持ちを込めて本番同様に奉納するということでした。
 そして迎えた当日、タイムキーパーを幕裏にスタンバイさせ、当日と同じ順番で10番奉納しました。会場には国立劇場に足を運べない方や叱咤激励しようとわざわざ足を運んでくださった地元民で会場はうまり、この上ない感謝の気持ちと緊張感と高揚感の中で奉納することができました。演目はいずれも予定時間内に収まりましたが、裏方の段取りや今まで気づかなかったことに気づくことができ、細かな修正もできました。反省会の席では多くの意見がだされ、会員一同の一体感の醸成に繋がったと思います。



 5.いざ!!夢の舞台へ
 国立劇場公演前日、舞台組みとリハーサルを控え、一同は早々と雄勝を出発しました。清々しい空気の中、前途を祝福してくれるような素晴らしい天候のもと、どの会員の顔にも自信が漲っているように感じました。
 バス、電車と乗り継ぎ、11時過ぎには国立劇場に到着、きれいな服装から作業着に着替え、挨拶もそこそこに舞台設営作業に取り掛かりました。毎日のように電話やメールでやり取りをしていたので、初めてあう国立劇場スタッフの方々とも、まるで旧知の間柄のように普通な感覚で一緒になって作業できました。
 リハーサルを迎えるころには15時を過ぎていました。湯立て神事・叢雲・橋引を中心に通し稽古をし、その後一人ひとりにマイクをセッティングし音響テスト等々入念に最終打ち合わせをし、リハ終了の頃には一同の顔には疲労の色が隠せませんでした。その中で、感心したのは劇場側スタッフの細やかな心遣いと、労を惜しまない働きぶりでした。ここまで一生懸命になって働いてくださる劇場側スタッフの労を絶対に無駄にしたくない。この人たちのためにも絶対最高の舞台にしたい。この公演を絶対成功させなくてはならない理由が一つ増えた瞬間でもありました。



 6.すべての神々・すべての人々のために
 いよいよ当日です。会員一同からは、いつもの祭り同様に自我はありませんでした。そこには、すべての神々・すべての人々のために奉納させて頂くという、いつもどおりの謙虚な会員の姿しかありませんでした。
 湯立て神事から始まり、次々に演目を奉納する。それぞれに物語があって、そして、勧善懲悪で、時には笑いを誘い、時には手に汗握る・・・あっという間の10番でした。最終のチラシを兄弟子が舞っている最中、ここ数カ月のことが、在り来たりの表現をすれば、走馬灯のように思い出され、目頭が熱くなりました。雄勝法印神楽を今日まで伝えてくれた多くの神楽師の先輩方、それを地域の宝として支えてくれた雄勝町の方々やご愛顧してくれた方々、最高の舞台を演出してくれた劇場側スタッフの方々、地元を離れても雄勝の郷愁を神楽に感じてくれた方々。皆々様に感謝を申し上げます。



 7.実は・・・
 一時の部はハラハラドキドキでした。(汗)
 演目1番から4番までを終え、その時で4分位おしていました。最後の演目「産屋」を残しての4分おし・・・四時の部との観客入れ替え時間などを考え、すべてのスタッフに現状を伝えなくてはなりません。出演者側のタイムテーブル担当は私でしたので、国立劇場側の担当に耳打ちしました。「スミマセン。5分押しを想定しなくてはなりません。」その一言で舞台裏を疾走する担当スタッフ・・・何度も稽古し、弾き出した予定時間でしたが、あまりに素晴らしい舞台と、熱い視線を注いでくれる来場者に、ついつい熱が入りすぎたのでしょうか、少しばかり迷惑をかけることに恐縮しました。最終演目者にも押しているから時間を気にしてほしい旨を伝えました。
その後は楽屋そばのモニターで最終演目の進行状態をチェックしてました。・・・・!!!!おかしい!!どう考えても進行状態が思わしくない(汗)短にしたはずの場面が短になってない!!!これまでの4番と比べても時間がかかりすぎている。背中に冷たい汗が流れた瞬間でした。結果、トータルで15分押しとなってしまいました。つまりは、産屋一演目で10分押してしまったのです。国立側の担当は真っ青な顔色であちこちに連絡している模様。そりゃそうです。入れ替え時間が15分しかとれない。次はいるお客様は15分も待たせている事態となったわけですから・・・・・結果として、奇跡ともいえる四時の部3分遅れの開演まで修正できました。 この先劇場側スタッフに平謝りの私がいました。











TOP
  雄勝法印神楽  演目    自己紹介 舞台日記