■永夜抄1
永遠亭に居候してる○○に好意をもつてゐ
といっても素直に愛情表現をするわけがなく、「好きな子ほど苛めたい心理」でとにかくいたずらだの罠だのを○○にしかけまくったり
そんなこんなで日々生傷が絶えない生活を送る○○
それでも無理に自分を押し止めたりする様子が無いので、「なんだかんだで○○も楽しんでるんじゃない?」と勝手に解釈するてゐ
日々徐々にエスカレートしていく手酷い罠を見かねた永林や鈴仙が注意しても、その場は適当に返事をしてやりすごしたり
そしてある日、いつものようにどんな罠をしかけようかと思案している所で、偶然に鈴仙に看護されてる○○を発見
向こうはこっちに気づいていないのでなんとはなしに盗み聞きして、後でからかってやろうと企むてゐだが…
適当に雑談をした後、鈴仙は○○に「なんでこんなに傷だらけになってもてゐのいたずらを止めようとしないの?」と聞く
(そりゃ、○○も楽しんでるからよね〜。色々言っても虐められて喜ぶなんて変態、どうしようも無いウサ)
とか勝手な事を思っているてゐを尻目に歯切れの悪い様子で答えを中々言い出さない○○
てゐ(幾らなんでも鈴仙に言えるわけないかぁ。私だってそんな変態相手にしたら全力で引くウサ〜♪)
鈴仙「ちょっと、真面目に答えなさいよ。いつもいつもズタボロになりながらやって来て…いつか本気で大怪我するわよ!?」
○○「……じゃ、じゃあ言うけどな……怒るなよ?絶対に怒るなよ鈴仙?」
てゐ(それって確か『怒ってくれ!』って前フリじゃなかったっけ…?ま、真面目な鈴仙には理解できない事だろうしそんな前フリなくても大丈夫だろうけど)
鈴仙「いいからさっさと言ってみなさいよ」
○○「その…俺がてゐの罠を、特に止めない理由は……さ…」
てゐ(『てゐにいぢめられるのが好きだから〜』はい、言ってごらん○○!それと同時に私が突貫して思いっきりいじめたげるから♪)
○○「…………け、怪我したら…こうやって、鈴仙に治療してもらえて…一緒に居られて、話したりできる時間が増えるから…」
てゐ(よし、それじゃあ突げk………………え?)
鈴仙「なっ……!?な、なにバカな事言って…!!」
○○「俺は本気だ!!その、一番最初にてゐの罠で怪我して、鈴仙に治療してもらうまではまともに話す機会なんて無かったけど、
でもそれからはちょくちょく怪我したお陰で話せるようになって、それがその、嬉しくて……。
ま、前々から鈴仙とはもっと仲良くなりたいとも思って………ああもう!!お、俺はお前に『一目惚れ』してたんだよ!!」
鈴仙「!!」
てゐ(―――――――そ)
○○「そりゃ、てゐの所為で痛い目にあったり酷い目にあったりするのは『本気で嫌だし辛かったけど』、でも、鈴仙の為ならって…」
鈴仙「…………自分勝手ね。信じられない」
○○「っ…………ごめん…」
鈴仙「本当に信じられないわよ………貴方がボロボロになる度、私がどんな気持ちになってたかも知らないで」
○○「えっ…?」
鈴仙「私が気を付けるように言っても○○はへらへら笑ってるだけだし、てゐ自身に注意しても全然言う事聞いてくれないし……
どんな気持ちで私が怪我の治療をしてたかわかってるの!?……どんな気持ちで、傷だらけの『好きな人』の姿を見てたか……」
○○「……鈴、仙……」
てゐ(――――――うそ)
鈴仙「もう駄目。絶対に何をしても許さない。一生、私の傍で償わせるんだから」
○○「……ああ。ずっとお前の傍にいるよ、鈴仙」
てゐ(うそ。こんなの全部うそ。うそに決まってる)
鈴仙「悪いけど、○○。言葉だけじゃ信じ切れないの。……人間の言葉は信用しきれないから」
○○「じゃあ、どうすればいい?俺は、お前と一緒にいる為ならなんだってやってやる」
てゐ(嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘ウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソうそうそうそうそうそうそうそうそ)
鈴仙「簡単よ?言葉だけじゃなくて、実際の行動でも示してもらうだけ」
○○「行動?……お前、狂気の瞳っ……!!」
鈴仙「大丈夫。全部、私が癒してあげるから。○○の体も、心も全部…薬だけじゃなくて、私自身でも……
『私のせいで貴方が傷つく』なんて事、絶対にさせない……全部受け入れてあげる」
てゐ(あは、あはははははは…そうかー、やられてばっかじゃ気に喰わないから仕返しって訳?あーあ、私とした事が一本取られたウサ)
○○「――――――鈴仙っ!!!」
鈴仙「んっ、んむっ……ちゅっ……んんんんっ……ぷぁっ……いい、よ……全部して…今まで、貴方が私で想像してた事……全部、ぶつけて……」
○○「鈴仙っ!!鈴仙っ!!好きだ!!大好きだ!!愛してる!!誰よりも愛してるんだ!!全部…全部俺の物にしてやる!!」
鈴仙「あっ、はぁっ、いいよっ、して、全部○○の物にっ、私も好き、愛してる、だからぁっ――」
てゐ(でもダメだよねーこれじゃあ。○○の分際で私を怒らせたんだから。しっかりと『仕返し』してあげなきゃ。
いいよね○○?あんなに、てゐ様もびっくりなぐらいに口からでまかせ言って私を騙したんだから。報いは受けなきゃダメだよね?
今回はかなり厳しく行くつもりだけど、別にいいでしょ?)
てゐ(『本気で嫌だし辛かった』なんて嘘で、本当は『酷い目や痛い目に会うのが凄く嬉しい』って事なんだから)
○○「…………んー」
鈴仙「どうしたのよ、変な顔して。まだしたいの?」
○○「いや、それはもう結構ですハイ。色々と限界突破したせいで向こう側が見えたよ……」
鈴仙「まぁちょっと波長を弄ったりもしたしねぇ……で、結局どうしたの?」
○○「地味に怖い事言いだしましたね鈴仙さんや。いや……これもてゐのお陰なのかなぁって」
鈴仙「……こういう場所で他の女の子の名前を出すわけね」
○○「待て!誤解だ!!何よりてゐ相手じゃ妹とかにしか見えないから!!それに今までの事あってちょっと苦手なぐらいだし!!
ただ……俺が鈴仙とこうなれたのも、てゐの能力のお陰かなって」
鈴仙「『人を幸せにする程度の能力』、かぁ。ふふ、確かにそうかも」
○○「今度、一緒にお礼でも言いに行くかー…とっておきの人参とか無いか?」
鈴仙「う、まぁある事はあるけど……(今度○○と一緒に食べようと思ってたのに…)…まあいいか、確かにお礼も必要かな」
(今まで○○を傷つけてた事も、忘れないけど)
○○「よしよし、俺の恋人はいい女だなぁ」
鈴仙「へ、変な事言わないでよ恥ずかしいから!!はぁ……これからは師匠や姫様やてゐに全力でからかわれそう…」
○○「大丈夫だよ、どんな時でも俺は鈴仙の傍にいるから」
鈴仙「……………うん」
しかしここで終わる、しかも続かない
>>up0360
襖の閉まる僅かな物音で目が覚めた。
視線を隣の布団に移すと、そこで眠っているはずの鈴仙の姿が無かった。
厠にでも行ったのだろうと思い、寝なおそうと目を閉じる。
しかし、妙な胸騒ぎを覚え、なかなか寝付く事が出来ない。
言い知れぬ不安に駆られ、俺は鈴仙を探すため布団を抜け出した。
「まったく……これじゃ、ガキの頃と変わらないな……」
月明かりに照らされた永遠亭の渡り廊下を歩きながら、俺は苦笑気味に呟いた。
子供の頃の事は良く覚えていないが、俺は外来人の捨て子だったらしい。
迷いの竹林に放置されていたところを、ここ永遠亭に保護され、この歳になるまで育てられた。
唯の人間でしかない俺を受け入れてくれた永遠亭の住民は皆、俺にとってかけがえのない家族だ。
中でも鈴仙は俺を育ててくれた母親であり、今では大切な恋人でもあるのだ。
幼い頃の俺はかなりの甘えん坊で、今回のように、夜中に鈴仙が傍にいないせいで、永遠亭中に響き渡る大音量で泣き喚き、大騒ぎになった事があったらしい。
今でも、たまにその事で鈴仙にからかわれる事があるが、俺にとっては触れて欲しくない黒歴史だ。
第一、その時の事なんて覚えていない。
暫く廊下を歩いていると、襖の隙間から明りが洩れている部屋を見つけた。
中から微かに話し声が聞こえる。
なんとなく物音をたててはいけない気がした俺は、忍び足で静かに部屋を覗き込んだ。
そこに、鈴仙はいた。
鈴仙だけではなく、姫様に鈴仙の師である永琳先生、それにてゐまで。
「イナバ、分かっているわね」
「はい、姫様。今日であの子も21歳……あれから20年が経ちました」
「待ちかねたよ。とうとう私の番だね。60年がこんなに長いとはねえ」
「あらあら、てゐったら……」
いったい、こんな夜更けに何をやっているのだろうか。
盗み聞きをしているという罪悪感を感じながらも、俺はその場を動く事が出来なかった。
「永琳、薬は出来ているわね?」
「ええ、もちろん」
先生は姫様の問いに薄らと微笑み、注射のアンプルを取りだした。
「これを使えば、すぐにでも」
なんだ……
いったい、先生は何を言っているんだ……?
聞き耳を立てる事に夢中になり、俺はあまりにも間抜けなミスを犯した。
襖の立てるカタン、という音に、室内の4人の顔が一斉に俺の方を向いた。
8つの瞳に一斉に注視され、俺は凍りついた。
鈴仙がゆっくりとこちらに歩み寄り、襖を開け放った。
「……聞いていたのね」
必死に何か言い訳を口にしようとするが、頭が回らない。
釣りあげられた魚のように、間抜けに口をパクパクさせてしまう。
鈴仙も他の3人も、そんな俺を咎めるでもなく、まるで聖母のような、慈愛に満ちていると言っても良い優しい笑みで見つめている。
それなのに。
それなのに、背筋を伝う冷や汗と身体の震えが止まらない。
「今日から、てゐがあなたの母親になるわ。そして、恋人に」
そんな俺に、鈴仙は優しく諭すように言った。
「ど、どういう……こと?」
絞り出すようにそう言うのがやっとだった。
てゐが俺の母親? 恋人? いったい、何を言っているんだ。
そして、鈴仙の口から語られた真相に俺は愕然とした。
俺は確かに外来人の捨て子だった。
しかし、拾われたのは今から数百年も前の事。
ただの人間でしかないはずの俺が、数百年もの歳月を生きていられるはずが無い。
俺は、21歳になるまで育てられた後、永琳先生の若返りの薬で赤ん坊に戻され、そこから21になるまで育てられ、また赤ん坊に戻されるという事を数百年の間、延々と繰り返されて来たというのだ。
「な、なんで……?」
「それはね。私達4人が、あなたを愛してしまったから。私達はあなたに、家族としての愛情以上の感情を抱いてしまったの」
「でも、誰か一人があなたを独占しようとすれば、これまでの私達の関係が壊れてしまう。ひいては、永遠亭が壊れてしまう」
「そう。そして、4人で協議した結果……」
「順番に20年間だけあなたを独占して愛でる事にしたの。そして、今度は私の番ー」
鈴仙の言葉を永琳先生と姫様が引き継ぎ、てゐが満面の笑みで付け足した。
眩暈と込み上げる吐き気のため立っている事が出来ず、俺はその場にへたり込んだ。
俺は、数百年間の間、彼女達の玩具にされていたのだ。
悠久の時を生きる彼女達の、格好の暇潰しの道具。
そんな俺を、4人はまったく同じ笑みを浮かべながら見つめている。
「私達はあなたを心から愛しているの。ただそれだけなの。みんなで平等に、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、あなたを愛していたいだけなの」
熱っぽく語る鈴仙の赤い瞳には、明らかな狂気の色が見て取れた。
鈴仙だけでは無い。
姫様も永琳先生もてゐも。
何かを盲目的に信仰し、それ以外の一切を否定し拒絶する狂信的な光が。
「さあ……」
「う、うわああああああああっ!!!!」
俺は、渾身の力を込めて鈴仙を突き飛ばした。
尻もちをついて呆然とする鈴仙に多少の罪悪感を感じながらも、俺は踵を返して走り出した。
一刻も早く、この屋敷から逃げ出さなければ。
逃げ出した後の事は、それから考えれば良い。
ここで彼女らの玩具になるくらいだったら、野たれ死ぬか妖怪に食われるほうがマシだ。
まるで迷路のようなこの屋敷も、物心ついたころから暮らしているせいか、どこに何があるのかは分かっていた。
やがて、いくつかの角を曲がり、永遠亭の玄関に辿り着いた。
靴も履かずに玄関の引き戸を開き、鉄砲玉のような勢いで飛び出す。
「おかえりなさい」
鈴仙の声に俺は愕然とした。
玄関だと思って開いたその先は、先ほどの部屋だったのだ。
焦るあまり、俺は、彼女の能力を完全に失念していた。
俺は、その場にへたり込み、呆けたように、注射器を手に歩み寄ってくる永琳先生を見上げていた。
「ふふふ。可愛い〜」
てゐは嬉しそうに赤子を抱き上げ、愛おしそうに頬ずりをした。
「おかえり。また20年間よろしくね〜。あは、頬っぺたプニプニして可愛い〜。60年前みたいに、私好みに育ててあげるからねえ」
キャッキャウフフとはしゃぐてゐを、鈴仙は複雑な表情で見つめる。
「イナバ。そんな顔をしないの」
「そうよ、ウドンゲ。てゐだって60年我慢したのよ」
「分かっています。姫様、師匠……」
鈴仙は堪えるように、下唇をキュッと噛んだ。
「てゐの次は私の番ね。たった20年がこんなに待ち遠しいなんて」
「良いじゃないの永琳。おかげで人生に張りが出来たのだから」
「フフ……確かにそうですね」
永琳は苦笑しつつ首肯した。
「これからもずっとずっと、永遠にあの子は私達4人のモノ」
「ええ。だからウドンゲもそんな顔をするのはお止しなさい。気持ちは分かるけど」
「……はい」
鈴仙は、てゐの腕に抱かれ眠る、それまで息子であり恋人であった赤子を見つめる。
出来る事なら、今すぐにでも、てゐからを奪い取ってしまいたい。
こんな衝動に駆られたのは、今までも一度や二度ではない。
しかし、そんな一時の激情に身を任せるほど、鈴仙は愚かでは無かった。
(60年……60年の辛抱よ……)
内心でそう呟きながら、鈴仙はてゐと赤子から目を背けた。
60年待てばいいのだ。
そうすれば、まっさらな状態で、再び自分の元に戻ってくる。
今までだって出来た事だ。
ほんの少しだけ、辛抱すれば良い。
妖怪である自分にとって、60年などあっという間だ。
鈴仙は、心の中で必死に自分に言い聞かせ、静かにその場を後にした。
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