■慧音1

「慧音、慧音」
「あっ…? あ、ああ…」
「そ、その。大丈夫か?」
「ん…あまり、大丈夫じゃないかもしれない」

 そう言って慧音は悪戯っぽく笑った。
 常に落ち着いた雰囲気を崩さない彼女にしては珍しい、子供のような無邪気な笑みだった。
 ちなみに、俺と慧音は二人して毛布にくるまっていたりする。全裸で。
 もちろん、事後だ。

「乱暴にしてごめんな。まさか初めてだとは思わなくて」
「むっ。どういう意味だ、それは」

 いや、だってさ。
 半獣の慧音は俺なんかよりもずっと長く生きてるわけだし。
 慧音みたいな良い女が今まで手付かずだったなんて、有り得ないと思ったんだよ。
 だからその。
 ちょっとぐらい羽目を外しても良いかな? なんて。

「○○は…初めてじゃ無かったんだな」
「んぇ? え、えーと。はい。そのとおりでございます」

 慧音は寂しそうに俺の胸に手を添えた。
 いやね。確かにそうだけどさ。
 幻想郷に来る前の話だし、どっちかというと俺的には黒歴史っぽいのであまり思い出したくないし。
 要するにその程度の相手だっていうわけでいてええええええええええええっ!!!!!

「ちょっ!! けーね! 痛いっ! 痛いって!! 爪! 爪! 食い込んでる!!」
「ふーん。初めてじゃないのか。そーなのかー」
「い、いやっ、だから…!!」
「この身体が、心が、私以外の女のものだった時があるのか」
「た、頼むから、俺の話を…!!」
「妬ましい、な」

 パルスィかお前は!
 っていうか、そろそろマジで止めて!
 千切れる!!

「心配するな。永遠亭の薬があるから、千切れてもすぐに治せる」
「ごめんなさい! 勘弁してつかぁさい! 一生大事にするから!!」

 涙目になって悲鳴のように懇願する。
 不意に激痛が止んだ。

「そうか。よろしく頼む」

 ぽふっと身体を預け、慧音は微笑んだ。

「あー、いてえ。酷いよ慧音」

 慧音に抓られた部分はしっかりと爪のあとが付いており、思いっきり出血していた。

「ふふ。これでおあいこだ」

 ああ、畜生! 可愛いなぁもう!
 感極まって慧音を抱きしめた。
 そのまま2回戦突入。
 人生詰んだって感じがしないでもないけど、どうでもいいや。


>>ハンヴィー氏




「はああぁ……」

 自宅の縁側でぼんやりと夜空を眺め、○○はため息を吐いた。

「どうしたんだ、○○。そんなため息なんか吐いて」

 声に振り返ると、そこには慧音の姿があった。
 半獣にして里の守護者そして。

(俺の恋人なんだよな、うん。それを……それを、俺は…)

「もしかして、あの時の事を気にしているのか?」
「あー、うん。そうなんだ……ふうぅ…」

 再度ため息を吐く○○の隣に、慧音は寄り添うようにして腰を下ろす。

「確かにあの時はショックだったけど、もう気にしていないから、気に病むな」
「だけどさぁ…よりによって、慧音と恋人同士だってことを忘れてたなんて、有り得ないだろ?」

 ○○の最近の悩みは、非常に忘れっぽくなっている事だった。
 実際は忘れっぽいという生易しいものではなく、突然記憶が飛んでいたり、
抜け落ちていたりと非常にシャレにならない。
 その最たるは、今隣にいる慧音と恋人同士だったという事を完全に忘却していたという事だろう。
 慧音と恋人同士だったということを知ったのは、仕事が終わり、
酒場で仲間と酒を飲んでいるときのことだった。
 仲間の一人が、慧音とはいつ結婚するんだ、と○○に尋ねたのだ。
 それに対して○○は不思議そうにこう答えた。

「慧音と結婚? なんでさ。確かに彼女とはよく話すけどただの友達だよ」

 その後の皆の大騒ぎぶりは今でもはっきりと覚えている。
 男衆からは、やっかみ半分の罵声と酒を浴びせられ、女衆からは目出度く女の敵と認定されたのだ。
 その騒ぎの最中に、皆の話を統合して知ったのは、○○と慧音が里の人間は知らない者がいないくらいの、
仲睦まじい恋人同士で、既に同棲もしており、いつ祝言を挙げてもおかしくない間柄だという事だった。
 当然その騒ぎは慧音の耳にも入り、○○はいまいち訳が分からないまま、目に涙を浮かべた慧音に平謝りする羽目になった。

「大丈夫だ、○○」

 慧音は愛おしそうに○○に寄り添い、蕩けるような甘い声で囁いた。

「そのことだけは、もう『絶対』に忘れないから大丈夫…」
「そっか。慧音がそう言うのなら、そうなのかなぁ」

 ○○はぼんやりと答えた。





 1週間後。

「ただいま」
「おかえり、○○」

 仕事を終えて帰宅した○○を慧音が出迎えた。
 夕飯の支度の途中だったのか、割烹着姿だった。

「ああ、そうそう慧音。今日、道で妹紅に会ったよ」
「妹紅…にか?」
「うん。たまにはウチに遊びに来いってさ…慧音? どうしたんだ、怖い顔して」
「いや、何でもないよ。食事にしようか」
「ああ」





 1週間後。

「ただいま」
「おかえり、○○」

 仕事を終えて帰宅した○○を慧音が出迎えた。
 夕飯の支度中だったのか、割烹着姿だった。

「夕飯と風呂とどちらを先にする?」
「腹が減ったから、夕飯がいいな」
「わかった」



「相変わらず、慧音の料理は最高だなぁ」
「ふふ…褒めたって何も出ないぞ?」
「この筍の煮付けなんて、味が染み込んで最高だよ」
「ああ、それか。竹林に住んでる友人に分けてもらったんだ」
「そうなのかぁ。慧音の友達か。会ってみたいな」
「うん? 別にそんな必要はないさ」
「なんで?」
「竹林は妖怪が住んでいて危険だ。そうでなくても迷ったら出られなくなるぞ」
「そっか。怖いところなんだね」
「ああ。だから、行く必要なんて無いよ」
「そっか。慧音がそう言うのなら、そうなのかなぁ」





 1週間後。

「ただいま」
「おかえり、○○」

 仕事を終えて帰宅した○○を慧音が出迎えた。
 夕飯の支度中だったのか、割烹着姿だった。



「帰ってくる途中で霊夢に会ったよ」
「……霊夢に?」
「珍しいだろ? あいつと人里で会うとは思わなかったよ」
「……それで?」
「雑貨の買い出しに来たんだってさ。あと、来週宴会をやるから来いって言ってたな」
「……そうか」
「どうしたんだ、慧音。怖い顔して」
「いや、何でもないよ。食事にしようか」





 1週間後。

「ただいま」
「おかえり、○○」

 仕事を終えて帰宅した○○を慧音が出迎えた。
 夕飯の支度中だったのか、割烹着姿だった。



「里の人に聞いたんだけど、この近くに神社があるんだって?」
「近くというわけでもないぞ。大人の足でも半日はかかる距離だ」
「結構遠いんだな。でも行ってみたいな」
「止めておけ。そこの巫女は参拝客に賽銭を強要する業突張りだぞ」
「うへぇ。巫女さんなのに萌えないなぁ」
「しかも、定期的に妖怪を集めてはどんちゃん騒ぎを繰りかえしている怪しい奴だ」
「おっかないなぁ」
「ああ。だから、行く必要なんて無いよ」
「そっか。慧音がそう言うのなら、そうなのかなぁ」





 ○○が幻想郷に来てから2年ほど過ぎただろうか。
 人里での暮らしにも慣れ、良く尽くしてくれる妻もいて、○○には何の不満もない。
 一時期酷かった物忘れも今ではすっかりなりを潜めている。
 ただ、2年もここで過ごしている割には狭い人里以外の事は未だに良く知らない。
 知らないことばかりなので、ついつい妻である慧音を頼ってしまう。
 しかし、○○はそれで良いと思っていた。
 今まで慧音の言うことに間違いはなかったし、きっとこれからも無いだろうから。
 


>>up0366





浅い眠りから覚めると、見覚えのない場所だった。
夕べは何をしていたのだったか、いまいち思い出せない。
首をひねりながら、体を起こすと、すすり泣く声が聞こえる。
何事かと辺りを見回せば、うずくまって泣いている慧音がいた。
……これは一体どうなっているんだ?
呆然と慧音を眺めているとふと、目が合う。
途端に目を見開き、俺を睨み付ける慧音。
「……お前が、まさかこんなことをする奴だったとはな」
一晩中そのままだったのか、泣き腫らした目は真っ赤に血走り、その迫力に思わず怯んでしまう。
「慧……」
「近寄るな! 一刻も早く出ていけ!
さもなくば私は、お前を殺す!」
その剣幕に圧された瞬間、
「……あ」
夕べのことがまざまざと思い出される。
「…あ……ああ」
そうだ、俺は夕べ、色欲に負けて慧音に無理矢理……
……これ以上は思い出したくもない。
「見下げ果てたぞ鬼畜が! お前の姿など見るのも不愉快だ!
さっさと失せろ!」
そう、俺は
「…う」
取り返しのつかないことを
「……ううっ」
彼女に、してしまった。
「……うあああああああああああっ!」
その後のことはあまり覚えていない。
気が付けば自分の部屋の布団に毛布を掛けたまま丸まっていた。
何かから隠れるように。
自分の汚い本性に吐き気がした。
事実、何度か胃液を吐き戻した。
……俺はなんてことを。
ただ自分の浅ましい行いを嘆き、悔やみ、憎み続けていた。
それからの日々は地獄だった。
昼はひたすらに慧音に許しを乞いに出向いた。
玄関で額を擦り付け、血が出るほどに謝り続けたが、許しては貰えなかった。
「許すと思うのか? お前がしたことは、謝ったところで許されるものではない」
「私はお前を許さない。死ぬまで、いや死んでからもあの世で、私に詫び続けろ」
「さっさと出ていけ。お前の自己満足に付き合う程、私も暇ではない」
等ときつい言葉を浴び、とぼとぼと帰路に着く。
当然のことだ。許して貰おうなど、おこがましい。
夜は夜で、あの夜が悪夢として再現される。
泣き叫ぶ慧音を見て、昂っていた自分がいる。
快楽に酔いしれていた自分がいる。
それを自覚する度に罪の意識に強く強く苛まれた。
もはや慧音に謝り続けるしかない。
たとえ許されなくても、そうでないと壊れてしまいそうだった。
ただ俺は謝り続けた。
慧音に許しを乞い続けた。


俺は里人に囲まれていた。
皆一様に怒り狂った目で俺を見つめていた。
一ヶ月前、慧音を穢した夜から今日まで、俺は毎夜慧音をむさぼり続けていた。
……何故こんなことをしたのか……
非難を恐れずに言えば、開き直り、だったんだろう。
どちらにしても、里の知恵者である慧音の心に深い傷を負わせた俺は、間違いなく悪人だ。
このまま私刑にかけられるか、村八分に会うか、どう転んでもまともに生きて行けはしまい。
しかし、そんな俺の窮地を救ったのは、被害者であるはずの慧音だった。
「このような外道でも、彼は里の者だ。もう一度だけチャンスをやりたい。私の元で生活し、更正させてみせる」
渋る里人を慧音は説き伏せる。
「もしこの期に及んで間違いを犯すならば、こいつはそれまでの人間だ。
その時は、煮るなり焼くなり好きにするがいい。
しかし、どんな者にもやり直すチャンスを与えてやることが、優しさだと私は思う」
自分が泣いていたことに、気が付かなかった。
ただ頭を深々と下げて、感謝の言葉を言い続けていた。
そんな俺を慧音は抱き締めてくれた。
「見ろ、○○もここまで反省している。他者の罪を許し、自らの罪を忘れない。
それが善き世の中を作っていくと、私は信じたい」
……女神
そう形容するに十分だった。
俺はこの女性の期待に応える。
この女性のために生きる。
その決意が俺の中に芽生えた。
そう、俺はこの日「生まれ変わった」のだ。


目を覚ますと見慣れた寝室だった。
隣には慧音がいて、俺は彼女にしっかりと抱きついていた。
「おはよう、○○。……全く、これじゃあ、私が動けないじゃないか」
彼女は母のように深い愛で、俺を包んでくれる。
おかげでついつい甘えすぎてしまう。
恥ずかしながら、抑えられないのだ。
照れながら腕を緩めようとすると、今度は慧音が抱きついてきた。
「まだ起きるには早い。
もう少しの間なら、甘えてもいいんだぞ」
ああ、彼女は優しく暖かい。
寄る辺ない、里の嫌われ者だった俺を受け入れて、愛と言うものを教えてくれた。
何故そうだったのかは思い出せないが、そんなことは些末なこと。
今は彼女のおかげで里の人たちと親交を持つことが出来た。
そうして、二ヶ月前に籍を入れて、一緒に暮らしている。
慧音は俺の心の支え。
彼女のためならどんなことだって出来る。
例えば、絶対に有り得ないことだが、慧音に死ねと言われれば死ねる。
そのくらいの覚悟をもって言おう。
「俺は慧音を愛している」と。


「ねー、紫」
「何かしら?」
「最近白沢が余計に歴史を弄ってたけど、良かったの?」
「別に幻想郷に害があった訳じゃないしね。一応警告に行ったら、もうしないって言ってたし」
「ふ〜ん。それにしても○○か。ちょっと残念だったかしら」
「あら、珍しいわね」
「私だって女ですわ、……とでも言えばいいかしら?」
「ふふ、そうだったわね」
……霊夢は気付いていないだろうけど、○○がこういう風にたくさんの女性に好かれるから、白沢はあんなことをしたのよね。
……彼女も女だったってところかしら?
しかし、うまくやったものね。
歴史改変の矛盾を、○○の精神状態を不安定にして隠すなんて。
強い想いは多少の矛盾なんか吹き飛ばすし、もはや○○が彼女以外に靡くことはありえないでしょう。
そのうち誰かの物にされていたでしょうから、相手があの白沢だったのは幸いだったのかしら。
出来すぎた脚本をクスリと笑うと、紫は霊夢に別れを告げ、スキマヘと消えていった。


どんどん変な方に行ってしまった…
ヤンデレのつもりではあるが、なってるか不安。

1スレ目 >>550-551




「ん〜、こう陽気が良いと眠くなっちゃうなぁ」

 う〜ん、と大きく伸びをして、僕は縁側にごろんと横になった。
 僕がこの幻想郷に迷い込んでから、早いものでもう2年。
 最近では生活も安定し、僕には勿体ない綺麗な嫁さんも貰って順風満帆な幻想郷ライフを送っている。
 もっとも、嫁さんは寺小屋の教師をやっており、今日は授業のある日なので家には居ないのだけれど。

「こんにちは、○○さん!」

 春の陽気に当てられて居眠りしそうになっていたとき、羽音とともに誰かが舞い降りた。
 背中に烏みたいな真っ黒い羽の付いている、山伏みたいな恰好の女の子だった。

「いやはや、お久しぶりです。といっても、1ヶ月ぶりぐらいですけどね」

 そんな事を言いながら、彼女は手帳のようなものを取り出した。

「今日お伺いしたのはですね、ズバリ○○さんと奥さんの結婚生活について取材させていただきたいのです」
「ごめんなさい。えーと、どちら様?」

 僕が訊ねると、女の子は一瞬呆気に取られた後、可笑しそうに笑った。

「やだなあ、もう! 何言ってるんですか! そんなこと言うと、あやや泣いちゃいますよ?」
「えーと、あややさんと言うの?」

 あややさん(仮名)は不審そうに小首を傾げた。
 うん、中々可愛い仕種だ。嫁さんほどではないけれど。

「……本当にどうしたんですか、○○さん。いつも清く正しい、幻想郷最速のブン屋・射命丸 文ですよ」
「しゃめいまる あやさん、ね。新聞屋さんなんだ。ごめんね。どこかで会ったことがあるかもしれないけど、僕は貴女の事を知らないんだ」
「え……?」

 射命丸さんの笑顔が凍りついた。
 まあ、仕方無いよね。そんな訳のわからない事を言われたら、誰だってそうなっちゃうよね。

「正確には、知らなかったことにされてるんだけどね」
「ど、ど、どういうことですか?」

 射命丸さんがペンと手帳を手に詰め寄って来た。

「僕の奥さんがヤキモチ焼きでね。僕が女性と出会った歴史をすぐに無かった事にしちゃうんだ」
「そ、そんな…!!」
「幻想郷に来てから出会った女性の歴史を全部無かった事にするんだから、徹底しているよね。浮気なんてするわけないのに」
「じゃ、じゃあ、霊夢さんや魔理沙さんの事も…!!」
「ごめん、覚えてないや」

 どうしたんだろう。射命丸さん、真っ青な顔をして黙り込んじゃったよ。

「○○さんは…それで良いんですか?」
「そうだね。今日みたいに、僕の事を知ってる人に出会うと、ちょっと不便だけど、生活する分には困らないから」
「そう、ですか…」

 射命丸さんはペンと手帳を仕舞ってしまった。
 メモを取っていなかったみたいだけど、良いのかな?

「ご協力ありがとうございました…」
「いえいえ。あ、そうそう」

 僕は背を向けた射命丸さんに言った。

「もし、今度会う機会があっても、僕は貴女の事を知らないと思うけど、気を悪くしないでね」

 射命丸さんは何も答えず、そのまま飛び去ってしまった。
 うーん、気を悪くさせちゃったかなぁ。
 でも、無かった事になってるんだから、仕方がないよね。
 そうそう。さっき、射命丸さんにはああ言ったけど、ちょっとだけ不安な事があるんだ。
 それは僕と奥さんの間に子供が出来た時、生まれた子が女の子だった場合。
 まさか、自分の娘にまでヤキモチ焼いて、無かった事にしないよね?
 自分の娘の事を知らないなんて、父親としてかなり問題があるもんね。
 さて。
 そろそろ、寺小屋の授業が終わる頃だし、迎えに行こうかな。



>>ハンヴィー氏




 どうしたんだ、○○。そんな深刻そうな顔をして。
 うん? 最近物忘れが酷い? 自分が直前まで何をやっていたのか分からなくなる事が多い、だって?
 はは。なんだ、そんなことか。
 ああ、いや、すまない。そんな顔をしないでくれ。
 なに? それだけじゃない?
 里の人間が、自分の事を知らないと言っているって?
 だから、外に出るのが怖い?
 そうか……。
 外に出るのが怖いのなら、ずっと家の中に居れば良い。
 なに、私がお前の面倒を見てやるから心配するな。
 ふふ、遠慮なんてする必要は無いんだぞ?
 どうした? 後ずさりなんかして。
 ……そう、そうだよ。気が付いたみたいだな。
 私がお前の、そして里の歴史を弄ったんだよ。
 さあ、どうする? 
 もう、人里にお前の居場所は無いぞ? ふふ。
 どうしてこんなことを? 決まっているだろう…?
 お前が欲しいんだ。私のモノにしたいんだ。
 理由は、ただそれだけだよ。
 なに? こんな事をして、霊夢や紫が黙っていないだって?
 ははは。異変でもないのに、博麗の巫女が動くわけがないだろう?
 幻想郷に影響があるわけでもないのに、隙間妖怪が動くわけがないだろう?
 あ、おい。どこに行くつもりだ、○○。




 まったく…突然走り出したと思ったら、すぐに立ち止まって。
 いったい、何がしたいんだ? ふふ。
 うん? 最近物忘れが酷い? 自分が直前まで何をやっていたのか分からなくなる事が多い、だって?
 なぜ、走っていたのかも分からない?
 はは。なんだ、そんなことか。
 ああ、いや、すまない。そんな顔をしないでくれ。
 なに? それだけじゃない?
 里の人間が、自分の事を知らないと言っているって?
 だから、外に出るのが怖い?
 そうか……。
 それなら、暫く家でじっとしていると良い。
 気持ちは嬉しいけど、私に迷惑をかけるわけにはいかない?
 優しいな、○○は。今更そんな遠慮をする仲でも無いだろう?
 いつまでも、ずっとずっと、私の所に居れば良いさ。
 私がお前を忘れるなんてことは、絶対に無いんだからな。
 お前と私、二人だけの歴史を創ろうじゃないか。


>>ハンヴィー氏




同士諸君、嫁からチョコは貰ったかね?
当然私は貰ったとも。

…チョコをくれる数日前から嫁が永遠亭に通ってなければ喜んで口にするのだがね。

さて、我々はチョコを貰った。
故に嫁達にお返しをしなければならない。
しかし、嫁達にお返しをするというだけなのに何人もの〇〇達が嫁に``お返し``と称してお持ち帰りされ帰らぬ人となった。

だが!!我々は彼らと同じ轍を踏むことはない!!

何故なら!我々には……我々には……あれ?なんだっけ?

なぁ慧音、俺みんなに何言おうとしてたんだっけ?

4スレ目>>280




日本の集落では、子作りというのは重要なファクターである。
勿論、人間に対する脅威が多い幻想郷では人口を保つ為に健全で確実な子作りを奨励しなくてはならない。
昔でいう所の水揚げや夜這いと言った所か。

ところで、外来人も人里からすれば重要な人口増加のファクターでもある。
去る者は追わずで博麗神社から帰る者は引き留めはしない。
ただ、此方に定住する意志を持つ者は積極的に里に入り込めるように幇助する。
どうしても限られたコミュニティで幾世代も交われば問題が発生する様になる。
外来が結界越しに流れ込んで来る人間しか居ない幻想郷では、外来人は新しい血筋を入れる唯一の手段なのだ。

さて、三ヶ月前ほどからこの郷に流れ込んで来た○○という少年(17歳)
彼はこないだまでは普通の高校生であったものの、家族を事故で失い1人になった。
自分を引き取ることを躊躇し押し付け合う親戚達に嫌気がさし、とある田舎に傷心旅行に出かけた所いつの間にか幻想の郷に紛れ込んでいた。

幸いにも森を彷徨っている所を某雑貨店の店主に助けて貰い、人里までやって来た。
里長の1人である慧音の外界に帰るか?の問いに○○は首を横に振った。
愛する家族は全て死に、後は自分を厭う者ばかり。
だったら、ここに住まうのも悪くはないと。ここなら家族を失った痛みを忘れれるかもしれないと。

幸い、そこそこ体力が有り日本の高等教育を受けた○○はすんなりと里へと迎え入れられた。
大概の力仕事は何とかこなし、高い教養(寺子屋しか無い幻想郷では)を持つ○○はいろんな場所から仕事に誘われた。
(山の上の神社二箇所に配達しに行ったり、妖怪専用の店舗の店番したり、紅魔館への商品配送を行ったり、竹林の奥へ薬を受け取りに行ったり、
最近地上に出て来る様になった地底の住人と折衝したり、里でトラブル起こしてた天人を宥めたりと忙しかった)
そうして暮らしていった三ヶ月目のとある日、○○は慧音から呼び出された。

「え、ふ、ふふ筆下ろしですかっ」
「あ、ああ。お前はまだ女を知らないそうだからな」

何処か顔を赤らめ、そこはかとなく顔を逸らしながらも彼女は続ける。
この里に住むからには、誰かと結ばれ子を儲けて貰うという事。
そうやって外来の血を流し込み、里の血が濁るのを防ぐのが外来人を受け容れる条件なのだと。

顔を真っ赤にしている今時初心な○○を前にして、何故か太股を軽く摺り合わせながら慧音は続けた。

「ま、まぁそう言うわけだ。村では耕作の無い冬の間に行うのが通例だが、時期をあまり延ばすのは良くないからな。明日、村外れの集会所の離れに来るんだ」
「は、はぁ」
「そこにお前に色々と作法を教えてくれる人を派遣する。何、緊張する事はない、ぞ。ん、子を為す種族なら誰だって通る道だ」

元々、その離れはそう言った『教育』の為に作られているようだ。
本来なら冬に何組か少年と教える側の玄人を一晩泊まらせ、女とのまぐわい方、夜のお付き合いの仕方を教える。
ただ、やって来たのが春先な○○では、冬まで待たせるのは何だし17歳では間違いを犯しやすい。
トラブルが起きる前にきっちりと作法を教えよう……というのが慧音……もとい人里の方針らしい。

「……解りました。それがここのルールであるなら僕はそれに従います」

茹だった顔の○○は顔を伏せたまま返事をした為、慧音が艶めかしく上唇を舐めたのには気が付かなかった。


そして、当日。
夕暮れ時に○○が離れに入ったのを確認すると、慌ただしく慧音は準備を始めた。
入念に湯浴みをして身体を磨き上げ、体毛の処理をして置く。
柄にも無いと言って一度も使わなかった香を焚いた部屋で、肌襦袢を着込む。当然下着は着けない。
薄い化粧を施し、これまた柄にも無いと言って使わなかった紅を唇に差す。

「これで、佳し」

普段の仁義溢れる、頼れる里長の1人である上白沢慧音はそこに居なかった。
寂しげな少年に少々強烈な片思いを寄せる、『女』が其所に居た。

(通例をねじ曲げてでも強行した甲斐があった。これで、誰からも出し抜いて○○と契れる!)

満月でもないのに獣人化しそうな勢いで自宅を飛び出す。
こうなったのも、○○が悪いのだ。自分は悪くない。
○○があちこちで野良猫共(大小様々)をちょっかいを受けるようになったから、自分は予定を繰り上げなくてはならなくなった。
○○が優しすぎるから悪いのだ。だから、調子に乗って勘違いした雌猫共が○○を汚そうと近付いてくるのだ。
本当なら、冬になってから春になるまでしっぽりと自分を通じて女を教え込むつもりだった。
そしてあわよくば子を為し、既成事実を元に夫婦へと至るつもりだったのが―――こうして計画を繰り上げる必要が出てしまったのだ。

優しい○○の事だ。強引に迫られたら押し切られてしまうかも知れない。
そうしたら冬になる前に○○が手籠めにされてしまい、傷物にされてしまう。

(そうはさせるか、○○はこの私と結ばれて、慎ましく人里を支えるんだ。与太郎達に手出しはさせないー!)

ちなみに、慧音と同じ考えを抱く人及び妖が一斉に村はずれの集会所を目指しているのを慧音は知らない。
勿論、枕が2つ並べられた布団を前にウロウロしている○○が知る由もなかった。

4スレ目>>627-628