■小悪魔1

自分を棚に上げるような物言いだけど、
白黒だって本を返さないじゃないか。
なんでまた僕ばっかこんな目にあうのさ。
最初はまあ、公開ちゅーとかねえ。
確かに自分が恥ずかしいだけで、それを楽しんでたかもしれないけど。

ある時、いつもどおり返却期限の過ぎた本を返しに来るとこあが深くため息をついた。
「まったく、あなたも懲りない人ですね」
「いやあ、ははは・・・」
「あのですね、そりゃあ私だって楽しんでお仕置きをしてますけどね、
だからといって返却期限を守らなくて良いって訳じゃないんですよ」
「うん、ごめん・・・ちょっと甘え過ぎてたかな」
こあは僕を指差して次の罰を宣告した。
「ちょっとお仕置きじゃすまない約束をさせて貰いますね。
次、返却期限を破った場合◯◯さんの体も魂も私の物になって貰いますね」
こあはいつになく真剣な顔持ちでそう言った。
「分かったよ、良い手段じゃないけど、
守れない可能性もあるし、本を借りるのは諦めるよ」
こあが一方的に契約を結んでしまった以上下手に本を借りる方が危ない。
彼女を信用していない訳ではないが、
半ば口約束で結んだ契約がどんな効果を持つか分からないからだ。
「ええ〜、でもそれだと◯◯さんが・・・」
「大丈夫、借りない分ちょくちょく読みに来るからさ」
こあは不満そうだったが、自分が一方的に契約を結んだ立場その内容を変える訳にはいかない。
仕方なしに引き下がって、僕を見送ってくれた。

返却期限は一週間、
とはいえカレンダーなんて文明的なものはそれこそ紅魔館くらいにしか無い訳で。
さっさと幻想入りすれば良いのに。
しかし借りた本が無い以上それに追われる事も無くなった。
その分、寂しがりなこあに会いに行かなきゃならないけどね。

本を借りない分荷物が減った。
具体的には外から唯一持込た鞄。
やたら重い割に物が入るでもない品。
無いと無いでスペルカードを持ち歩くのに困る。
そういえばこあは持ってなかったっけか、
戦う事なんて滅多に無いからと言ってたが、
それならそれで回避用の弾無しボムでも持てば良いのに。





一週間経った、
カレンダーが無いとか言った割に偶然それを覚えていた。
ああ、意識すればなんとかなるもんだなあと思いながらいつも通りに紅魔館に遊びに行ったのだった。
しかし、何故か今日は、美鈴が立ちはだかった。
「すいません◯◯さん、今日は貴方を入れないようにって命令されたんです・・・」
「ええ?じゃあ一旦引き下がるよ。
しかしなんでまたそんな事に?」
「詳しくはわからないのですが・・・誰かが奏上したのをお嬢様が聞き届けたようです。
◯◯さんは結構親密なお客さんですし、逆にたいした用事じゃないと思うんですがね」
美鈴も疑問を持ってる様子だったが、
お互いに納得し家に帰る事にした。
そういえば一週間、返却期限、ああ。

まさかと思って家に帰ってすぐに鞄を探る。
あった。
小さな白紙の束が鞄の内ポケットに隠されており、
とってつけたように図書館所有の印が押してあった。
「冗談じゃ済まんよ・・・」
急いで紅魔館に引き返した。

事の顛末を話すと美鈴はあっさりと通してくれた。
信用されているのか、お人好しなのか。
止めようとする咲夜さんに素直に従い、レミリアの所まで連れて行かれる。
「あの子も中々大胆な事するのね・・・」
レミリアはこあの行動に暫く驚いた後、
契約の都合上どちらかの味方は出来ないと言った。
こちらとしては行く手を阻まれないだけで十分だ。
急いで図書館に向かった。

図書館の扉を開けてすぐの所にこあは居た。
「ああ、案外気づくのが遅かったんですね」
「今回のは冗談じゃ・・・痛っ!」
図書館に入ろうとした瞬間、見えない壁に行く手を阻まれた。
「明日まで結界の外で待ってて下さいね」
ああ、しまった。
彼女たち、他の紅魔館の面子が手を貸さないんじゃあ、
こういう結界の類いは破れない。
「クソっ・・・」
殴ったところでどうにもならないが、気が晴れん。
「大丈夫ですよ、数時間もすれば永遠に一緒に居られますし」
「うるさい・・・!この卑怯者!」
「悪魔ですから、そんなに褒めないで下さいよ」

暫くして、12時の鐘が鳴り、結界は解け、
「おいで」
言葉通りに体は動く。
「今の◯◯さんは私の汚い所も知ってますからね。
だから要らない事は洗い流しましょう?
私の全部なんて知らなくて良いんです。
ただ無邪気に私を愛してくれれば良いんです・・・」
声も出ぬまま、意識を失った。



ーーー嬉しかったんです。
愛される事が、愛する事が。
そんな事とは真逆の種族ですのに、皮肉ですよね?
だからごめんなさい、恋愛の駆け引きなんて知らないんです。
嫌いにならないで、私を好きでいて、
それだけが私の願いです。


そんな会話、
走馬灯のように頭を駆け巡る。
何かは一瞬躊躇しつつその記憶を洗い流した。

誰ともなく、哀しさだけが残った、気がした。


ジョバンニ氏
 



紅魔舘には人間も少数ながら出入りがある。理由はそれぞれだが大まかにわけて3つ。
一つは客として、もう一つは招かれざる客として、そして最後は仕事として…だ。
主の身の回りの物こそ従者が直接買いに行く事が多いが、それ以外となると人間の業者に持って来させる方が
使えない妖精メイドにお使いさせるより確実だからだ。
無論紅魔舘に行くと言う事は途中霧の湖や森を通る事になるのだが、大きな事故はこれまで起きていない。
出入りをする者は紅魔舘に由来する品を身につけていて、他の人間と区別がつくようになっており、もしその者達を襲った場合は、紅魔舘に損害を与える行為をして
敵対したものとみなされ、悪魔のメイドによる報復措置が待っているからだ。
大概の業者は妖精メイドの服と同じ布を渡され、玄関または裏口までしか立ち入るのを許されていないが、少数ながら紅魔館内部の出入りが許された人間も存在する。
館の内部に出入りする事が出来る人間には、館の関係者から私物を渡され、それによってどこまで出入りできるか決まっていて、
問題ない範囲であれば出歩いてる最中に妖精メイドに見つかっても、身の安全は保証されるという一種の通行手形のような仕組みだ。
○○はそんな業者の一人であり、図書館までの出入りを許された業者である。
ある日、いつも通り紅魔舘に菓子や茶葉を持っていくと、珍しく図書館の主の姿が無く、更には図書館内部に巨大なプールが出現していて
その傍らでは何故か小悪魔がお好み焼きを焼いていた。
「あ、こんにちは、〇〇さん。何時もご苦労様です」
「毎度ご注文ありがとうございます。…と言いたい所だが、なんで図書館にプールなんかあるんだ?」
「あはは、聞かれると思ってましたよ」
客に対する態度とは思えない態度で小悪魔に話しかける〇〇だったが、小悪魔は微塵も気にした様子が無い。
と言うのもこの二人、互いの非番の日を合わせるほど仲が良いのだ。
〇〇が紅魔館に出入りするのに身に付けているアイテムは「小悪魔のネクタイ(予備)」、
これによって図書館までの出入りが自由に出来ると言うわけだ。
噂では、出入りする人間の中に館の主人であるレミリアの私物を渡された人間もいるとの事だが、〇〇自身が見かけたことはない。

「実はですね、レミリア様が幻想郷に海を創るんだと申されまして、パチュリー様に命じて作らせたのがコレ、なんです」
「どうみてもプールにしか見えないんだが…?」
「ええ、ですから少しでも雰囲気が出るようにとこうしている訳なんですが…」
「海の家、と言うわけか、お好み焼き以外に焼きそばにラーメンにかき氷と…結構本格的だな」
「えへへ、このセットとか結構張り切って作ったんですよ。メニューも色々研究しましたし、と こ ろ で」
「ん?」
「お一つどうですか?」
「じゃあ、一つ貰おうかな、最近入り用でさ、色々切り詰めてるから結構腹減ってたんだ」
「それは調度良かったです。…よっと」
そう言いながら小悪魔は手早くお好み焼きをひっくり返す。
「出来ました。熱いから気をつけてくださいね」
そう言って二つ折りにしたお好み焼きに、ソースをたっぷりつけて紙に包んで渡してくる。
「ありがとう、うーん、いい匂いだ。それじゃ頂きます。」
指にソースがついても気にすること無く一心不乱に齧り付く〇〇、その横で小悪魔はニコニコと微笑んでいてとても平和な光景であった。
「ご馳走様、美味しかったよ。小悪魔は良いお嫁さんになれるかもな」
「だったら〇〇さんがお嫁に貰ってください」
「ははは、俺と小悪魔じゃ寿命とか…」
「その心配は、たった今無くなりましたよ」
「え…たった…今?」
「はい」
「どういう事だ?」
「前に○○さん、私の事をあまり悪魔らしくないって言ってましたよね、だから私もたまには悪魔らしい事をしようと思いまして」
相変わらず人懐こい笑みを浮かべながら子悪魔は言葉を続ける。
「そこで私も使い魔を持とうと決めたんです」
「それは結構な事だが、俺と何の関係があるんだ?」
「実はですね、その使い魔って言うのは○○さんの事なんですよ?」
「は?」
「まだわかりませんか?まあそうですよね。念には念をいれましたから」
そう言って子悪魔は一枚の紙を取り出す。
「これ、何かわかります?」
「それは…さっき俺が食べたお好み焼きの包み紙だろう?」
「ええ、でもこれ実は包み紙なんかじゃなくて、、魔術の契約書だったりするんですよ」
「なっ!?」
「ネタばらししちゃうとですね、先程食べたお好み焼きのソースに私の血をほんのすこーしだけ混ぜて、包み紙のほうには〇〇さんを使い魔にするための術式が組み込んで…」
企みが成功して嬉しいのか、小悪魔の口調は楽し気で、嬉々として事の説明をしていく。
「と言うわけで私の血入りのソースがついた手で契約書に触れた時点で、契約に同意してサインしたものとして扱われます」
「ちょ…それってつまり」
「はい、今日から私が〇〇さんのご主人様です♪」
「なんだって、き、汚いぞ小悪魔」
「汚いは、褒め言葉です。仮にも私は悪魔ですよ?それに、確かに私に力はあまりありませんが、それでも主従契約は〇〇さんにもそれなりにメリットはありますよ」
「一応聞いといてやるが、なんだ?」
「まず寿命が大幅に延びます。それから風邪とかの軽い病気には掛からなくなりますし、多少の怪我なら私が魔力を分ける事で治す事も出来ます。それに」
「それに?」
「私の部屋にも結界を抜けて入ることが出来るようになりますし、いつでも私が〇〇さんを召喚することが出来るようになります。」
「前者はともかく後者はメリット…なのか?というか、デメリットとかは無いのか?」
「私が死ぬと〇〇さんも死にますし、〇〇さんが死んでも私が死にます」
「…まじかよ?」
「はい、今回色々と正規の材料以外のものも使ってますからね、本来はそんなことにはならないんですが」
「使い魔が死ぬと主人も死ぬなんて無茶苦茶な気がするんだが、お前はそれでいいのか?」
「当たり前じゃないですか?その程度で〇〇さんと一緒になれるんですから」
「……契約解除は出来ないのか?」
「教えると思いますか?まあ、良いですけど。解除の方法はありません。少なくとも私に契約解除は無理です」
「な、ならパチュリーさんなら」
「先程からキョロキョロしてる様ですが、"お探しのパチュリー様はここには居ませんよ"。魔法の森の魔法使いが怪我をしたそうで」
そう言いながら子悪魔は○○の足元に置きっぱなしだった茶葉や菓子を入れた段ボールを拾い上げた。
「どうしても自分で見舞いにいくから、何か消化に良い軽いメニューを作れと仰られたので、雑炊と他に消化に良い物を25キロほど持たせました」
軽いメニューとは指定されましたが、重量まで軽くとは言われませんでしたからね。となんの悪びれも無く小悪魔は言う。
「と言うわけでパチュリー様はすぐには戻ってきません。というか、案外そのまま遭難くらいするかもしれませんね」
「いくらなんでも流石にそれは…」
「外に出てるのはあのパチュリー様ですよ?」
「…………」
「まあ、そんな事はどうでも良いのです。これからよろしくお願いしますね」


「…ったく、道具屋にキャンセルに行かなきゃならなくなったな」
「だから金欠だったんですね。誰かにプレゼントですか?でもそんなの許しませんよ。私、こうみえても嫉妬深いんですから」
「いや、それは十分解ったから…安物のアクセサリーだったんだけど、元々お前に渡す為の物だったんだ」
「え?私にですか?」
「ああ、日頃色々世話になってるからな、そのお礼にと思って」
「それは嬉しいですけど、キャンセル…ですか」
「指輪と二つ同時は無理だからな」
「えっ!?そ、それって…」
「嫁に貰うのに指輪の一つも贈れないようじゃ失格だからな、とは言え貧乏なのは事実だし、子悪魔こそ二つ同時に贈れないような甲斐性無しで本当に良かったのか?」
「ええ、もちろんですよ。○○さんは私が絶対幸せにしますね」
そう言って子悪魔は段ボールを放り出すと抱き付いてきた。
「そのセリフは本来男が言う物なんだけどなあ…」
「細かい事はいいじゃありませんか」
そう言ってさらに強く抱き付いてくるので、服の上からではわかりにくいが、意外と大きい胸が当たってくる。
「○○さん、これからは何があっても、どうなろうとも離しませんからね」
そう言ってにこりと小悪魔は微笑んだのだが、しかし、一瞬笑みとは違う何かを〇〇は見た気がした。

>>up0985




あ。やぁ、こぁ。
うん、そう。魔理沙のお使い。
はは、気遣ってくれてありがと。
でも魔法を習う代償だし、これくらいのおつかいはしないとね。
……変なことされてないか、だって?
ないない、あの人に限って――まあ、たまに実験台にされかけるけど。
そんな危ないところよりうちに?
あー……有り難い申し出だけど、それは無理かなぁ。
ああ、違う違う!泣かないで!
こぁが駄目なんじゃなくて……パチュリーさんが、ね。
お使いの中身がアレなせいだろうけど、何かと絡んでくるからさ。
前なんていきなり捕縛魔法ぶっぱなされたし。
ちょっと苦手だったり……ごめんね?
うん、うん。
今度寄るときは紅茶ごちそうになるよ。
それじゃあ、またね。

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