■美鈴1
俺、美鈴と屋台で飲んでいたんだけど、しばらく談笑していたら美鈴がウィンナーを取り出したんだ。
なんでも「私特性なんです。とても美味しいんですよー。」とのこと。
それなら是非いただこうと、そのウィンナーを齧ったんだけど、塩辛いというかな、どうにも味が濃い。あまり美味しいとは言い難かった。
それでも折角美鈴が作ってきてくれたんだからと、ちょっと表情を歪ませつつ「美味しいよ」とコメント。
まぁ流石に隠し通すのには無理があったのか「これ単体だと塩辛いだけでしょう?」とクスッと笑われてしまった。
流石に少し恥ずかしかったので俯いていたら「でも、お酒のツマミとしてなら丁度良い辛さだと思いませんか?」と言われた。
半信半疑ながらもう一度齧らせてもらい、日本酒で流し込んでみたのだけど……。
成る程これなら大丈夫……というよりも寧ろ個性的ながら癖になりそうな味だった。
「美味しいよ、美鈴。」と今度は心から感謝の言葉を発すると、美鈴も嬉しそうに微笑んでくれた。
しかしちょっと食べた事が無い味で、しかも手作りだということだから、材料を尋ねてみた。
するとちょっと可笑しいような顔をして「いやですね、○○さん。ウィンナーの材料といったら豚に決まっているじゃないですか。」と駄目だしされた。
そういえば確かにウィンナーは豚肉で作るものだった。しかしこれはどう考えても豚肉には思えないのだけど……。
「いえいえ、確かに豚ですよ。特殊な豚なんですけど、まぁ人間の方は普段口にはされないでしょうから、ご存じないかと。」
なるほど種族の違いがあるとそんなこともあるものだな。と納得した。
「最近あまりにも行動が目に余ったので、ちょっと間引いたんですよ。
いやいや、発情期だったんでしょうかね? ぶひぶひと五月蝿かったんですよ……あの雌豚。」
とのことだった。いやはやまったく、動物の発情期にも困ったものだ。
その後もとりとめないことを話し合いながら、時間を潰していった。
帰り際にふと思い返して「またあのウィンナー食べさせてくれるかな?」と言ってみた。
さっそく癖になってしまったようである。肯定の意が返ってくると思って疑っていなかったのだけど、返答は意外な事に否。
「……あんな豚出てこないに越した事は無いんですよ? ○○さん。」と、睨まれてしまった。
流石に長きを生きた妖怪だ、その視線から感じる重圧感にすっかり怯んでしまった。するとハッと気付いたように美鈴が
「す、すみません、恐がらせちゃいましたか? でもそれほど迷惑なんですよ、あの豚が出てくるのは!」と、アセアセと謝罪してきた。
そこまで恐縮されるとこちらが困る。いやいや、美鈴が悪いんじゃないよ、俺がちょっとぶしつけ過ぎたんだ。とこちらも謝罪。
それでもやはりもう一度食べたかったなー、と惜しんでいると。
「……そうですね、でも万が一また豚が出てくるようでしたら、○○さんの所へお届けしますよ、あのウィンナー。」
と約束してくれた。やっぱり美鈴は良いやつだ。ありがとうな、美鈴。
「いえいえ、あの豚の退治は私の役目みたいなものですから、当然のことをしているだけですよー。」
そんな謙虚なところも好きだ。どうにも美鈴に惚れ込んでしまっている俺なのだった。
さて今後の約束も取り付けてほくほくと里へ帰ってみると、なにやら里の皆が騒いでいた。
何かあったのか? と隣人に尋ねてみると「あぁ、どうやら××ちゃんが帰ってこないらしいんだ。」と教えてくれた。
××ちゃんは酒屋の娘さんだ。よく利用する酒屋だったのでその関係で親しくしてもらっていたのだが……。
まさか妖怪に襲われてしまったのだろうか? 幻想郷ではよくあることとはいえ、知人ともなれば不安にもなる。
なんとか無事、帰ってきてくれると良いのだが……。
1スレ目 >>666
「あ、○○さんおはようございます」
「おはよう、美鈴」
おれは今、紅魔館住み込みで働かせてもらっている。
「しかし毎朝毎朝よく続きますねー」
そう美鈴が言っているのはおれが日課のジョギングのことだ。
別段褒めることではないが紅魔館では美鈴以外、積極的に運動をしたりする人も妖怪もいないので美鈴が関心するのも無理はないのかも知れない。
「そういう美鈴だって毎朝太極拳やらなんやらおれ以上にやっていじゃないか」
「ははは、私は年季が違うんですよー」
そう言いながらアチョーとポーズをとる、ジョギング前の楽しいひと時。
その後美鈴と分かれた後紅魔館をぐるりと回るジョギングをしていると、足をすくわれるように転んでしまいボキリと嫌な音がなった。
思わず悲鳴を上げると美鈴が悲鳴を聞いてか飛んできてくれた。
「わ!○○さん大丈夫ですか!?」
そう言いながら冷静に折れた箇所にあて木をし包帯を巻いてくれる。
「動かないでくださいね、今から気を送り込んで治療しますから」
そう言うがいなや、折れた箇所に手のひらをかざして意識を集中させる。
「凄い、もう全然痛くないや」
美鈴に治してもらった箇所は先ほど折ったばかりだというのにもう痛みがなく、いつも通りに動かすことができた。
「ふふふ、どんなもんです」
そう笑みを浮かべ得意げに胸を張る美鈴、思えばこの時から疑うべきだったのだ。
その日を境におれは劇的に怪我をする回数が増えていった。
そしていつもいの一番に駆けつけてくるのは美鈴だった。
階段を転げ落ちてしまった時も、バルコニーから落ちてしまった時も、はてまでは図書館の本が雪崩のように降りかかってきたときも、最初に駆けつけてくれたのは美鈴だった。
そして最初に骨折を治してくれたように気を送り込み治療してくれた。
「ははー、私が近くを通りかかっててよかったですねー」
外や館内ならともかく、図書館の奥での事故もなんで直ぐに駆けつけることができたのか疑問には思ったが。
結果的に美鈴のお陰で助かっているので深くは考えなかった。
そうした日が何日か続いたころ、体の異変に気がついた。
美鈴に治してもらった箇所が変になったのではなく、むしろ調子が良すぎるためだった。
しかしいくら調子がよくても石を砕けるようになったり紅魔館の塀を飛び越えられたりするのは、調子とかの問題ではなく明らかに異変であった。
さすがにこれはおかしい、誰かに相談しなければ、でも誰に?パチュリー様?咲夜さん?はたまたお嬢様?
いやいや、やはり美鈴だろう、紅魔館では特別仲がよいし、なにしろここ数週間で美鈴には随分と世話になっている、きっと美鈴ならこの体がどうなっているのか突き止めてくれるに違いない。
そう思い美鈴の元へ向かう。ともかく美鈴に会えば全てが解決する、そんな気がした。
「なるほどなるほど、それは大変ですね」
そう言いながらも大して大変そうな態度を見せずに美鈴はうなずいた。
実に能天気な態度であったが、そんないつも通りの美鈴を見て不安が少し解消される。
「でも大丈夫ですよ、その異常の原因は私ですから」
胸の前でパンッと手を打ち合わせながら美鈴が言う、満面の笑みで。
解消された不安が大きくなって返ってくる。…なんだって?
「ですからね、その原因は私にあるんですよ。○○さんここ何日かたくさん怪我をしているでしょう?あれは私がやったんですよ」
どういうことだと美鈴に詰め寄る。
場違いにもエヘヘーと頬を掻きながら恥ずかしそうに美鈴は説明を始める。
「私の種族って幻想郷には私以外はいないんですよ、紅魔館の皆さんは優しいですし幻想郷も気に入っているんですが、やっぱり種族的に一人っていうのは凄く寂しいんですよ」
恥ずかしそうに、微笑みながら美鈴は続ける。
「それで○○さんには悪いと思ったんですけど、私と同じ種族になってもらおうと思いましてね?」
そう言う美鈴の言葉が理解できずに立ち尽くす。
おれが妖怪になる?
「わたしたちって仲もよいですし、○○さんも紅魔館は気に入っているんでしょう?妖怪になればずっと一緒にいられるんですよ」
それに私とも…とつぶやき、美鈴が近づいてくる、そして首に手を回し耳元で甘くささやく。
「だから…わたしと同じ種族になりましょう?」
その瞬間おれは美鈴を突き飛ばしわき目も振らずに駆け出す。
どこへ逃げる?どこでもいい、ともかく今はここを離れなくては。
「あいたたた、油断しちゃいましたか」
そう言いながらも大したダメージもなく美鈴は立ち上がり湖に視線を走らす、その先には湖上を走る○○がいた。
「うむむ、思っていたより妖怪化が進んでいるみたいですね、これなら直接背骨あたりを折っても平気かな?」
もう一回でも気を注ぎ込まれたら完璧に妖怪となってしまうまでに、そして美鈴の打撃を直接受けても死なないほどまでに、○○の体は妖怪化していた。
振られた形になっちゃったけど、どの道その体じゃ人間として生活するのはもう無理なんだから、完全に妖怪になっちゃったほうが幸せですよね?○○さん?
それにわたしと○○さんの仲なんだし直ぐに仲直りしていつも通りになりますよね?そしてそれがずーっと続くんですよ。
そう美鈴は思い、納得し、笑みを浮かべ湖上を走る○○を見つめる。
「今行きますからね、○○さん♪」
鈴の音のような軽やかな声で、そうつぶやき、駆け出す。
紅の髪をなびかせながら、満面の笑みを浮かべて。
>>up0592