■咲夜1
いつの事だったか――――。
「あら、○○、それは?」
不意にかかる、紅魔館のメイド長、十六夜咲夜の声。
「!? あぁ、咲夜さん……」
「○○、その傘のマークの下に名前が書いてあるのは何かしら?」
咲夜さんが指している傘のマーク。
ほら、好きな人の名前と、自分の名前を傘の下に書くやつがあったろう?
それだよ。
まあ、それなんだけど……。
「何々……、……何で、私と○○の名前が書いてあるのかしら……?」
「い、いやぁ〜、あ、はははははは……」
見られたのだ。それを。
別に、深い意味は無かった。誰でもする軽い妄想と一緒。
小学生が好きな苗字の名前を自分の苗字と変えて、ニヤニヤするのと一緒の軽いもの。
字面を見れば軽いけど……、実際は……
「ふふ、案外可愛いところもあるのね。いつも完璧に振舞ってるから気が付かなかったわ」
「さ、咲夜さん!!」
いつもは見せない完璧で瀟洒な表情とは違う、おどけた年相応の少女の表情。
見られた事なんて、彼方に飛んでいた。
「で、あなたのそれは告白と受け取ってよろしいのかしら?」
先ほどと、というよりいつもと変わらぬ様子で尋ねる咲夜さん。
そんな、風に聞かれても雰囲気も何もあったもんじゃないですよ……。
「そう……、ですね、はい。僕は咲夜さんのことが好きです」
相手に合わせるように、何事も無い風に答えを返す。
変なポーズや見栄は、もうこの際無意味だろう。
だったら――――。
「そうね……、私もよ。私もあなたのことが好きよ」
僅かだが、本当にごく僅かだが、頬に紅みがさしている。
「じゃあ、両思いですね」
「そうね、恋人同士ね」
二人して笑いあう。
短い時間。
だけど、この時だけは本当に幸せだった。
この時は――――――――、
「ぐ――――ぅ、あ――――ぁ」
腕は血まみれ。
神経が運動を停止させるほど大きな傷ではない分、余計に痛みが残っていて苦痛を助長させる。
「あなたが――悪いのよ……?」
ザクッ
「がっ、く、ぅ」
「何で、パチュリー様と楽しそうにお話していたの?」
ザクッ
「っ、くっ、つぁ……」
「昨日はお嬢様と、一昨日は美鈴だっけ?」
ザクッ
「く、や……め……」
「ないわよ?」
ザクッザクッザクッ
「あなたが悪いんだもの。恋人って言うのは、好きな人しか見ないものなんでしょ?」
「…………」
ザクッザクッザクッ
「これはお仕置きよ。困った彼氏さんへのお仕置き」
ザクッザクッザクッ
「次もこんなことがあったら」
ザクッザクッザクッ
「間違えてあなたのことを×××しちゃうかもしれないわ……?」
手に持った血濡れのナイフで執拗に僕の体に何かを刻む咲夜さん……。
視界の脇に見えた傷は。
あの日の――――。
ザクッ
>>up0510
気がついたら毎日、体が温かいんだ。布団とかのぬくもりじゃなくて人肌の暖かさなんだ。
しかし、あたりを見回しても誰もいない。
最近は、買い物に行くと咲夜さんが必ずいるんだ。
まるで、先回りしているように・・・・
部屋も、咲夜さんみたいなにほいがするんだ。しかも、うちにあった包丁がナイフに変わっているんだ・・・
これって、咲夜さんが使ってるやつみたいに見えるんだ。
さらに、このごろなんか咲夜さん?みたいなかほりに慣れたせいで、ほかの女性が近づくと嫌悪感がするんだ
今日、咲夜さんが家にきたんだ。やっぱり落ち着く。
話によると、紅魔館が誰かによって滅ぼされたらしい。咲夜さんは何とか生き残ったみたいで、目立たない僕の家に亡命してきた。
さらに、数日後マリサ や霊夢 が毒を盛られたらしくえーりんのとこで入院。
そのえーりんの永遠亭でさえ、時が止まったみたいに動かないらしい。
永遠亭は今、もこーさんが原因を調べている
怖くなって、咲夜さんと僕は八雲家に行った・・・・
しかし、誰もいなかった・・・・
それから、何ヶ月かたって
幻想郷には僕と咲夜さんしかいなくなった・・・
1スレ目 >>681
「明日も来なさい、良いわね?」
お嬢様は顔を赤くしながら、○○を抱きしめる。
ハグくらいお互いにどうという事では無いのだろう。
私にもやってくれれば良いのに、なんて事をいつも通りに思っていたのに。
−−誰に?
そんな言葉が頭を走る。
馬鹿馬鹿しい、
お嬢様に労ってもらいたいと思うのは従者として当然の欲望だ。
その対象を問う様な思考が浮かぶ事自体が異常だ。
ああそれなら、
お嬢様が運命を弄った?
疑う事自体がタブーだが、
まるで私が……ああ、駄目だ。
何で○○の事が思い浮かぶんだ。
私はお嬢様の事を考えていたはずなのに。
○○に抱きしめて貰いたい、愛して貰いたいと思ってしまった。
従者なのに、主の想い人を欲しがるなんて……失格だ。
かといって内心を誰かに読まれるなんて事は有り得ない。
この気持ちが例えばお嬢様の運命操作による物だったとすれば、
それは何か考えがあっての事だろう。
……しかしお嬢様ならそういう事は私に一言伝える筈だ。
「はぁ……」
だとしたら、自分自身の感情、か……
ところで美鈴に差し入れをする途中だったが、
珍しく美鈴は居眠りしていなかったので、
「どうしたんですか?咲夜さんが溜息なんて珍しい」
「気配を感じて起きてた振りをする貴女に呆れたのよ」
「う……」
……って否定しなさいよ全く。
お嬢様は明日も来る様に言っていたし、
○○も笑顔でそれに答えていた。
お嬢様の笑顔が見れる事が最大の喜びだったのに、
今はそれに妬ましさすら感じてしまう。
そうだ、○○なんてお嬢様に相応しく無いんだ。
それを、お嬢様に分かって貰えれば良い。
毎日毎日、
目の前でじゃれあう様に苦汁を飲みつつ、
天狗に賄賂を送り○○の悪評を書かせた。
賄賂なんて必要無かったかもしれない、
普段からパチュリー様が広告に使ったり、
外聞に疎い紅魔館の面々と、それを喜々として語る天狗は案外仲が良かった。
賄賂と言っても、魔法薬一つで引き受けてくれた。
パチュリー様に聞いた所、
「あぁ、あの薬ね」と、
暗い笑みを浮かべながら渡してくれた。
ところで○○だが、
元々こんな所に毎日通う身だ。
普段は信じやしない癖に、
こういう時に限って里の人間は新聞の内容を信じたようで、
○○は里を追い出され、ここに落ち延びて来た。
その様を見たお嬢様は喜んで迎え入れようとしたが、
私が、口添えした。
「……しかしお嬢様、○○に関してこんな物が」
悪評の書かれた新聞記事。
「何よこれ……○○はこんな事しないでしょ?」
「しかし24時間私達が監視している訳ではございません。
謂れが立つからには、少なからず理由があるのでしょう」
「で、でも……」
「今は様子を見ましょう。
お気持ちは分かりますが、ここで○○を受け入れては人間からの評価に響きます」
お嬢様は暫く考えていたが、
やはり妙案は思い浮かばなかった様で私に答えを求めた。
「咲夜、何か方法は無いの?」
「一番早い方法は運命操作でしょう」
「却下、他人に迷惑を掛けたく無いわ」
「では○○を眷属にしてみては?」
「うーん……そっか、うん。
仕方ないわね、それを○○に選ばせるわ」
○○ならあるいは、とでも思ったのだろうか。
お嬢様の事は私が一番知っているし、
人間の事も私が一番知っている。
相いれる事なんて無いのに。
「紅魔館側からの解答だけど」
お嬢様、パチュリー様、
私と美鈴、小悪魔に今回は妹様までが食堂に集まっていた。
無理も無い、
知り合いを泊めるのとは訳が違う。
○○を吸血鬼として迎え入れるか否かを問うのだ。
主要な面子が揃う。
「私の眷属になるのが条件よ」
「逆に、受け入れるつもりなんだな」
「ええ」
無理難題では無いだろう、という意味で、
誰もが○○に此処に住んで欲しいという意味で。
そういった半ば魅了の魔法に近い威圧が○○を包んでいた。
懇願するようなお嬢様と妹様の表情から○○は条件を飲むかと思ったが、
私の読み通り、○○はそれを断った。
多くは語らなかったが、
短い人生の決断をそう易々と決める事は出来まい。
ただ、自らを否定されたお嬢様は、
涙ながらに○○を追い出したのだった。
全て、上手くいった。
後は私は私でいれば良い。
暗闇に一人で歩く○○を拉致する、
時間を止めて、紅魔館に連れ帰り、
新しく作った扉の無い部屋に閉じ込める。
「え……咲夜さん?」
時間を動かした所で○○は状況を読めず、
「お嬢様の誘いを断るなんて、許せない」
「え……」
私は淡々と台詞を読み上げた。
○○の足に鎖を付けベッドに繋ぐ、
「何を……!」
「大丈夫」
額にキスをして部屋を出る。
扉が無いので逃げる事は出来ないが……
まあ、精神的な束縛だ。
時間を止めたまま行動しなくては、
いくら○○を閉じ込めたとはいえ、朧げながらお嬢様はその気配に気付いてしまうだろう。
捕まる前に事を致すしか無い。
「ブン屋に渡していた魔法薬?」
「はい、少し譲って頂きたいのですが」
パチュリー様は司書に目配せをして、
「駄目、大体理由は分かるし、貴女が使うと危険よ」
時を止めて、口にナイフを挟む。
「む……」
「失礼しますパチュリー様、手段を選ぶ暇が無いのです」
するとパチュリー様は司書に合図を送り、
毒々しい薄桃色の薬が入った瓶を持ってきた。
「待ちなさい、薬の説明だけは聞きなさい」
「その薬は、自傷した妹様の血液から作った魔法薬。
吸血鬼の隷属の契約と同じ効果があるわ」
しかしそれでは、
○○は妹様の物になるのでは?
「だけど自分に対して惚れてくれないと惚れ薬には使えないから、
主となる対象の血液を一滴垂らして、それから相手に飲ますのよ」
「わかりました、ありがとうございます」
「あぁ、欠点だけど。
効果が主から対象への情の深さで変動するのよ、だから間違っても……」
パチュリー様は怯えていた。
そんなに私は恐ろしい表情だったか、
いや、表情から内心を読まれたか。
パチュリー様が魔導書を取るより早く私は図書館から退出し、
時間の流れが変わった扉の中からは音が返る事は無かった。
早速、指先を噛みちぎり血液を瓶に注ぐ。
たちまち薬は透明のさらっとした液体に変わる。
ああ、食事に混ぜやすくなってるのか。
○○の部屋に戻り薬を混ぜた食事を渡す。
「食べなさい」
「え……」
「食べなさい」
しかし○○は何か感づいたようで、
中々それを口にしようとしなかった。
私とスプーンを交互に見る姿に苛立つ。
ああ、もう面倒臭い。
「食べさせて欲しいの?」
「え……いや、違います」
「遠慮しなくて良いわ」
時間を止めて、
私が頬張った食事を舌で押し込む。
「ん……む……!」
飲み込んだら再び時を止めて押し込む。
次第に○○の表情が砕け、
抵抗もなくなり、口に入る物を力無く飲み込むだけになった。
「ずるい」
食事が終わった時、既に○○は正気を失っていた。
それでも魔法に逆らってるつもりなのか、
暗い目で真っすぐ私を見据え、
舌を噛んで意識を保っていた。
「お嬢様をたぶらかしてる癖に」
私に簡単に靡いてしまうじゃないか。
「ずるい」
あんなに愛してるのに、
私はあれだけ尽くして来たのに、
「ずるい」
暖かい太陽の匂いも、
孤独に耐える心も、私には無いのに。
「こんなにかわいいなんて、ずるいわよ……」
私に振り向いてくれないなんて、
私から奪っていくなんて。
「大好き」
ゆっくりと抱きしめ、唇と唇を再び合わせる。
たっぷりと私を認識させたが、
生意気にも息を荒げ抵抗していたので、
薬を注射器で一回分確保し、
残りを○○に飲ませた。
○○は最初、うわ言の様に私の名前を呟いていたが、
薬を全て飲んだ所で眠ってしまった。
少々効き過ぎたか。
しかしこれで○○は私の物だ。
……私無しでは生きる事が出来ないなんて、素敵。
さあお嬢様、貴女も、
「あの頃に、戻りましょう?」
振り向いた先には青ざめた表情で私を見つめるお嬢様が居た。
何、いくら隔離した部屋でも「○○にたどり着く」ように自分の運命を弄れば私の能力を抜ける事が出来る。
注射器を後ろに隠し、
ゆっくりと近づくが、お嬢様は恐怖心を顔に出したまま後ずさる。
「さ、咲夜……」
「無駄です」
運命を弄ろうとしても、
私は何もしないから、
何も未来は変わらないのだから。
白黒の世界、注射針が白い肌に吸い込まれ、
全ての運命は、未来を失った。
そう、未来は何も変わらないのだ。
○○は誰もが望んだ通り、
ここでしか生きられない体になり、
お嬢様はまた私しか見えなくなった。
これで元通り。
他人に依存されるのは気持ちが良い。
「大好きです」
二人を抱きしめる。
かわいいかわいい私の人形。
もはや私以外には価値を見いだせないガラクタ。
もう二人に、未来は見えないのだから。
ジョバンニ氏
――きっと、貴方は。
私がこんなにもふしだらな女だなどと、
思いもしないのでございましょう。
毎夜貴方を想い耽り、それだけでは飽き足らず。
よもや時を止めている間に、貴方を"愛して"いるなんて。
――きっと貴方は。
私がこんなにも嫉妬深い女だなどと、
思いもしないのでございましょう。
貴方と話す見知らぬ女に妬くだけでは飽き足らず。
時を止めている間に、密やかに"掃除"しているなんて。
嗚呼、嗚呼。
早く私の想いに気付いて下さいませ。
早く、早く。
そうでないと、私は、狂ってしまいますわ。
「咲夜ー?お茶をいれて頂戴」
「はい、お嬢様、只今お持ちいたします」
早く、早く――
4スレ目>>219
洗濯物を干したある日、
慣れない匂いを嗅ぎ取って、匂いの染み付いたシーツに顔を埋めてみた。
臭い、でも、知らない匂い。
◯◯の、男の匂いとはこういう物か。
私はそれを悪臭と思って、思ったのに、
肺一杯に、その匂いを吸い込んだ。
外の世界の、メイドが発祥した国では、
メイド長よりも執事の方が位が上だとかなんとか。
とりあえず、何事も名目という物は大事であり、
◯◯を紅魔館に雇い入れる時も職種をどうするかで悩んだ物だ。
妹様の世話をするにしても、執事とすれば私以上に外交員的な仕事をする事になるし、
かといって使用人なんかにすれば妹様の面子を悪くする。
幻想入りした人間を妖怪から守るにはなんらかの組織に所属させるしかないが、
案外これが難しいものなのだ。
そして◯◯は、方々の体裁を守る為にメイド長として雇われる事になった。
とはいえ私の様に表立った仕事をする訳ではなく、
あくまで名誉職といった意味合いが強いのだが。
「それでも貴方のする事は私の、引いては紅魔館全体の責任に繋がるんだから、
勝手な行動や迂闊な振る舞いは控えるのよ」
「はぁ・・・」
当の本人がこれだからどうしようもない。
やはり目を掛けて色々と教え込まなければいけないか。
◯◯は妹様の世話をする。
とはいえ下着を用意したり湯浴みをしたりといった事は私の仕事のままである。
さすがに彼にそういう仕事をさせる訳にはいかない。
言わば話し相手、遊び相手といった所か。
たまに彼の作った料理やお菓子に、妹様が私にくれないような感想を述べるのは妬ましくなる。
妹様は思ったより深く◯◯に入れ込んでいるようだ。
やはり、よくない。
◯◯はあくまで、ここで働く身である以上、
関係が深くなりすぎては、いけない。
ただそれだけの筈なのに、
私の心にはなぜか焦燥感が満ちていた。
妹様の着替えの服を持って行った時、
二人は深く、熱くキスしていた。
生唾を飲み込み、時を止めたくなるのをぐっと我慢して、
「◯◯、先に私の部屋にいってなさい」
とだけ言って、やはり時間を止め直し部屋から追い出した。
「妹様は・・・どういうつもりです」
「何も・・・?咲夜がお姉様にやってた事じゃない」
経験がなくとも、その言葉は確証を掴んでいた。
「私はあんな事しません!」
「じゃあ何が問題なの?」
主人が従者を愛するから?
それなら私はお嬢様を諌める事になる。
じゃあ、何。
なんでいけないの、何が私に不快感をもたらすの?
「別に私は・・・◯◯にそういう感情を持ってないよ」
ああ、それなら。
なんて喜ばしい事なのに、殺意すら沸いてくるの?
「咲夜、あなたが」
笑い事であればどれだけ良かった事か。
「◯◯の事を好きなんでしょう?」
つまらない冗談だった。
果たして私の部屋で◯◯は待っていた。
妹様からそう聞かされたのかそれとなくそわそわしている。
「あのね◯◯」
「はい・・・」
「一応貴方は、お嬢様に仕える身なんだから、
色恋沙汰とか、妹様と起きてはいけないのよ」
「はい、しかし」
そこで彼は一旦沈黙し、発言の許可を求めた。
「何かしら」
「実はあの時、咲夜さんが来る事は分かってたんです。
それで妹様が、咲夜さんの気持ちを確かめるって・・・」
それに触れた唇が、とても汚らしく見えて、
薄く漂う甘い香りは、心の底を見透かしたようなあの言葉を思い出させた。
顔を両手で捉えて、唇に吸い付いた。
緊張していたのはどちらか、
唇の間に引いた糸と乾いた唾の匂いは、
私の正体不明の欲望を満たしてくれた。
「やはり彼は、私の目の届く所に置くべきでしたね」
そして私は、事の一部始終をお嬢様に話した。
執事なんて、私の手が及ばない権限を持っては、
あのまま妹様に誘惑されていたに違いない。
「ええ、やっと貴女の意図が掴めたわ」
お嬢様はそう返した。
「あの子をここの住人として迎え入れる時、
真っ先に職種、いえ、階級の話なんて繰り出したのは咲夜、貴女よ」
ああ、そうだったっけ。
「ですがお嬢様、それが私の意図とどう関係するのですか?
そもそも此処に住み着くならやはり仕事は必要ですよ」
「私はパチェに仕事を与えているかしら?
私はあの子をメイドだなんて思った事は一度も無いわ。
彼を自分より下に見たがっていたのは咲夜、貴女だけよ」
「そんな事は・・・」
「現にフランは、あの子と謀って貴女をからかったのでしょう?」
「それは・・・」
ああ、嫌だ。
お嬢様が大好きで、私は、
それを崩したくなかっただけで、
?生唾は飲み込もうとしても固かった。
「その感情が悪いとは言わないわ。
問題は貴女が素直にならない事よ」
「素直に・・・」
あの子を、思いのままに・・・?
ああ、ならば、
あの匂いを独占したい。
あの子を私の臭いで塗り潰したい。
それが、私の望み妹様に嫉妬でもしてたの?
私が、私の望みは・・・
「ごめんね◯◯。上手くいかなかった」
「気にしなくていいよフラン。
僕だってそりゃあ、咲夜さんが好きだしさ」
「でもやっぱりさ・・・大変でしょ?今だって」
「涎臭い?」
「うん、咲夜のだよね・・・?」
「うん・・・」
「家人を勝手に位付けて、マーキングして、
まるで本物の犬ね。その内小便でも掛けられるんじゃない?」
「フラン」
「あぅ・・・ごめんね」
人の体は、苦くて、渋くて、
決して良い物じゃない筈なのに、
その味を、匂いを、
私が犯していく事が嬉しくて。
「咲夜さん・・・もう指ふやけちゃってます」
「ん・・・待って、まだ・・・妹様の臭いが残ってる」
しょっぱい指の味、舌いっぱいで味わって、
いくら時間を止めていても、これでは◯◯に嫌われそうだ。
「ああ、そうね」
「・・・どうしたんですか?」
「ううん、何でも無いわ」
そうか、このまま、
噛み千切ってしまえば、ずっと、
ああどうせなら手足から落としてしまえば、
この子はもう誰にも会えないし、
私以外の臭いがつく事は無いんだ・・・
そんな事を考えて、
指を加えた歯に、ゆっくりと力を入れた。
ジョバンニ氏
――っ痛ー。
いくら少量とはいえ、血が減ると感覚が狂っていけないや。
……あ。
み、見てたんですか咲夜さん!?
ああ、恥ずかしい……
いやだって、いいトシした大の男がすっ転んでるなんて……
へ?あ、いいですよこれくらい。
図書館に入り浸る条件なんですから。
――いいんですか?
お気遣いありがとうございます!
咲夜さんの料理、美味しいから俺、大好きなんですよ。
楽しみにしてますね。
――あ、さっき俺が転んでたこと、絶対に秘密ですからね?
特にパチェ……リー様には。
何ですかそのにやけ顔。
まさか誰かにバラすつもりじゃ……ちょっと、咲夜さん?
4スレ目>>319
「ほら、○○起きなさい」
「ん…おはよう咲夜」
ええ、おはようと言いながらカーテンを開ける、朝日が差し込んだ。
咲夜に近づいて軽くキスをする。咲夜と結ばれてからは日課と化していた。
「ふふ…朝食の準備があるから先に行くわね」
もう一度キスをし咲夜は部屋を出て行った。
俺も急いで着替えをし、後を追った。
俺は紅魔館に住み込みで働いているがこれといって決まった仕事は無い、手伝いを頼まれたらそれをやるというものだ。
この日はパチュリー様に頼まれて図書館の整理をやる。
一通り片付いたところでパチュリー様に声をかけられた。
「○○今日呼んだのは本の整理のためじゃないのよ」
さんざんやらせておいてこの文句には少々脱力してしまった。
が直ぐに身構える。本の整理以外の頼まれごととなると魔法の実験台くらいしか思いつかないからだ。
それで以前痛い目にあった。その時は咲夜さんが駆けつけてくれて事なきを得たがその後が大変だった。
いつも冷静な咲夜が本気で怒りパチュリー様に襲い掛かったからだ。
俺自身は戦闘時の衝撃で気絶していて事の顛末は知らないがお嬢様がなんとか場を収めてくれたらしい。
その件以来俺と咲夜は付き合い始め、めでたく今は結ばれた。もう紅魔館では笑い話になっているが咲夜がこの話で笑ったことはなかった。
「実はね咲夜のことなんだけど…」
とパチュリー様が話し始める。
なんでも最近少し変なところがあるとか。
具体的に聞いてみると俺の使用済みの食器や衣類なんかがそのまま洗い場行きではなく咲夜が個人的に持ち出していることや。
カバンに荷物を入れて旅行支度をしているだの色々聞かされた。
最初は話半分に聞いていたものの少し不安になり咲夜に聞いてみることにした。
しかし探せども探せども咲夜には会えなかった。
いつもは毎日これでもかと言うほど廊下ですれ違ったりお茶を差し入れてくれたりして会ったのだが今日はさっぱりだった。
思えば今までも少しおかしかったのだ。紅魔館は結構広いそしてお互いに動いていればそんなしょっちゅう会うのがおかしいのだ。
そうは思うのだがやはりあんな話を聞かされた後では気になった。
その夜一日の仕事を終えて部屋に戻ると咲夜がいた。
お嬢様は人間で言う夜型で咲夜もそれに合わせて生活しているが、俺と結ばれてからは週に何度かはお休みを貰えるようになったらしく夜は一緒に過ごせるようになった。
しかし今日はその日ではなかったはずだ。不安が膨れ上がる。
「咲夜?今日はお嬢様といる日じゃ…」
そこまで言って咲夜がぽつりとつぶやく。
「○○、私のこと好き?愛してる?」
「え?ああ、それはもちろん。それより咲夜、大丈夫か?」
「本当はねちゃんと時間をかけて話し合ってからやろうと思ったんだけどね、パチュリー様に感づかれちゃったみたいだからもう今夜やってしまうことにしたの…」
ぶつぶつと話しかけてくるが要領を得ない、そもそもこちらの声が届いていないようだった。
不安は確信になった。
「咲夜とりあえずパチュリー様のところへ行こう」
そう言い手を握ろうとしたところで咲夜の姿が消えた。
「お休みなさい、○○」
背後からそう声が聞こえた途端意識が遠のいた。
「ほら、○○起きなさい」
そう声が聞こえて目が覚める。
目を開けて天井を見る、木製。
体を起こして周囲を見る。ログハウスのような壁。暖炉が壁の一角にあった。
紅魔館は石造りだった、ここは明らかに紅魔館ではない。
カーテンを開ける音がしてそちらを見る。いつもと変わらぬ咲夜がいた。
「咲夜!ここはいったいなんだ!」
そう言いながら咲夜に近づく、そして外の光景を見て目を疑った。
地面には青色の草が生え、遠くに目を向ければきらきらと光る森のようなものが見え、山は紫色をしていた。
明らかに幻想郷ではない、地球かどうかも怪しい。
その光景を見て動けずにいると咲夜がキスをしてきた。
「大丈夫?外は寝る前とちょっと違うかも知れないけど安心して?私はなんにも変わってないから」
もう一度キスをされる。
でもここまで大変だったのよ?どれくらい時間が経ったのかも忘れちゃったし。みんな私たちを探すし。でもそれもおしまい、もうあの頃の連中はみんないなくなったから。
その言葉をぼんやり聞いてこの世界が元の世界から遠く離れたこと、もう戻れないことを悟った。
目の前にいる咲夜を見下ろす。外と違って何一つ変わらず笑ってくれる咲夜。
思わず膝を突いて咲夜の体に顔を埋め抱きしめる。
「あら○○ったら甘えん坊ね」
そう言いながら頭を撫でられる。
咲夜だけが元の世界を感じさせてくれた。
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