■萃香1

○○は嘘を吐かない。
私は、そこに惹かれた。

○○は被害者だ。加害者は、たぶん紫。
また食料用だとか理由をつけて暇つぶしに人間を「輸入」したんだろう。外の世界から。
私がいつもみたいに神社の縁側で酒を飲んでまったりしているときに、いきなり空から落ちてきた。
それが○○。後に、外の世界では一人暮らしをしていた、と言っていた。
幻想郷では空から人が落ちてくるなんてことは日常茶飯事だが、興味を持った私は近づいて声をかけた。
「大丈夫かー?」と顔を覗き込んで話しかけると、○○は少し驚いたように目を見張って私に言った。
『・・・ちっちゃくて可愛い女の子だ』って。
私は一瞬呆気に取られてしまった。何を言い出すんだろう。
でも、嘘は言ってなかった。私は感じた。○○の本心からの言葉だと感じた。
それが、私と○○の出会い。よくわからない知り合い方をしたと思っている。
その後はここが幻想郷であるという事と、○○が迷い込んだということの説明。
そして霊夢に○○を紹介してやった。このくらいやれれば十分なはず。
○○は『かわいい女の子にこんなに良くされるなんていい夢だ』って私の方を見て、笑った。
また嘘は吐いてない。それに心からの笑顔。笑顔が少年みたいで、少し可愛い。
ロリコンなのかとも考えたがかわいそうなので言わなかった。

・・・認めたくはないが、今の人間は基本的に嘘を吐く生き物だ。
嘘を塗り重ねて、自分の身を必死に守って生きている。
そして私達鬼は嘘を嫌う。嘘を吐き続ける人間とは一定の距離を保ってきた。
それなのに○○は違った。○○は嘘を吐かない。
たぶん、○○は自分を偽らない、子供のような素直な心を持っていたんだろう。
それが私の興味を惹いたのだと思う。
あの時の事を、○○は『当初夢だと思った』と言っていた。
夢だと思ったのは、私も同じ。
こんなに素敵な人間が空から落ちてくるなんて、普通考える?
普通は鬼でも思わない。はず。

それから、神社に仮住まいさせてもらう事になった○○。
帰る手はずを整えるのは霊夢。○○には何時まで居ても構わない、と言っていた。
○○は申し訳無さそうに、また一方で喜んだように霊夢に礼を言っている。
そんな○○と私の距離は近づいていった。
ある時は○○と酒を飲んでみたい、と思う一心から人を萃めて宴会を起こしてやった。
霊夢には怒られたが○○はあまり酒に強くないという事を知れた事と、
酒に潰れた○○を介抱できたからよしとしよう。
私が慣れない膝枕なんかしてやろうと、縁側に腰掛けてぽんぽんとももの上を叩いてやると
○○はおずおずと私のももに頭を乗せた。
調子に乗って頭を撫でてやると、○○は『ありがとう』と一言呟いた。
体は私よりもずっと大きい○○がなんだか可愛くなって、なんだかずっと膝枕してあげたくなった。
だから酒を飲ませたら○○がさらに酔いつぶれて大変な事になった。霊夢にも怒られた。
また別の日は川に水浴びに誘った。○○は水着が必要だと言い、終始恥ずかしがっていたが私には関係なかった。
川の水が冷たくて気持ちよかったし、○○といっぱい遊ぶことができた。
あまり○○は私の方を見てくれなかったけど楽しかったに違いない。
次の日は『上手く寝付けなかった』と言っていた。○○は結構初心でかわいい。
あとは人里に連れて行ったり、妖怪の山を案内したりした。
旧都にも連れて行ったし、勇儀にも新しい友達だと紹介した。
○○は山の神社の巫女とはずいぶん会話が弾むみたい。なんだか悔しかった。
それでも楽しかったし、酒もおいしかったからよしとする。
○○と遊ぶのは楽しかった。
私の心に、何かが萃まるカンジがした。

私の心に何かが萃まる。それは、今までに感じたことのないもので、
温かくって心地よくて。
私の力だけじゃ萃められない、何か。
まだ、私にはよくわからなかった。

紫は逃げた。○○を幻想郷に連れてきておいて自分はいつも寝ている。
昨日も寝ていた。起きてる紫を最近見ていない。
なのに式が言うには、「起きた時はスキマで○○を観察して日々ニヤニヤしている」ときたもんだ。
趣味が悪い。

今じゃすっかり打ち解けて、こたつに入る時なんかには○○があぐらをかいて、その上に私が座るという形すらできあがっている。
その時に○○が私の髪をなでてくれたりすると、とても気持ちがいい。
晩酌なんか、○○との会話を肴に酒を飲んでると言ってもいいくらいだ。
寝るときなんてこっそり○○の布団にもぐりこんでも許してくれるし、何も言わない。
私は○○が好きだった。
最近になってはっきりとわかった。私は、○○が、好き。
ああ、私の心に萃まってきていたのは○○だったんだ。
○○が私の心に入り込み、私を中から変えてしまう。
○○で心が満たされていくことに私は喜びを感じていた。
人間だとか、鬼だとか、そんなものはどうでもいい。
男と、女と。それだけだった。
恋をすることなんて初めての経験かもしれない。
私は、○○に酔っていた。

○○の組んだ足の上に座って、私は言った。「○○、好きだよ」って。
いつもと変わらない口調で言った。けど、嘘なんて少しも混じっていない私の本心。
○○は、少し固まったが、『嬉しい』と言ってくれて、その後恥ずかしそうに『俺もだよ』と言ってくれた。嬉しかった。
嬉しくなって○○を正面から抱きしめるような形で突進した私を、○○は受け止めてくれた。痛そうだったけど。
私は○○の頬に口付けをする。突然のことに戸惑いつつも頬を赤らめる○○を、
今度は霧になって取り囲んでやる。○○より私の方が、もっと顔が赤くなってたから・・・
○○と私が一緒になったような、そんな気持ち。
○○のためなら、なんでもできそうな気持ちだった。心の中に○○が萃まる。
私の心は○○でいっぱいのはずなのに、それでもまだ○○を求め続けている。
好きな人と一緒に居れるのは幸せだった。

ある日○○はお昼を食べた後に軽く霊夢の手伝いをしたあと、どこかへ出かけていった。
○○が幻想郷に来てからはほとんど一緒の行動だったので、私は気になった。
霊夢に言いつけられた買出しなら、一緒について行くつもりだった。
○○がつないでくれる手は、大きくて温かい。手をつないで人里の人間達に見せ付けたいとも思っていた。
鳥居の外の階段を下ろうとしている○○に、私は霧になって近づいて、そして首に抱きついてどこへ行くのか尋ねる。
○○は、うまく答えてくれなかった。
語を濁して、目を合わせないで、適当にはぐらかされてしまった。
まるで、嘘をついてるみたいに・・・
気になった私は、気づかれないように、さっきより「疎」な霧になって○○を追いかけることにした。
いつもと変わらない足取りで歩く○○。だけどさっきから何かを気にしてるみたいで落ち着かなくて。
そうしている間に○○はいきなり消えた。
いや、消えたのではなかった。さっきまで○○が居た場所にあったのは暗い色をした隙間。
紫か・・・

私は見てしまった。
○○と紫は愛し合っていた。それも、私が感じているような事ではなく、もっと肉体的な、直接的な意味で・・・
激しく、そして互いを愛おしく貪る様に。感じあっていた。
そもそも○○を呼び出したのは紫。それが、ああこんな事だったなんて。
○○は紫に呼び出されたから、いや違う。もっと前に合っていたんだ。
紫ならば隙間を通じてコンタクトを取ることも容易い。ただ簡単な事、
○○は私の知らない所で紫と会っていた。それだけだった。
紫にとってはこれも暇つぶしのうち。好みの人間を外から連れてきた、それだけ。
私がそんなことを考える間にも、紫は普段からはあまり想像もつかないような甘い声を上げて、
○○はそれに答えるように腰を動かす。
私の顔は赤くなってしまっているだろう。見ていたくなかった。
後悔もした。軽い気持ちで○○を追ってしまって見たくないものを見てしまった。
私の心に萃まった○○は、もういない。
それも全部、紫の方へ移ってしまったのだとでも言うのか。
その代わりに、別の物が萃まる。
黒くて、重くて、終わりのない何かが私の中に、萃まる。
私は内側から、この得体の知れない感情にやられてしまいそうだった。
とりあえず、手土産として持ってきた、一緒に飲むつもりだった酒を地面に投げつけ、私は一目散に霧になってその場を逃げる。
私に好きだと言ってくれたのは嘘だったのだろうか。
嘘・・・○○は私には嘘をつかないと思っていた。
私の勘違い?
そうじゃない、○○はそんな人じゃない。
私の大好きな○○は決して嘘なんてつかなくて・・・

わかった。○○ったら素直になれないでいるだけなんだ。
ただそれだけのことなんだ。私は安心した。
○○に素直になってもらわないと。
私に対して素直な気持ちをぶつけてくれるようにしないと。
そうすれば、私も○○に思いを伝えられる。二人で幸せになるんだ。

そう思ったら私の行動は早かった。
紫との事後に、何食わぬ顔で歩いて神社まで戻ってきた○○を、私はひっつかみ、空を飛ぶ。

ここはどこだかなんてどうでもいい。
妖怪の山を超えてもっと行った、どこか。
空の色もだいぶ濁り、心なしか私の心境を表しているようにも見える。
私は、場所を決めると、傷つかないようにゆっくりと○○を降ろす。
気を失わせた○○を私の鎖で木の幹に縛り付ける。
そして、大好きな○○の手を取る。
大きくて温かくて、撫でてくれると嬉しい○○の手。
わたしのよりずっと大きな手。その手を引き寄せると、私はその一本の指を取り、
握った。

○○の指は、暗い朝に積もった初雪を踏んだときのような軽い音をして形を変える。
もっと力を込めると、こんどは熟れたトマトが口の中で弾けたよう。
形が変わるどころじゃない。○○の人差し指はなくなってしまった。
痛みで気を取り戻した○○は、獣のような大きな叫び声をあげる。
身体をよじっても鎖のせいで身動きができないことを悟ると、○○はさらに顔を青ざめさせて叫び続ける。
そんな○○を私は制して、口付けをする。
今度は頬にじゃなくて、口に。
愛する人同士って、こうするんだよね。
○○は私の顔を見ると、今度は信じられないという顔つきで言葉を漏らし始める。
嫌だ、とか。
痛いだとかやめてほしいだとか。
こんなことをする私なんて嫌いだ、とか。
嘘。
そんなの嘘に決まっている。
○○は素直になれないんだよね?私にはわかる。
○○の事だったら何でもわかるもん。
○○は私が好き。
紫なんて知らないよね?騙されていただけだもん。
○○には私しか見えてない。もちろん私にだって・・・
なのに、ねえ○○。
私が欲しいのはそんな言葉じゃない。
○○に好きだと言って欲しい。
それだけでいい。嘘を吐かないで・・・
素直に私を好きだと言って欲しい。ただ、それだけ。
だから○○を素直にさせるために、今度は中指を手に取って、力を込めた。

私達の気配を「疎」にしてある。
霧になって空気中に分散させるのと同じ要領だ。これも私の力。
だから私達は誰からも悟られることはない。

わかったことがある。紫との行為を見てしまった後、私の心に萃まった、何か。
あれは、愛。あの黒くて汚く渦巻くものが愛。
私はそれを理解した。○○を誰にも渡したくない。
○○には私だけを考えていて欲しい。そう感じた、この感情が、愛。
私は、愛を理解し、○○に向ける。
○○も、私の愛にこたえるはず・・・だよね?

・・・もう○○の指は、全て無くなってしまった。
○○はただ泣いて、私に謝り続けている。
もう、私が聞きたいのはそんな言葉じゃないのに。
ちゃんと私の目を見て、好きって言って?
嘘をつかないで、心から私のことを、好きって・・・
じゃないと、ねえ○○、
まだ、やめてあげないからね?















萃香に狂おしいほど愛されたい 終

>>up0250




ある初夏の早朝、○○が井戸で顔を洗っていると
「お兄ちゃん、薪割り終わったよ!」
「ああ、ありがとう萃香、悪いけどそこの壁際に積んでおいてもらえるか?」
「兄妹だもん、気にしないでよお兄ちゃん。それより今日はどこいこうか?沢で水遊びでもする?それとも巨大魚が現れたって噂の霧の湖にでも釣りに行ってみる?」
楽しそうに萃香は語りながら、大人一人分はあろうかという大量の薪を軽々と抱え壁の隅に持っていく
顔を洗い終わった○○は、気不味そうに切り出した。
「その事なんだけど萃香、俺もたまには一人で買い物に行きたいなあ…なんて」
ミシッ…バキバキバキバキッ!
○○がそう呟いた途端、萃香が抱えていた大量の薪が一瞬で粉々になる。
一瞬ぼうっとしていた萃香だったが何事も無かったかのように振り返る
「あ、ごめん、よく聞こえなかった。何か言った?お兄ちゃん」
「い…いや、なんでもない、じゃあ今日は神社近くの沢に行ってみようか」
「うんっ、じゃあお弁当準備してくるね。って、ありゃ、薪が砕けてる。おかしいなあ、腐ってなんか無かったはずなんだけど」
…やっぱりこいつ自覚がないのか
「まあ、気にするなよ萃香、それよりここの片付けは俺がやっておくから、準備お願いしていいか?」
「うんっ、わかった。熊なんか出てきても指一本でやっつけちゃうから安心してね、お兄ちゃん」
そう言って萃香は釣竿やらお弁当の準備のために部屋の中に引っ込んでいく
…俺は熊なんかよりお前の力が一番怖いよ
萃香が完全に見えなくなった所で○○は大きくため息をついた。


○○と萃香は実の兄妹ではない、ましてや親同士が再婚しているわけでもない
事の始まりは○○の家の近くの川べりに針が頭に刺さって倒れている萃香を、川で子供が溺れたと勘違いして介抱したのが始まりである。
目が覚めて、手当てが施されているのに気づいた萃香の第一声が
「ありがとう、お兄ちゃん」だった。
結局事情が判明したのは、夕飯時になっても帰ってこないので神社の巫女が萃香を探しに来てからであった。
どうやら萃香が川べりに倒れていた原因は、久々に手に入ったおやつの羊羹を、萃香が霊夢より二切れも多く食べてしまった為制裁を受け、
そのまま川に落下して人里近くまで流されてきたらしい
心配して探しに来るくらいなら、羊羹二切れ多く食べたくらいで制裁なんかしなければいいのにと思わないでもなかった○○だが、
萃香の「お姉ちゃん、誰?」と言うセリフでそんな思いはたちまち何処かに吹き飛んでしまった。
一瞬呆気にとられた霊夢だったが、記憶を失っても体に恐怖が染込む程制裁が恐ろしかったのか、本気で怯える様子の萃香を見て冗談では無いと気づいたらしく
「千を超える歳のあんたにお姉ちゃんと言われるとは思わなかった。また来るわ」と言い残してその日は帰っていった。
どうやらこの少女の名前は萃香と言うらしく、川を流される時に岩に頭をぶつけたか針の刺さり所が悪かったかで(或いはその両方か)
一緒に暮らしていた人間の事を忘れてしまった上に最初に助けた俺の事を兄と認識してしまったらしい
巫女は帰ってしまったし、鬼とはいえ女の子を日が沈むと言うのに追い出すわけに行かず、その日は家に泊めたのだが
思えばこの時に里長に相談するべきであった。

翌日目が覚めたとき、家の中は塵一つ無い状態で片付いており、食卓には家には置いてなかったはずの豪華な食材で構成された、出来たての食事が湯気を立てていた。
「あ、お兄ちゃん起きたんだ。昨日は変な女から守ってくれてありがとうね」
その声に振り向くと、薪を両手に抱えた萃香が戸口に立っていた。
どうやら食事の用意に使った分の薪を家の裏から補充してきたらしく、
更に変な話だが、萃香の中で昨日の一連の出来事は、俺がこの子を巫女から守った事になっているらしい
その日から奇妙な共同生活が始まった。


数日後、どうやってタイミングを調べたか知らないが、怖がらないよう萃香が昼寝をしている最中に様子を見に巫女が訪ねてきた。
しかし、記憶が戻ってないのを聞くと嘆息してこう切り出した。
今回の記憶喪失はあくまで事故であり、誰かが故意に起こした異変ではないので原因となった人間をしばいて解決という手法が使えないこと
更に竹林の薬師にも相談したが、人間と体の構造が違い病気や怪我と殆ど縁がない鬼に効く薬を作るには、原因を調べる事から始めないといけない為
時間がかかるらしい と巫女は言った
「どうしてもあなたが迷惑な様なら、記憶が戻るまでショック療法を与えてもいいけど?」と切り出す巫女に
その時の俺は慌てて首を振ってしまった。
人間と違うとは言え、少女を痛めつけるのには抵抗があったのと、現金な話ではあるがあの萃める力、とやらが
魅力的に映ったのも確かである。
「そう、あなたが暫く置いてもかまわないってのなら任せるわ、一応様子を見に定期的に確認にはくるから」
と言ってその日は去っていった。
それから暫くは平和だった、家事は半分どころか3割以下に手間は減っていたし、自然の食材であれば大概の物は萃香の力で簡単に手に入ったので
食うには全然困らなかった、しかし、段々と萃香の異常性が目に付くようになっていった。

最初はある日の食事の席で、軽い冗談の積もりで炒った豆も萃めることが出来るか?と問うた所、
ビキリと音を立てて萃香の茶碗が割れた。
能力を差し引いても、愛らしくそして自分を慕ってくれるこの娘と暮らすのも悪くないなと思い始めていた○○は、
自分が割ったのだから自分で片付けると言う萃香を笑いながら制し、茶碗を片付けていた所、奇妙なことに気がついた
明らかに茶碗は握りつぶされていたのだ。
力加減を間違ったか、それとも抗議の積もりでワザと壊すくらいなら口で抗議すればいいのにと思った○○であったが、
すぐにワザとではないと気づかされることになった。

食事の件から二日後の事である、その日の前日偶々萃香と張り合って飲み過ぎてしまい、○○は二日酔いで苦しんでいた。
遊びに行こうと袖を引く萃香を、横になっていた○○は最初は静かに制していたが、
小さいとはいえ天狗以上に酒豪である萃香に、二日酔いの苦しみがわからないのも無理は無い
怪我でも病気でもないんだし、外は天気もいいし遊びに行こうと袖を掴んで引っ張る萃香に、
吐き気と頭痛がぶり返してきた○○はつい「いい加減にしろ」と叫んでしまった。
すると次の瞬間○○は一瞬宙に浮いた後、ビリッと言う音と共に床に叩き付けられていた。
いくらなんでも余りにも乱暴だと抗議しようと萃香のほうを向いた○○であったが、
怒鳴ろうと口を開けたところで硬直してしまった。
てっきり怒ってるか笑ってるかのどちらかと思った萃香の表情が
完全に無表情だったからである。
意図的な無表情などではなく、完全に、魂が抜けていると言った表現がぴったりであった。
破れた袖の切れ端を掴んだままぼうっとしていた萃香だったが、数秒後にはいつもの萃香に戻っていた。
結局その日は一日○○の服の修理に萃香が没頭していたので、出かけることはなかったが、
○○が恐怖感を抱くのはこの日だけで十分すぎるほどであった。

それから更に三日後に巫女が顔を出した時に、その事を相談した○○であったが、帰ってきた答えは失望させるに十分だった。
巫女の見解によると、萃香が一時的に思考停止に陥り力加減が出来なくなるのは、自己防衛本能の一種であり、
甘えたり不満をぶつける相手が存在せず、長い間孤独であった萃香は、一定以上のストレスがかかったら
思考停止することで心の負荷を抑えていたのではないか?と言うことであった。
そしてそれは短期間に起こった異変では無く、千年もの間降り積もった結果であり、異変解決の専門である自分ではどうしようもない、と
おまけにこれから暫く別の異変を解決するために暫く留守にするので、ここには来れない と言って更に○○の心を削った。
そもそも最初の頭に刺さった針、が原因じゃないのか?と突っ込みたかった○○であったが、ここで数少ない妖怪トラブルの専門家に見限られるのは
致命的すぎる上に、仮にそうだったとしても巫女自身が自分自身を成敗する訳にいかないのでぐっと我慢していると、巫女は最後に希望を残してくれた。
「今度の異変を解決したら、萃香の古い知り合いでそういう心の隙間を弄くれそうな奴を直接ここに連れてくるから」と
いつ帰れるかはわからないが、出来るだけ早く戻ってくる。と言い残し巫女は去っていった。

さて、困ったのは○○である、巫女が戻ってくるまでなんとか無事に過ごさなくてはならないが、気が気ではない
普通の人間だったはずが、下り坂でジャンプして死ぬくらい誰も予想がつかない所で何時死ぬかわからない状況に陥ってしまったのである。
萃香を抱きつかれて寝ているときや、背中を流してもらっている時に何時スイッチを踏んでしまうかわかった物ではない、
妖怪にコネがあるわけではない一般人の○○では、こういう時に当てになる相手がいないのが現実である。
強いてあげるなら、時々人間の里に買い物に来る魔法の森の人間の魔法使いなら、同じ人間のよしみで
事情を話せば助けてくれるかもしれない、報酬くらいは要求されるかもしれないが
しかし最近風の噂で氷精に怪我を負わされたという噂もあるし、その少し前からずっと人間の里でも見かけない
そういえば最後に見たのも、暫く前に外の世界から来た若者に背負われて森に消えていくのを見たきりだった。
考えてみればあの若者もそれ以来見た記憶がない、もしかしたら若い者同士魔法使いの娘とよろしくやってるだけかもしれないが
どちらにせよ自分から魔法の森に入っていくという選択肢は普段でも選べないため、里に魔法使いが来ない限り頼みようが無い

後頼りになりそうなのは里長であるが、もう一つ萃香に関して問題がある。
○○から離れるのを異常に嫌がるのだ。
別に○○自信が閉じ込められていると言うわけではない、家の周りくらいであれば、萃香が家の中で寝ていても何も問題は起きないし、
里に買い物に行くのにも制限はない、ただ一つ、常に萃香が付いてくる以外は
一度萃香が完全に寝てるのを確認して家から離れようとした事があるが、家から50メートルも離れないうちに
衝撃を感じて振り向くと、寝ていたはずの萃香が目を擦りながら袖を掴んでいた。
「どこに行くの?お兄ちゃん」と聞かれて
咄嗟に釣りに行くと答えてしまった後に道具がないのに気づいて、あの時は誤魔化すのに苦労した。
何とか誤魔化すのに成功したはずだったが、あれ以来萃香が寝ている時でもなぜか常に視線を感じるような気がしてしょうがない、
家の裏等で○○が作業をしていて萃香が確実にそばにいない時でも、咄嗟に振り向くと視界の端を鼠の様な小さな影が横切る。
ソレが一瞬小さな萃香に見えた気がして、更に○○の精神を削っていく、このままではこちらも病んでしまいそうだ。


回想しているうちに思ったより時間が過ぎていたのか、釣り道具に弁当まで用意した萃香が
「準備終わったよ、お兄ちゃん」と言いながら戸口から顔を出した
「今日は釣竿忘れたなんてないように私が用意したからね」と嫌味の欠片も伺えない笑顔で言う
咄嗟とは言え嘘を吐いた○○はその笑顔にちくりと胸を刺されながらも、出来る限りの笑顔で答えた
「ああ、じゃあ今日は思いっきり沢で遊ぶか」


暫く二人で歩いて上流に向かい、萃香を拾った川の上流の沢にまでたどり着いた二人は早速釣りを始めた。
前に力で簡単に手に入るなら、釣りなんか楽しくないのではないか?と聞いたことがあるのだが
妖怪としての力ではなく、自分自身の手で手に入れたもののほうが数倍美味しいから、と答えが返ってきて、
わかった様なわからない様な複雑な気分な○○であったが、今日の沢遊びはチャンスだった。

二人で釣りを楽しんだ後、昼食をとり、一休みした後水遊びを始めた○○と萃香であったが、その時事件は起こった
「ぐあっ、いでぇっ」
萃香の身長では届かない程度の深みを泳いでいた○○が悲鳴を上げて仰け反る
「!? どうしたの、お兄ちゃん!」
悲鳴を聞いた萃香が顔を驚愕で歪ませる。
「ぐっ…どうやら足を岩に挟ませてしまったらしい、しかもこりゃ折れてるみたいだ。動かん」
「待ってて、すぐ岩を壊すから」
慌てて萃香が近づこうとするのを、苦しそうな顔をしながら○○は手で制した。
「いや、どうやら変な挟まり方してるらしく、下手に岩を動かしたり割ったりすると振動で痛すぎて逝ってしまいそうだ」
更に○○は続ける
「悪いけど萃香、竹林の薬師の先生の所から痛み止めか何か貰ってきてくれないか?岩から抜くのはその後で」
かなり苦しい言い分だったが、切れ切れに声を絞り出す○○の声を聞いて萃香は蒼白になりながらも返答する
「うん、わかった。急いで薬を取ってくるから待っててね、お兄ちゃん」
「ああ、待ってるから頼んだぞ、萃香」
○○から返事を聞くと目にも留まらない速度で竹林の方角で駆けていく
時々轟音が聞こえるのは直線ルートを通っているせいか岩や木にぶち当たって障害物のほうが砕けているらしい
完全に萃香が離れたのを確認した○○は何事も無かったかのように川からあがる
そう、足が挟まったというのは真っ赤な嘘であった。
萃香自身は間違いなくいい子だし自分でも嫌いではない、ただ、無自覚とはいえ常に喉元に刃を突きつけれた状態での生活は限界だった
いくら足が速くても竹林にたどり着いた萃香が、事情を薬師に説明して戻ってくるまでにそれなりに時間はかかるだろう
○○の賭けはそれまでになんとか里長の所にたどり着いて保護を求める事だった。
あの里長なら理由はわからないが全て無かったことにしてくれそうだ。

着替える時間も惜しいので、履物とズボンだけ穿いて里のほうに駆け出す。
上半身を時々枝葉が削るが、足のほうは衣服が保護してくれている、足だけは確保するという目論見は成功したようだ
後は里長の住んでいる家に飛び込めばなんとかなる、この時間なら子供たちの授業も終わっているだろう。
後ろも振り返らずに走り続けたお陰か、村の入り口が見えてきた、これなら余裕で間に合うか…
息を切らせながらも最後のペースをあげる、入り口まで直線で後100メートル


ガシッ


腰に何者かに抱きつかれ、○○の動きが一瞬で最高速度から0になる
少しの間その場で足踏みするかのように足を動かしていた○○であったが、何時までたっても景色が動かないことで
ようやく腰に目を落とす。
腰には小さな手が2本巻きついていた、よく見ると片方の手には血がついた紙袋が握られている。
「竹林の所でさ、薬師の所の兎にあったんだよ、丁度よかったから痛み止めを頂戴っていったら」 
「確かに麻酔薬はあるしこの袋がそうだけどなんで病気も怪我も縁の無い鬼が必要なの?確かに一部の薬とアルコールで酩酊状態の効果は倍増するけど悪用は…」
「とかどうのこうの言うからさ、久々に殴っちゃたよ、ほぼ本気でさ まあ流石に死にはしないだろうけど」
なるほど、萃香の持っている紙袋が血まみれな理由も、予想より大幅に戻ってくるのが早かった理由もわかった。
だが、だがしかしこの状況は不味い
「お兄ちゃん、足が折れてるんじゃなかったの?それに待ってるから頼んだぞ。とも言ったよね?なんでここを走ってるの?」
不味い…なんとかいい言い訳を考えようとするが、ただでさえ酸欠気味の頭脳に恐怖でまともに思考がまわらない
「ああ…もしかして また 嘘を吐いたの?前にも吐いたし今日2回で合計三度目だよね?嘘を吐くの。前に私嘘が大嫌いだって言ったよね?お兄ちゃん」
「さ…三度目って何のことだ?前って?」
何とか気をそらそうと、そしてあわよくば誰か通りかからないかと淡い期待をしつつ時間稼ぎをして言い訳を考える○○
「だって前に釣り道具も持たずに釣りに行こうとしたって言った時、あれ嘘だよね?だって歩いてたの川と反対の里の方向だったよね?ね、お兄ちゃん」
やばい…萃香の目から光が消えていく、この抱きかかえられてる状況でこれは不味い、なんとか時間を稼がないと
「この方向はあの女のいる方向だよね、確かにあの女も角は二本あるけど、私と間違えたってのは苦しいんじゃない?」
あの女ってのは里長のことか?角が二本って何のことだろう、いや、今はそんな事考えてる場合じゃない
「嘘じゃないってのなら、私に理由を説明してよ お兄ちゃん」
やばい、もう完全に目に光がなくなってきた、何か旨い言い訳を言わないといけないのに言葉が出ない、何か、何か言わないと
「何も言わないってことはやっぱり嘘だったんだ…お兄ちゃんの馬鹿」
あ…まず……時間切れ





……ゴキリ
>>up0502




よおっす、○○。随分浮かない顔してるじゃないか。
こんな時には酒がいいよ。そら、一杯やろう。
え? 酒なんて見たくも無い? ひっどいなあ、それって私を否定することそのものじゃないか。
優しい○○がそんなことするんだぁ、へぇ。
そうそう、素直に付き合えばいいんだよ。素直にね。
いんやあ今夜はいい月だ。○○と一緒になったのもこんな月だったねえ。
いやはやお前さんにあんな度胸があったとは私も驚いたよ。

……あぁ? なんでお前さん、泣いてんだよオイ。
それはあれか。私はそんな簡単にメソメソしてくれるような男に襲われたってわけか。
いい度胸してんじゃないか!!(カ゛チャン!
いいか、お前は私に償わなくちゃあならないんだよ! 
お前が生きるのはどんなに長くても百年、たった百年間だけだけどな!
たいしたことはやれないことはわかってる。
けど最初から償う気が無いってんならこの場で首を引きちぎってやってもいいんだ!!
……フン、酒が不味くなった。今夜はそこでずっと土下座しながらごめんなさいって言ってろ。
くそったれめ。

ああ私に謝ってる○○、かっわいいなぁ。もっと怒ってやってもよかったかも。
あの薬師に作らせた薬、本当に効果抜群だよ。
酒に混ぜるだけであんな朴念仁が野獣に早変わりってんだから。
ウサギ一匹捕まえるだけで薬師を奴隷に出来たのは大儲けだね。
さーて○○? もう私はお前を一生許してあげないよ。
これからも、ずーっと一緒だね……ふふふ。


ヤンデレsuica。
こいつはきっと豹変型ヤンデレが似合うと思う。

1スレ目 >>89




……ううっ
「○○、お早う」
……萃香?
「鬼であるわたしと力比べなんて、意外と度胸あるね。見直したよ」
……俺は?
「……忘れたとは言わせないよ。わたしとの力比べを受け入れたこと」
……そうだ。俺は酒の勢いで、萃香との勝負を受け入れてしまった。
その結果、鬼の拳を盛大にもらい、失神したのだ。
「まったく、わざわざ手加減までしたのに、○○ってば一発で伸びちゃうんだもん。
…ところで、鬼に負けたら、どんな目に遭うかは分かってるよね?」
分かっている。このまま拐われて神隠しに遭う。
勝負に負けた以上逃れることは出来ない。
出来ることはただ己の馬鹿さ加減を呪うことぐらいである。
「さて、じゃあ○○を拐おう。……と、言いたいところだけど、わたしは、優しいからね。
○○をわたしの物にするだけで許してあげるよ」
それが萃香の温情ではないと思い知るのには、三日とかからなかった。

「……きゅうじゅうご」
がああっ!
「……きゅうじゅうろく」
うぐあっ!
「……きゅうじゅうなな」
ぐううっ!
……頼む萃香、もう、止めてくれ。
「なにいってるの、○○。悪いのは誰だっけ? 殺されないだけマシじゃない?」
……たのむ
「痛いよね。わたしの能力で痛覚を密にしてるんだもん。
……きゅうじゅうはち」
……ぐああっ!
「でも身体へのダメージは疎にしてるからね。死ぬことはもちろん、大怪我をすることもないよ。
……きゅうじゅうきゅう」
……あぐううっ!
「ついでにいうと○○の意識も密にしてるから、絶対に気を失えない。
はい、ひゃく、っと」
……ううっ!
「さて、○○。どうしてあんたは殴られているんだっけ?」
……
「……物を聞かれたら、ちゃんと答えなよっと!」
……づうっ!?
「あ〜あ。あんまり頭に来たから、能力使うの忘れちゃったよ。
右腕、イっちゃったね。
わたしがもっと怒る前に答えた方がいいと思うんだけどな?」
……萃香との約束を破って、他の女の子と話したからです。
「……まったく、○○はわたしのものって言ったのに、まだわかってないみたいだねっ!」
あ゛がっ!
「ありゃ、またやっちゃった。
いけないいけない、すぐかっとなる癖、直さないと。
あと約束じゃなくて、命令だから、そこんとこ、勘違いしないように。
あんたはわたしの所有物なんだからさ。
……あ〜あ。私のせいで利き手利き足が使い物にならなくなっちゃったね。
責任とってこれから○○の世話をしてあげるよ。
わたしの住み処でね」
……
「不満?……もう百発いっとく?」
……これから、よろしくお願いします。
……心使いありがとう
「そうそう。感謝の気持ちを忘れないことと、嘘を吐かないこと。この二つが守れればずっと面倒みてあげるからね。
さて、じゃあ住み処にもどったら、○○と一緒になれた記念に祝杯をあげようか」
萃香は笑っていた。
「ふふふ……。これから、ずっと一緒だよ○○」
無邪気に、残酷に、子供のように笑っていた。


スイカインバイオレンス。悲鳴書くのがいちばん難しかったり。
ヤンデレはうpろだを使いづらいなと思ったりする。
けど、長い書き込みはあれだし…
表記すれば平気だろか?


1スレ目 >>418




「久しぶりね萃香、なぜ呼び出されたかは分かっているわね?」
「おや紫、そんな怖い顔してどうしたのさ」

「恋人を霧に分解するなんて一体何を考えているの? 幻想郷中に広がったあの男は少しずつ世界に吸収されているわ、もう元には戻れないでしょうね」
「はは、いいことじゃないか。人間の寿命はとてもとても短かくてすぐに死んじゃうからね……それと比べれば、彼のすべてが溶け込んだこの世界でいつまでも彼に包まれて生きていく……これ以上の幸せがどこにあるのさ?」

「……種の摂理に押し潰されたか。まあ私の幻想郷を汚さない範囲ならば何をしても自由だったんだけどねぇ……あなたはやり過ぎたわ」
「んー、邪魔をする気なんだ。でももう手遅れなんじゃない?」

「混じった不純物は、あなたを排除した後でゆっくりと時間をかけて取り除くことにするわ」
「あんたは彼のいない世界が大事、わたしは彼のいる世界が大事。ままならないねぇ」

「それでは」
「始めようか」


思いついたネタをさらっと書いてみたんだが、どうもドロドロ感が足りない気がする。
次はもうちょっと時間かけてヤバげに病んでるのを目指してみるか……

3スレ目 >>319





朝○○ー○○ーと呼ぶ声がするので起きたが誰もいない、耳をほじってみたら小さい萃香が出てきた。
そのまま指ではじいてやった。

お湯を沸かそうと釜を開けたら人形大の萃香が入ってて、
「○○ー諦めて一緒に暮らそうよー」
とかほざいてた。
かまわず水を入れて火にかけた。
沸いたころに蓋を取ってみるとのぼせ上がった萃香がいた、水がめに放り込んで畑に向かう。

畑で芋を掘ってると芋にくっついていた萃香まで掘り起こした。わらわらいた。
「わたしも食べて?」
うるせえ、誰が食うか。芋と一緒にかごに入れて河に向かう。

土だらけの芋と萃香を洗う。
「ああん…○○…もう少し優しくして…?」
無視して洗い続ける、芋はかごへ、萃香は河へ流す。

家へ帰り戸を開けると萃香が抱きついてきた、抱き上げてくるっと180度回転、萃香を外に出し戸を閉める。

寝ようと思い布団をめくってみると萃香が寝そべっていた。
「わたしと一緒に寝たら○○もいちころだよ」
なにを言っていやがる酔っ払い幼女め。かまわず抱きしめて横になる。
酔って赤い顔をさらに赤くしてだまんまりになった、鬼退治なんて楽勝だぜ

>>up0633




間欠泉騒ぎの後、地下にいた妖怪たちの中にも地上に出てくるものがいた、勇儀もその一人だ。
初めの内は飲んで騒いでそれでよかった、○○のことを相談されるまでは。
後からのこのこ出てきたくせにわたしが唾をつけておいた○○を狙い、ましてやその相談をわたしに持ちかけるとは。
最初は怒ったが勇儀はずっと地下にいたんだから、わたしが○○を狙っていたことは知るわけがない。

そう、知らないんだ。

そこでそれを利用して一計を案じた。
もちろん○○から勇儀を離す為の策だ。
男に初心なあいつはわたしからの助言を全て聞き入れた。
やれ好きな者どうしお互い拘束しあいうだの、二人っきりになればそういう雰囲気になるだの、そんなことだ。

もちろんこんな漠然とした助言じゃなんの効果もないだろう、普通ならここから色々考えたりするもんだけど、
だけど猪突猛進な、良く言えば純なあいつはそのまま当たっていった。

一回目の告白は○○に心配されて終わりだったけど二回目は違った。
なんとあいつは○○の唇を奪いやがった!わたしでもしてもらったことがないのに!!
これだけでもあいつをぶっ飛ばすぐらいに感情が高ぶったけどなんとか抑えた、一緒に飲んでた天狗を反射的にぶっ飛ばして。

次の日にまた相談に来た、昨日のことを照れながら話して「次はどうしたらいいんだ?」だと?
わたしは殴ろうとする体を必死に押さえた、まだその時じゃない。
だけど助言の方はもう手加減無しだ。
好きな者同士同士四六時中一緒にいるもんだ、って言ってやった。

入れ替わりに○○がやって来て相談事をされた、○○がわたしを頼ってくれるのは今までのことを帳消しにしてやってもいいくらい嬉しかったが、
その内容があいつのことだったのは悔しかった、でも○○もう直ぐそんなこと気にしなくてもいいようにしてあげるからね。


それからあいつは○○に付きまとうようになった。
もちろん○○には迷惑なだけだろう、あいつとは恋人でもなんでもないんだから。
○○もわたしの助言を守ってあいつの相手はしなかった。
そしてあいつの行為は予想通り段々度を超えてきた、もう少しだ、わたしは最後の一押しをした。

○○が無視する?なら勇儀、しばらく会うのをやめればいいんだよ、○○はきっと来られるより自分から向かうのが好きなんだよ。
それに心配されたかったら目に見えるものなんかかいいんじゃない?なるべく刺激の強いもので。


それからしばらくしてまた○○が相談しに来てくれた、内容は相変わらずだったけど。
わたしはもう直ぐだよと言った、そうもう直ぐだからね…○○。



そしてそれは起こった、わたしは体を密にし、あいつを○○から引っぺがしぶっ飛ばす。

「○○大丈夫かい?」
「す、萃香…?なにしてるんだ、勇儀は怪我をしてるんだぞ」

○○は唖然としながらもそう聞いてくる、ああ○○…あいつのことなんてどうでもいいじゃないか。

「大丈夫さ、鬼はあんなんじゃびくともしないよ、それより○○、知ってると思うけど勇儀は最近ちょっとおかしい、おまけに○○を狙ってるときてる、
同属がかけた迷惑だ、同じ鬼としてわたしが守ってやるよ」

そう言ってわたしは○○を攫う、誰も知らない場所へ。







「勇儀はまだおれを探してるのか?」

○○がそう聞いてくる。

「うん、そうみたいだね。こりゃあまだまだ帰れそうにないよ」

あれから数ヶ月が経った、○○はわたしに攫われたままだ、もちろんあいつから保護するという名目で。
あいつが○○を諦めるってことはないだろう、ならわたしはずっと○○をこのままにしておかないといけない。
そう、ずっだよ。












〜以下蛇足〜
スレ606勇儀の続きです
読んでくれた人がほとんど思った通り、ほとんど606の焼き直しです、これならわざわざ二つに分けず、前回にオチも書けばよかry

助言ののくだりは萃香もヤンデルから、その考えは萃香の中では本当ってことなので嘘になってないよってことにしてくれると幸いです
〜以上蛇足〜

>>up0694




地の底から幻想の郷へと戻った鬼―――伊吹萃香にとって、素面は忌むべき事だった。


こんな、桜の舞う日は特に。
大昔、まだ結界が張られていないぐらい大昔。
鬼は地上に在り、妖怪を支配し、時折人を浚った。

伊吹萃香も頻度は他の鬼よりは劣るが、やはり人を浚う事があった。
特に意味があっての事ではない。惰性の習慣だった。

だが、有る青年と出会った事で人を浚う事は無くなった。
代わりに、青年の元にちょくちょく訪れた。
この時代、恐怖の象徴であった鬼がやって来て受け容れる人間は居ない。
その意味では青年は不思議な存在だった。あやかし等を恐れなかった。

伊吹萃香は、青年との交流を続けた。
理由は楽しかったからだ。宴会よりも、青年と2人でいた方が楽しかった。
鬼として存在してきた長き年月よりも、青年と一緒に過ごした瞬き程度の時間。
萃香にとっての幸せな時間は、敢え無く終わりを告げた。

青年が、嫁を娶る事になった。
嬉しそうに報告する青年は、萃香の頬が僅かに引きつるのを知らなかった。
小鬼の中で、今まで感じた事の無い感情が渦巻いた。
まるで冥界の悪霊の怨嗟、呪詛のような昏い感情。

そして、式の当日。
式を遠巻きに霧となって見ていた萃香は、最近になって芽生えた感情が鎌首を上げている事に気が付いた。
あの日から幾ら誤魔化すように、浴びるように酒を飲んでも紛れなかった、治まらなかった感情。

青年と嫁御が、顔を見合わせて幸せそうな笑みを浮かべた瞬間。

小鬼は、自分で制御出来ない何かを解き放ってしまった。


気が付くと、全ては終わっていた。
喜びに満ちたお式の場は、流血の惨事の場へと化していた。

正気に返った萃香の目の前で、息絶えた花嫁を抱き締める青年。
白無垢は真っ赤に染まり、青年の晴れ着も血塗れになっていた。

―――違うんだ○○、これは、何かの間違いなんだ。
―――こんなつもりじゃなかった。○○を傷付けるような事をしないって約束したのに。

必死に、青年に何かを言いたくても、萃香の口は開かなかった。

青年は顔を上げて、声を出せれない萃香を見詰める。
深い、悲しみに満ちた眼だった。
青年の優しい顔が好きだった萃香にとって、一番見たくない顔。
いっそ、罵倒された方が、憎悪された方が、怒りをぶつけられた方が、どれ程楽だったろうか。

鬼は泣いた、大声を出して泣いた。
泣きながら飛び掛かり、青年の喉笛を噛み千切った。
どうしようもなくなった彼女は、鬼として行動する事しか出来なかったのだ。




そして、青年の全てを血の一滴すら残らず自分の中に取り込んだ後、彼女は地底の底へと去っていった。




以来、彼女が素面であった事はない。
常に酔っていないと、彼女の過去の傷は容赦なく痛みを発した。



以来、彼女は人を浚ったり喰らおうとはしなかった。
二度と、二度と人を食べたくはなかった。





最近になって地上に戻った理由は自分でも解らない。
手慰みに怪異を起こして巫女に倒された後、彼女は地下へは戻らず神社で暇を潰す事が多くなった。
境内で寝そべり、手にした瓢箪をぐびりと呷る。巫女は何か仕事が出来たらしく人里へと出かけていた。

「桜をツマミに、酒か」

一瞬、笑みを浮かべた○○が盃を差し出す光景が脳裏を焼く。
かつての妖怪の山で一番桜の名所へと彼を案内し、酒を2人で楽しんだ時の事。
瓢箪を握る手が震える。目尻に、涙が浮く。鬼が泣くモノかと手の甲で擦り、ゴキュゴキュと酒を喉に流し込む。

「あれ、霊夢……と誰かいるの?」

霊夢が帰って来たようだ。鳥居の方に気配を感じる。
何とか落ち着いた萃香は何気なくそちらを見やり、完全に凍り付いた。

外来人なのだろう。所謂『幻想郷の人では無い』服装をしている。
霊夢から帰還の手順らしき説明を聞いている彼は、どことなく困ったような笑みを浮かべていた。
そう、かつて、初めて山の中で逢った時と同じように。

「○○……」

萃香の手から、瓢箪が滑り落ちた。
音を立てた所為か、青年が自分に気付き会釈してくる。
ゆらりと、自分の身体が意志に反するように立ち上がった。
霊夢が何かに気付いたかのように、素早く針を取り出して身構える。
霊夢が何かを問い質すように叫んでいるが、既に萃香の耳には聞こえなかった。

「○○―――!!」

萃香の放った叫びが、博麗神社に弾幕と共に木霊した。

5スレ目 >>299