■諏訪子1
●●は、生け贄にされるはずだった。
ミシャグジのお告げを受けた神主は、例外なく私に命を捧げてきた
別に私が血肉に餓えているわけではなかったが、信者達……いや、王国の国民たちは、それが信仰の証だと硬く信じていた。
状況が変わったのは、神奈子に征服されてからだ。
私に対する王国の信仰心を、なんとか神奈子が得ようと無駄にあがいていた。そこで誰の目にも明らかにキャッチーな「人間の生け贄廃止」を謳ったのだ。
だが国民たちは当たり前のように生け贄を続け、神奈子の計画は失敗した。
だが、国民は逆らっても私が逆らうわけには行かない。
私が降伏した意味がなくなってしまえば、国民は軍隊に踏み躙られるだろう。
だから私は、生け贄になるはずだった●●を婿に迎えることで生け贄の必要性を下げたのだ
私にとって誤算だったのは、私が本気で●●を好きになってしまったことだ。
私を、ただの女の子として扱った初めての男性だった。
身も心も、●●には全て許した。永遠の愛も誓った。
だが、●●は人間だ。
当時としては非常に長生きで、40歳に届いた頃、寿命が尽きた。
寂しく、悲しかったが、彼との間に授けた子達が支えてくれた。
子供たちが神奈子に仕えることで、国の内外も安定した。
ずっとずっと、●●の面影を子孫に追い続けていた。
「――幻想郷暮しも悪くないわね」
「洩矢様にそう言って戴けると助かります。なにしろ八坂様はお一人で決めてしまいましたから」
早苗は、プラスチックの食器を片付けながら安堵のため息を吐くように答えた。右手の人差し指で、軽く右頬を掻く仕草。●●が安心したときの仕草そのもの。
「ところで早苗、お付き合いしている男性がいるって本当?」
あぁ、おたおたと慌てる仕草は似てないのね。
少し悲しいわ。
でも、神奈子と違って文句なんて付けない。
●●の血を継ぐなら、相手なんて誰だっていいもの。
「〇〇って言うの? え?まだ告白してないの……今度神奈子と私に会わせなさい。 しっかり見定めてあげるわ。神奈子の評価は厳しいわよ〜」
数日後、〇〇と連れ添うように歩く早苗を見かけた。
一目で解った
〇〇は、●●の生まれ変わりだ。
ぞくりと、それに気付いた私に芽生えた感情の恐ろしさと背徳感に背筋から震えた……
>>本家諏訪子3
時々、視線を感じるようになった。
別に女の子が見てくる分にはいいし大歓迎なのだが、どうも様子が違う。
気配はあるのだが、見回しても誰も居ない。
今度来た時に相談してもらおう。できることなら、お祓いも頼んでみよう。
「おい●●っ!何ボーッとしてんだ!仕事しろっ!」
『っは、へい!』・・・暇ができたらだな。
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○○が生きていた。
始めは見間違いだと疑った。
○○は死んだじゃないか。
でも○○は居た。
分社の用意で早苗と行った人里に。
早苗が長老と話し合っている時、○○は入ってきた。
○○は話し合いと分かると出て行った。
私のことが分からなかったのだろうか。 「・・こ・」
もしかしたら記憶喪失かもしれない。 「・・こ様」
今はまだ様子見をしたほうがいいだろう。「諏訪子様!」
『っ!早苗どうしたの?』
「いえ、ですから分社のことで相談が」
『あー、これはねぇ』
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仕事も暇ができ、うろついていると巫女さんがいた。
「あのーすいません」
「はい。なんですか?」
巫女さんは振り向いてこちらを見る。
丁度、帰るところだったようだ。
『自分は●●っていうんですけど相談が・・・』
「別にいいですよ」
物分かりのいい人で助かった。
俺はつたないながらも分かることを話した。
「・・うーん、それが何かはわかりませんけど」
「もし悪霊とか妖怪だったら困りますね・・・」
「それじゃあ御札を・・・あれ?」
巫女さんは袖口に手を突っ込むが、しばらくして
「すいません・・・今、御札のストックがないみたいで・・・」
「・・・じゃあ今から神社に来てくれませんか?」
『え!別に今度でも・・・』
「いいえ!今日食べられたり祟られたりしたら大変です!」
「長老さんには話しておくので一緒に来てください!」
『・・・わかりました』
「では行きましょう」
『あの、ところでお名前は?』
「早苗、東風谷 早苗です」
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早苗と一緒に○○が来た。
私に会いに来てくれたのだろうか。
・・・どうやら違うようだ。
早苗が○○から離れた。
私はキョロキョロと辺りを見回す○○の前に姿を現した。
『何しに来たの?』
○○は少し驚いた様子で
『御札を貰いに来たんだ』と言った。
『ねぇ○○』
『?俺は●●だよ』
『君は?早苗さんの妹?』
「準備できましたよー・・・諏訪子様どうしたんですか?」
そのあと、何か話したみたいだけど私は憶えていない。
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『いやぁ、すいません』
『泊めて貰ったばかりかご飯と風呂まで・・・』
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ」
『・・・あの、諏訪子様は』
『やっぱり自分が無礼なこと言ったから』
「気にしないでも大丈夫ですよ」
「たまたま元気がなかっただけです」
「はいこれ、守矢特性の御札です」
「貼れば大抵の悪霊や妖怪なら近づけませんよ」
『ありがとうございます』
「では戻りましょうか」
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やっぱり○○は記憶喪失なんだ。
だから私がわからないんだ。
そうに違いない。
いや絶対そうだ。
なら治さなきゃいけない。
私と○○が愛し合ってたことを思い出させないと。
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「あ、●●さんっ・・・どうしたんですか・・・?」
『あぁ御札を戸と窓に貼り付けて寝たんだけどね』
『家の中からするんだよね・・・視線』
「えっ・・・」
「相当強い力を持ってないとあれは破れませんよ」
「あれで駄目ならどうすれば・・・」
『それなら私がやろうか?』
「諏訪子様・・・!」
「そんなことしなくても私が」
『でも早苗は風祝として仕事があるでしょ?』
『それに早苗が張り込んだら誰が家事をするの?』
「それは・・・」
『分社には離れがあるから、そこに●●と籠るよ』
『もし、それが来たら返り討ちにしてあげる』
「・・わかりました」
「神奈子様には私から言っておきます」
『よろしくね早苗』
『・・・●●』
『はっはい!諏訪子様!』
『そんなに固くならなくていいよ』
『じゃあ●●っ、行こうか』
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○○は私を信じきっている。
まずは呪符を貼って出られないようにしよう。
あとは○○にゆっくりと思い出させればいい。
なに、時間はあるのだ。
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ここに閉じ込められていったいどれくらいたっただろう。
諏訪子は朝食後にここを出て、夕方に帰ってくる。
大方、神社に行っているのだろう。
諏訪子は自分を○○と呼んでくる。
そして何時の頃かもわからない○○との思い出を語る。
少しでも○○と違うことをすると
○○はそんなことしない!と言って苦痛を与えてくる。
そうして俺はだんだん○○になっていく。
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『○○ただいまー』
そう言って諏訪子は●●に抱きつく。
『おかえりなさい』
そう言って●●は諏訪子の頭を撫でる。
『・・・ねぇ●●』
『?私は名前は○○ですよ?』
それを聞いた諏訪子は満足そうに●●の胸に顔を埋めた
>>up0665
かつてエリートサラリーマンだった○○は、とある災害に巻き込まれ幻想郷に迷い込んだ。
失意を抱えながらも里で書類仕事やネゴシエイターを勤める日々。
教養と能力を兼ね備えた○○だったが、1つ、困った事になっていた。
「○○ぉ……」(だから、違うと言うに……全く)
自宅に帰ると何処からともなく現れ、縋り付いてくる少女。
彼女の名前は諏訪子。妖怪の山にある神社の神様だという。
だが、○○からすればとても神には見えない。妄想に取り憑かれ、有りもしない存在を○○に求めているだけだ。
(すまないねぇ、暫くそうして居てくれないか。報酬や加護は私の方で出す。諏訪子は祟り神も操るから暴れられると厄介なんだよ)
もう一人の神である神奈子と、済まなそうな顔をした時折人里へ説法に来る巫女の姿が脳裏を過ぎる。
彼女ら曰く、自分はかつて諏訪子と子を為した男に瓜二つらしい。当時存在していた神奈子がそう言うのだから本当なのだろう。
こうして、○○と諏訪子の歪な共同生活が始まった。
最早居ない○○を自分に映し見る諏訪子は、○○に取って厄介な存在に過ぎなかった。
だから、気疲れの多い交渉人や書類仕事で溜まった愚痴を、彼女によく吐き出した。
諏訪子は怒りも憤慨もせず、ニコニコと笑いながら相づちを打つだけ。
○○もそれならとばかりに遠慮せず、開けっぴろげに諏訪子に接していった。
○○は子供の頃から優等生で、周囲の期待を一身に背負ってきた。
それは子供の頃から青年期に入ってからも同じで、彼は常にそれに応えて来ていた。
だが、その分自身の本音なども押し殺して生きている。
そんな彼の生き方は、幻想郷でも変わる事が出来なかった。
諏訪子、忌々しい同居人、彼女に対してだけ、○○は想いのたけをぶちまけていた。
気が付くと、仕事が終われば真っ直ぐ諏訪子が待ち伏せているであろう家に帰るようになった。
いつもはぞんざいな態度をとっていたのに、最近では態度が悪いがなにかにつけ構うようになった。
諏訪子は構えば構うほど嬉しそうに、深みにはまる様に依存してきた。
これが、最初は好意的か普遍的な感情を向けた対象であったら、こうにはならなかったろう。
歪んだ形で始まった同居生活は、半年を過ぎた頃1つの転機を迎える。
「……やってしまった」
1つの布団の中、裸で添い寝をしている諏訪子と○○。
幸せそうに自分の腕の中で寝ている小柄な少女。
何時も通りに晩酌をして、彼女に自分の内側を晒して。
それでも彼女は気味悪い位に笑顔を自分に対して向けてきた。
○○ととてもよく似た、全くの別人に対して。
凄くむかっと来た。例え、それが本当に自分の前世だとしても、凄く腹がたった。
気がついたら、全ての事は済んでいた。
彼女を寝床に引き込み、裸に剥いて荒々しく求めた。
諏訪子は何度も自分の名を呼び、愛してると囁いた。
自分の名前とよく似ていたから尚更腹が立ち、小さな身体を激しく責めた。
それでも、諏訪子の顔はとても満ち足りて穏やかだった。
そんな彼女に包みこまれ、○○は泣きながら諏訪子を抱き続けた。
「こいつ、だけじゃない……」
諏訪子の寝顔を見ながら、○○は呟いた。
「俺も、依存していたんだ……こいつが、欲しかったんだ」
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