■妖夢1

現在、冥界・白玉楼には、生きた人間が住んでいる。
名前は○○。元「外の世界」の住人。

私がいつものように広い広い庭の掃除に取り掛かろうとしていたときに彼は現れた。
彼曰く「散歩してたら迷った」らしい。ただ散歩するだけじゃ結界は超えられないはずなのだが。
悪戯好きの主の友人の仕業だろう。こういうことは何度かあったので私はすぐにわかった。
(人間を一人迷い込ませて自分は冬眠、春に様子を見てニマニマする、だなんて。人の悪い・・・)
とりあえずここが冥界の屋敷だと説明すると彼はとても驚いていた。
貴方は死んだ訳じゃない、とちゃんと説明するのに手間取ったのを覚えている。
そんな彼を見て、屋敷の主・幽々子様は彼をお茶に誘った。特に何も考えてない様子で誘いに乗る○○。
私は危険は無いと判断し、掃除に戻った。掃除に手をつけない事の方が危険だと思った。色々と。
私が掃除を終えて主の下に戻ると、○○が白玉楼に住むことが決定していたというのだから驚きである。
私の意見はことごとく無視され、新たな同居人が誕生した瞬間である。
幽々子様は、新しい遊び相手が出来ただとかなんだと言っていた気がする。
当の○○は落ち着かない様子でしきりに幽々子様の方を気にしていた。
私は先が思いやられた。
これが、初対面。馴れ初め・・・というのだろうか?

今、○○は立派な白玉楼の住人となっている。「生きたままで」というのだから驚きである。
ここは幻想郷と言う世界で、貴方の世界とは違うということや、
私や幽々子様は霊の類であることを説明したが、意外と驚かずに信じてくれた
○○は人が善く、おおらかな性格の持ち主で私とも、幽々子様ともすぐに打ち解けることができた。
彼はほどほどに幽々子様の相手をし、私の仕事を手伝い、そして冥界の暮らしを彼なりに楽しんでいるようである。
のんびりしたり、暇を持て余したり。基本的に冥界の暮らしはすることが少ないが。
だが時間というものはそれだけで意味を持つもので、幽々子様も○○も、お互いは何も言わないまま
互いに求め合う関係・・・恋仲へと発展していったのである。
私は主の喜びを素直に祝福した。西行寺家に仕える者、心から幸せに思っていた。
白玉楼にはものめずらしさから日替わりに色々な人や妖怪がやってきて○○と幽々子様を祝福したり、からかったりしていた。
まんざらでも無い様子で二人はお互いに愛を語り合う。温かい光景だった。
私は喜ばしくも、また一方である種うらやましくも感じていた。

○○が来て幽々子様にも色々変化が起こったのだが、その中でも一番驚くべきことは
幽々子様が自分で食事を作るようになった事だと思う。
・・・昔の幽々子様ならありえない!私が食事を作り上げるのを我慢できなくて厨房にまで入り込んでくるような人だったのに。
普段はもちろん私が作っている。食事をするときは私と、幽々子様と、○○で食べる。後片付けも、私。
気まぐれで作ったお菓子が思いのほか○○に好評だったらしい。
その日から、毎食幽々子様が作ることになって、私の長年の仕事が一つ減ってしまった。
いつも楽しそうに献立を考え、○○と新婚夫婦のように食事をする幽々子様はとても生き生きしていた。亡霊なのに。
とても夫婦らしいというか、恋人らしい行動をする幽々子様を私は見守ることしかできなかった。
「愛は最高の調味料なのよー」とも言っていた。
なんだか腑に落ちない。

○○は私と行動することも多い。幽々子様の命で人里に買い物に行ったり、庭の掃除をしたり。
飛べない○○をつかんで人里まで飛んでいったときはすごく興奮していた。
庭の掃除も手伝ってくれるのだが・・・たいていは役に立たない。ただの人間だからしょうがないとも思う。
だけど、そんなときに限って○○は、仕事を終えた私の頭に手をぽんと置いて
「妖夢は偉いな」なんて笑いながら、私を撫でてくれる。
私はそれが恥ずかしいので、怒ったふりをして○○の手から逃れる。笑いながら行為をやめてくれる○○。
私の方が年上なんだから・・・。と毎回怒ったものだ。
でも、その時の○○の手はすごくあったかくて、なんというか
もうちょっと撫でられてもいいかな、と感じたりした。

最近見てしまったことがある。夜、厠に眼を覚ますと、幽々子様の寝室から聞こえてくる、○○と幽々子様の声。
好奇心に負けて覗いてみると、肌蹴た浴衣の幽々子様と○○が、明かりをつけない部屋でお互いに愛し合っていた。
大人の口付けだった。幽々子様は鼓動を感じるかのように○○の胸に手を置き、
○○は幽々子様の身体を撫で回していた。お互いに互いを求め合う眼だった。
かあっと顔が熱くなるのを感じて、私は厠に行ってすぐ自分の寝室に戻った。
その日は、なんだか自分の中に黒いもやがかかったようで、うまく寝付けなかった。



さて、時は現在。
幽々子様は○○に遣いを頼んで人里へ行かせた。
いつものように私も一緒に行くのかと思いきや、私には話があるらしい。
幽々子様からお話があるのは珍しい事。私は妙な期待をして幽々子様の言葉を待った。
幽々子様はお茶をひとすすりし、私の目を見ずに言葉を漏らす。

聞き間違いじゃないのなら、「今日の晩、○○を殺すわ」と言ったように聞こえた。

何を言ったかわからない、という表情で呆けてしまったのだと思う。
そんな私に幽々子様は続ける。
今晩に自分の能力を使い、○○を殺す。
死んだ○○は亡霊になって、もっと長い時間を一緒に過ごすことができるようになる。
正式に二人で籍を入れる。誰にも邪魔はさせない。
白玉楼は二人の家にするため、私・・・魂魄妖夢には白玉楼を出て行ってもらう。
とのこと。
楽しそうに、とても楽しそうに語る幽々子様に私は違和感を覚えた。
うふふ、うふふと楽しそうに笑って宙を見ている。
私は最後の発言の意味がわからなかった。私が・・・白玉楼を出る?
それに○○は命を捨て亡霊となり、この冥界で幽々子様と共に過ごすことを承諾したのだろうか。
○○を死なせる事が幸せに繋がるのだろうか。私は何かがひっかかった。
私の心の中で何かが膨らんでいった。

しかし・・・と私が言葉を濁すと、いきなり幽々子様は力強く立ち上がり、普段の姿からは想像もつかない様子で喚き散らす。
聞くに堪えないのはその内容。人が変わったように語気を荒げ、私のことを罵倒し始めたのだ。
私が一緒に居ると○○に悪い影響が出る・・・?
私が○○に色目を使っている・・・?
私の主は何を言っているのだろうか。私が、私が何をしたというのだろうか?
挙句の果てに子供のように手足をばたつかせ、私に出て行けと喚き始めた。
長年白玉楼に仕えてきた私が・・・悪者みたいじゃないか。
はじめは何を言われているかわからなかったが、少し冷静になると理解することができた。
幽々子様は○○を独占したがっている。
恋よりも、愛よりも、深い何かで○○を手に入れまいとしているのだ。
そのためには身近な同性の、私が邪魔になるのだろう。
○○に接する異性はすべて敵に見えるんだろう。
影を落としたような暗い目をしている。その眼には、もう私は映っていないのだろうか。
○○しか見えない、その目。
私は悲しくなった。
そんなこと・・・そんなことで一族で西行寺家に仕えてきた私の存在が無碍にされるなんて。
私は主を一瞥して、何も言わず自分の部屋に向かった。

部屋へ戻っても私の心は落ち着かなかった。
何が幽々子様をあそこまで駆り立てるのかがわからなかった。私は布団へ横になった。
○○はもうすぐ遣いから帰ってくる頃だろうか。
○○のことを考え、幽々子様のことを考える。
何かが私の胸を、ちくちくと刺激しているような感覚に見舞われた。
あの夜の、黒いもやもやが私の心にまたかかったようだった。
自分が事実上の解雇を言い渡されたことよりも○○の事の方が脳内に浮かんできてしまう。
○○・・・

「釣り合わない・・・」と私の口から言葉が漏れた。
その言葉が私の中でこだまして、だんだん大きくなっていく。
それはまるで洪水のようで、私の中を一気に駆け巡る。
そうだ。幽々子様じゃ釣り合わない。○○と幽々子様じゃ釣り合わない。
釣り合わない。似合わない。相応しくない。
幽々子様なんて、いつも何考えてるかわからないし、わがままだし、抜けてるし・・・!
その上ガサツで、頼りがいが無くて、人の気持ちもわからないで・・・!
幽々子様じゃ、だめ。
○○にはもっと相応しい人がいる。
○○をもっと愛している人がいる。
私。
私だって○○が好きだ。
初めて見たときから○○が好きだったのかもしれない。
私だって一人の女。○○のことを・・・愛している。
幽々子様よりずっとずっと愛している!私のと比べれば幽々子様の愛なんてちっぽけだ。
私は○○が好き。いや、きっと○○だって私のことを・・・
そうだ。○○に必要なのは幽々子様じゃない。私だ!
私が○○に必要なんだ!
○○と私は結ばれるべきなんだ!
私が○○を・・・幽々子様から救わないと!
盲目の愛に狂った幽々子様から○○を救うんだ、私が!
○○・・・!

何かが私の心を覆い尽くしたか。それとも、私の心が何かを覆い尽したのか。
無意識のうちに私は剣をつかんでいた。
迷いを断ち切る、白楼剣・・・

その夜、私は主に手を上げ、白玉楼から○○を連れて逃げ出した。

不意をついて、主に弾幕を放つ。
もう主とは思わない。私の愛を邪魔する、ただの障害・・・。
雌豚と言い放って切りつけてやった。私はこんな奴に邪魔されるつもりはない。
自室で寝ている○○の身体をつかみ、宙へ飛び上がる・・・
このまま白玉楼を、冥界を抜けて、どこか遠くへ。
結界も超えて、幽々子様も、誰も来ない遠くへ。
後ろからは、美しい色とりどりの蝶。私を殺そうとする美しい弾幕。
私に向かって飛んでくる蝶を避け、かいくぐり、距離を離していく。
人里の上を飛んで、山を越えて。
風は冷たかったが、○○の体温はとても暖かかった。
蝶の追っ手が見えなくなる頃には、もうどこを飛んでいるのかわからなかった。

私は興奮を覚えた。
心の中から何かが湧き上がる。
頬が緩み、口から笑いが漏れてしまう。
はは、あははははははははははははは
私は、私は○○を手に入れた!
私は○○との愛を勝ち取ったのだ!
あはははははははははははははははは
私が、私が○○と結ばれるんだ!
あはははははははははははははははは
○○、大好き!

私は、愛を手に入れたことを確信する。笑いが止まらなかった。
○○は、今や私のものだ。

ここは幻想郷なのか、それすらわからない色の無い大地。
私はそこに○○をゆっくり降ろす。
男らしさの中に、子供らしい可愛さを残す○○の寝顔。
私はその顔を愉しみながら、頭を撫でる。
愛おしい。愛おしい。愛おしい。
心が満たされている。これが愛なんだ。私は感じた。
人を愛するということがこんなに心地よく、そして美しい事なんて。
うふふ、と自然な笑みが漏れる。
○○には、何も必要ない。必要なのは、私。
私には○○以外必要ない。
これが、愛。
これから、私と○○はどんな生活をしていくのだろうか。
互いに愛し合い、求め合い。
まだ笑いは止まらない。
○○のすべてを知りたい。○○のすべてが欲しい。
そう思ったとき、私は寝ている○○に口付けしていた。
○○の口内を貪る。
甘い。これが、私の愛する人の味。
甘かった。とても甘かった。なんてことだろう、私の愛する人は、とてもおいしい。
私は夢中で○○を貪った。甘い。甘い。
じゅるじゅると汚い音が鳴るが、それすら私を祝福するかのようだった。
私の心は、○○で満ち溢れていた。
まだ、笑いが止まらない。

愛する人の目覚めに、私はもう一度キスをし、悪い女から救い出したことを説明する。
目が覚め、説明を聞いた○○は、とても落ち着かない様子だった。
これから愛する私との甘い生活が始まるっていうのに。たわごとのように幽々子、幽々子などと呟いて震えている。
どうしたんだろう。愛する人が病気になってしまったのだろうか。悲しい。
私に向けて欲しいのはそんな眼差しじゃない。私の愛が伝わらないのだろうか。いや、そんなはずはない。
私は思った。○○には迷いがあるんじゃないか。
もし迷いがあるのなら、愛する私が断ってあげましょう。
まずは、歩いて私のいないどこかへいってしまわないように、足を。
私以外の者まで視界に入れてしまう、使えない目を。
愛の言葉以外は聞きたくないので、口も。
迷いを断ち切る、白楼剣。
うふふ。
笑いは、まだ止まらない。









ゆゆ様と妖夢に狂おしいほど愛されたい 終

>>up0225




ねえ、○○さん。
私には、悩み事があります。
剣士にはあるまじき事なんですけれど。

ねえ、○○さん。
私は、貴方が好きです。
あの日伝えた想いは、今も微塵の揺るぎもなく、
私の心に在ります。

ねえ、○○さん。
私は、貴方に近づく女性が嫌いです。
私には出来ない明るい笑顔。
見ていると胸がもやもやします。

ねえ、○○さん。
私は、自分が嫌いです。
己の気持ちの整理さえ出来ない未熟さ。
切り捨てたいくらいです。

ねえ、○○さん。
私は、貴方が嫌いです。
私以外の女の子に優しくしないでください。
沸き上がる殺意を押さえられません。

ねえ、○○さん。
○○さん?
貴方は、私のことを好きでいてくれますよね?
○○さん?

4スレ目>>329




何も見えない 何も話せない 何の匂いも感じない
分かるのは、自分が住まわせてもらっている家の
聞きなれた二人の声と、片腕を握る少女の手だけ

「妖夢、もう一度聞くわ。それは 〇〇なのね?」
「顔がなくなったくらいで分からなくなるなんて、幽々子様らしくないですね」

ああ、やっぱり
朝から何が起こったのかわからなかったが、やはり今の僕は のっぺらぼうと言うわけか

「……どうやったの」
僕の疑問を幽々子様が代弁してくれる
「簡単ですよ。人魂を食べれば、その者の顔を奪う事ができる
紅魔館の図書館で、そう書かれた文献を見つけたんです」
その本なら、僕もこの世界に来る前から知っている
隻腕の妖怪学権威の書いた本にそんな話があった
ってことは、昨日妖夢が夜食に作ってくれた天ぷらが…
いや、材料が何なのか教えてくれない上に
夜食に天ぷらってところで何か変だなとは思ったけどさ

「それで、どうしてこんなことをしたのかしら」
いつものおっとりした口調ながら、幽々子様の声に怒りが混じっているのが分かる
「だって、〇〇さんがのっぺらぼうになってしまえば、他の女が寄ってきたりはしませんから」
「(は)」?
僕の出ない声と幽々子様の言葉が重なった
「明るくて人気者の〇〇さんじゃない、ただの妖怪なら、私が独占できるんです
こうでもしなければ、私なんかじゃ、〇〇さんを繋ぎ止めておけないんです」
そんなことない
そう言いたくて、その一途な心が嬉しくて、僕は妖夢と繋いだままの手を握ろうとする

「それに、私たちは、もう一つになれましたし」

手が 止まる
嘘だ
僕には全く覚えがない
そう感じたのを察したのか、妖夢が初めて僕に向かって 言った

「〇〇さん、昨日、人魂の天ぷら 食べましたよね?
あれ、実は

ワタシノナンデス」

何を言っているのか理解できない
いや、理解したくない
いつも彼女の傍らに浮いていた魂を、僕が食べてしまったなんて

「嘘を言わないで! 妖夢とあの魂とは感覚を共有してるはずでしょう!?
油で揚げるなんてできるわけが……ッ!!?」
妖夢が服のボタンを外す気配の後、幽々子様が絶句した
つまり、その服の下は……
「服で隠せるところだけに火傷を作るように揚げるのはなかなか難しかったです
けれど、そのおかげで私は〇〇さんと一つになれたんです!
それなら、こんな火傷なんて痛くもなんともありませんよ!
あはははははははははははは!」
狂ったように始まった笑い声
それを静止するすべを、僕らは何一つ持っていなかった