| 第22話 『最後の「皇帝」』 |
| ストーリー オカリナのジーグ戦艦にはオーボゥが忍び込み、艦を自爆させる。(イマイチ自信ないです) オカリナは、オーボゥに父の姿を見る。 ジーグ戦艦はスラー要塞に墜落し、スラー要塞は海面に落下する。 妖鳳兵の執拗な攻撃にハーメルは再び姿を変貌させ、魔族の血の覚醒を告白する。 焼け跡にピアノが鳴り響く。ライエルの最後の魔曲『皇帝』は死者たちを動かし、サイザー を十字架の刑に処し、フルートに剣を握らせハーメルに向かわせる。 しかしトロンが演奏を中断させる。フルートはハーメルヘの愛を誓い、その光は死者たちを 癒す。 全てを見物していたシターン国王は嘲笑し、体内から取り出したパンドラの箱を高く掲げる。 個人的感想 ◆いよいよ麻薬の世界。今回は冒頭の爆発崩壊シーンから大迫力。スラー要塞が落下し、巨 大な飛沫・波が空を覆う描写…こんな所は潔くCGだったりするから、ハーメルン画面は見 飽きません。事態に唖然となる人々の表情も、音楽と共にいよいよ終幕近い悲愴感を滲ませ ております。 ◆オーボゥもいよいよ正体がニクいチラリズム露出されてきたのだが…何せ私、最初に見た 姿があからさまに正体だったもんで…このオイシすぎるドキドキ感が味わえな〜い(泣)! チョ〜クヤしい(泣)!…以前、24・25話から見始めるのも悲劇を満喫する一つの方法 などと己の遅れた視聴を正当化してみたりもしたが、やはりTVアニメはちゃんと1話から 見るに越したことはありません(泣)。…ただ、25話のラストシーンを単なる1話の再現 フィルムとマチガイ記憶していたおかげで、ショッキング効果は倍増したもん!それは強が り。…しかしホント惜しいわ、ロマンス・グレー…まではいかないか。 ◆一方、ロマンス総白髪化パーカス。女王への忠誠を尽くす家臣として…というよりは一人 の女性を愛し守る男として頭が白くなろうが、それこそロマンでなくて何ですか。オモテに 出さなくても痛いほど分かります、大神官、お前もだ…って、若僧は「微笑みが見たい」と か言ってたけど、それ以前から何かありそうだったし。パーカスとクラーリィって、ホルン だけを胸に秘め一生独身貫きそう。「独身同盟」とか組んでたりして。ロマン。 ◆ところで内容にまったく関係ないんですけど、「中庭のパーカス様よりご伝言」…このセ リフが耳に付いて離れない。「中庭のパーカス」…パーカスが中庭の落ち葉掃きしながら、 たまに休んでお茶でも飲んでるような絵が浮かぶんだよな…「中庭」ってそういうイメージ がありませんか。実際は医師団に囲まれてヨイヨイになってんだけど、そのギャップがまた ヘンテコで笑いそうになる私。なんか語感もいいのよね…「中庭のパーカス」。しかしこれ から始まる修羅の曲、その中庭から響き始めるのでした。 ♪ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番『皇帝』 ◆頼むからコンツェルトバージョン出して下さい。 ◆さて、クラシックの名曲を利用することは諸刃の刀。親しみある完成度の高いメロディが 瞬時に耳を捕える一方、ポピュラーな音楽に絵空事の世界が霞んでしまう危険性も孕むし、 実際その方が多い。キャラが演奏しようが内容に関わろうが、クラシックはどこまでもクラ シック、「劇中音楽」にはなり得ない例はもうイヤというほど…。 ◆ハーメルンは曲を画面や他の音声と濃密に結び付けることで、これを解消しました。しか しそこで安泰に落ち着かず、何も場面に到底見合うとは思えぬ曲に挑戦し、それさえ我が物 にしてしまう手腕にはいつも驚くばかり。…一つの作品が額面通りのアレンジ・受け取り方 しか許されないとしたら、ホントこのアニメって「原作のイメージが云々…」と同じく、あ るいはそれ以上に嘆くべきことがあると思います。魔曲『皇帝』なんて、原曲の勇壮華麗な る世界をブチ壊しにする扱いですもの。勿論私はそこにこそ、原曲の個性がより研ぎ澄まさ れた音楽を聴き取るのですが。 ◆最後の魔曲は聴かせ方も変則的。初登場で演奏開始時に演奏者が画面に存在しない法則は 最後まで守られましたが、そのジラせ効果も最長。始めの画面は焼け跡に横たわる死々累々、 サイザーの足を掴む正体不明の手…これだけで終わってしまう。ピアノという点でライエル の所作は知れるのだけど、赤茶けた大地・煙・死体の絵面にはおよそ不釣合な、一瞬何かの 聞違いなんじゃ…と戸惑ってしまうほど脳天気できらびやかな、この音楽は何。 ◆演奏者の意図がまったく読めない不気味なムードを抱えたまま、画面はトロンたちに移る。 そしてフルートがハーメルを意識するに及んで怒れる演奏者の登場。しかし再開された演奏 は記憶の蘇ったフルートを高揚させる行進曲にも聴こえ、やっと調和を見た…刹那、鍵盤は 乱暴に叩き付けられてしまう。そして、同じく記憶の蘇ったハーメルの回想を責め立てるか のように再開。哀れなサイザーの姿を痛々しく飾り、演奏者は激昂とともに曲を名乗り上げ、 固まる人々を置き去りにしてAパートは終了する。因みにこの部分、ホルン(楽器の方ね) が高らかに歌ってピアノのコーダが入る終結は原曲にはありません、頼むからコンツェルト バージョン出して下さい。 ◆そしてBパート、2話のホラー・『くるみ割り人形』に匹敵する、いや画面さえ…挿入さ れる回想バンクで違いがよう分かる(泣)…第1楽章並に凝ってくれてたら、それを越えた かもしれないホラー・『皇帝』地獄絵図。軽快な『くるみ割り人形』が戦火の中で奏でられ、 「お前、絶対脚の骨折れてるだろ〜(泣)!」てなスフォルツェンド兵が脚ひきずりながら 歩くさまも強烈だったが、今回は華麗な『皇帝』が煙立ち込める焼け跡に響き、「お前ら、 絶対首の骨折れてるだろ〜(泣)!」てな死体の群れがザックザックと…(感涙)。ピアノ 弾きは復讐鬼と化し、天使は張り付けになり、少女は愛する少年に剣を振りかざし…ああ、 ここまでも異様で残酷で哀しく美しい世界がかつてあったろうか、いや無い。 ◆「こんな場面でこんな曲使うなよ〜っ(泣)!」の一つの到達点を見る思い。そう、陰惨 極まる場面は絢燗豪華な音楽に彩られてこそ、最高の悪夢を見せてくれるのだ。初見時はも う「私、ホンットにアニメファンやってて良かった〜(泣)!」と感極まったほど、私にと っては全話中ベスト5に入る怒濤の見応えを誇る回であり、できたら心酔しきっていたい… のだけど。 ◆というワケで、物語を冷静に見てみます。まずは第1楽章と第2楽章で魔族化…じゃなく て別人化したライエル。第1楽章のこの方は、個人的な復讐と同時に人間生活を脅かす魔族 存在そのものに対抗する民間代表的な凛々しさも兼ね備えていました。数々の疑惑匂う友へ の態度も、まずは内面尊重に努めるものでした。結果、12話では正体が人間であれ魔族で あれ、決定権は友に任せた…その意思選択の重要性を本人より先に察し、その行動に唯一理 解を示したオトナぶりだった…のに。 ◆これが正体がバレた途端、単に姿が「人聞のハーちゃん」であるか「一匹の魔族」である かの判断に終始してしまう。両親の仇である三本角の悪魔の姿を友に見たくはなかろうが、 変貌の理由も見ようとはしない。対・魔族存在の大義も三本角の悪魔のカタチだけに憎しみ を集約させてしまったような小スケール化が哀しい。友への信頼と、両親の復讐…どちらも 貫けない葛藤と苦悩。それを極端なワッカりやすさでなく、もっと深い部分で描いて欲しか った…などと言いながら。やつがもう傍目から見ると滑稽なほど余裕のないところまで追い 詰められていたからこそ、今回の大爆発はカタルシスも膨大でしたわ…。 ◆考えてみればライエルという人も、キング・オブ・「断ち切れぬ絆」、ケストラー一家と の奇縁に塗れた立場だったのよね。パンドラ・ハーメルとご近所付き合いしていたおかげで 自分の家族を奪われるが、そのパンドラの歌を口ずさんだばかりに新たな家族も奪われる。 座長はサイザーの大鎌に砕かれ、ザンパーノたちはパンドラの箱から始まった戦火に消える。 そしてサイザーは兄が人間的な環境で母に愛され育ったことが許せず魔族化を迫るが、ライ エルは友が魔族の血を引くことが許せず人間の姿しか認めない…復讐相手は共通しながら、 意味合いは全く逆という皮肉。 ◆さらに、その実の子供たちは記憶せぬ母・パンドラの実像を一番よく知っていたし、自分 の親を殺した友の親にやはりマセガキの初恋疑惑濃い慕情を見せ、実の子供たち同様魔曲も 授かった。それを生業とし披露してこそハーメルとの再会・再々会を果たし、最後はその力 で子供たちを打ち倒す勝負に出るしかなく。 ◆これらを本人がどこまで自覚しているのかは分からないが、この一家と一度ケジメ付けと かねばならぬアセリはあったのか、「最後の魔曲」と宣言した決意。何もかも「お前のせい だ!」発言も実は全然ハーメルのせいじゃないやつも入ってるんだけど、ハーメルとの出会 いから人生が狂った立場の言い分と読み取れる。 ◆ただ、ザンパーノたちの死亡は分かり辛くてオイオイライエル、勝手に殺すなよ…とツッ コんでたらシッカリ死者の群れに参加してるし。 ◆そしてすべての始まりであるアンセムの事件。4話の描写ではバイオリンを手にしたパン ドラが魔族相手に魔曲で立ち向かったかに見えたが、今回のハーメルの回想だとかなり状況 が違うぞ〜?…せっかくのネタ振りがこんな解明でいいのだろうか。イヤ、この話だけなら 納得できるし、幼いハーメルの絶望の表情がこれでもか!と分割切断される辺り勢いに飲ま れてしまうんだが…4話以来ジラされ続けたにしては、真相はどうも物足りないのでした。 ◆そのハーメルもいきなりカミングアウト。「今わかったよ…」わかりません。「俺の中の 何かが血に飢えて…」こっちの方こそネタ振りが欲しかったわ。シュリンクス王を刺した時 は何らかの発作を臭わせたけれど、以降の魔族化は自分や他者を守るためで、積極的に血を 求めるような部分は微塵も見せなかった。その上でその告白、唐突すぎるんでは…。 ◆また今回から急激に雄弁になるし。完全に魔族化すると頭の回転も早くなるのか、一時的 な感情に突っ走る哀れな友を諭すかのような理路整然とした口調。もはやこっちが思慮深い オトナぶり、それは「魔族には魔族の正義があるかもしれない」という物語世界を根底から 揺るがす重大発言にまで及ぷ。が…、ネタだけ振っといてなぜ掘リ下げない〜! ◆思えばこれに近い重大発言が、第1話でもあったのです。「魔物とは、もともと魔界の力 が苦しむ魂を召喚し人間界に甦らせるもの…」つまり「魔族」とは人間から生まれるもの。 では人間と魔族の共存・戦いがここまで普遍化した背景には、「苦しむ魂」をそれだけ量産 してしまった人間側の落ち度があるワケで。死者の魂を…べース風に言うならその「怒りと 恐怖」を実体化してしまう何らかの力も働いてるんだろうけど、半分は自業自得の末の世界 ということに。 ◆また戦いがある限り、人間界が魔族の脅威に晒される限り「苦しむ魂」はワンサカ生まれ るんだし、それが再び魔族となり人間界にはびこるということは…現状は悪化しこそすれ、 永遠に解決されない世界だと最初に明言しているも同じではないか〜っ!…スゲーや、この 番組…と呆れたものよ。ハーメルが残り24話×30分間、ひたすら『レクイエム』を弾き 続けるという手段もあるが…それはそれでスゴい番組だな。ゼヒ見たいわ。何の話だっけ。 そう、そして「怒りと恐怖」が原動力である魔族…つまりは人間のマイナス感情衝動の権化 であり、その源泉である人間存在から否定しちまえ!という立場、初めての青年の主張!? と、ドキドキして座り直したってのに…(泣)…それが無かったから今勝手に代弁してみま したついでに勝手にそう取らせて頂きます。 ◆となると、ライエルが今やっていることはロコツに魔族フォロワー。「苦しむ魂を召喚し 人間界に甦らせる」現象のインスタント版な魔曲効果。焼け跡でそれを弾く羽目になる「現 在の自分」は魔族ハーメルとの因縁から生まれた…ならばその起点、人間ハーメルとの出会 いから否定しちまえ!という考え方。人間ハーメルとの回想場面に被るフルートヘの勧誘セ リフって、サギに遭った被害者同盟意識に訴えているようだったし。 ◆こういった点に触れて、トロンの「どっちが魔族なのかわからないよ!」も具体的実感を 帯びるのでは。ハーメルの「まだ人間の」愛する者を持つがゆえの弱点を突くことで倒そう とするなんざ、意識してやったら魔族さえビビりそうな卑劣な作戦だし。それが無意識だっ たから「矛盾」と認め凍りついた時点、あるいはトロンに一大指摘を受けた時点で演奏をや めずに「終わらせるんだ!僕たちの旅を!」と、最後まで「(前言を超訳すると)ハーメル を生かしとくと、僕たちマトモな人生歩めない」主義を貫くか…と思いきや、なぜトロンに 体当たりされたぐらいでやめる。 ◆演奏をやめて素に戻った理由が私にはイマイチ分からんのですが…被害者同盟・フルート の意に反した愛の告白を見せ付けられたからか?「本当に人が望んでいることなんて、誰に 分かる…」の自責も、自他の「怒りと恐怖」の対象をハーメル一人に凝縮したことより、他 者の心を操るやり口だけを後悔しているような…。シターン国王に椰楡されてキッ!となっ てたし。「本物の魔族と成り得るものではない」人間の心の証明ポイントがどうもボヤけて る気がするのです。…いや、そのボヤけ具合が人間イズムなのか。 ◆それにしても文字通り、物語の根本に迫る大舞台を場末の旅芸人に任せたばかりに、手ぬ るい三文芝居化。もう、おそろしくシンパシーを感じたわ…シターン国王。 ◆などと言いながら。ライエルの中途半端な言動・ツメの甘い活躍に関しては、彼の最終話 ラストの表情さえ見れば、途中経過はこれで良かったのだ…とも思えるのです。 |
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第23話 『たち切れぬ絆』 |
| ストーリー ついに目前に現れたパンドラの箱を巡る、ハーメル・サイザーの戦い。 シターン国王の真の目的こそ、すべての元凶であるパンドラの子供たちが殺し合う姿を見る ことであった。国王の言葉に、ハーメルの姿に、愕然となる人々。 ワルキューレがハーメルを押さえ、サイザーは国王に大鎌を降り下ろす。しかし間にコキュ ウが割り入り、サイザーに肉親同士の暖かな感情・断ち切れぬ絆を説き、懺悔を請う父の腕 の中でこときれる。 直後、背後に出現したギータによって国王の体は切断される。ギータは箱を開けられず手間 取るサイザーに苛立ち、口を滑らせる。サイザーはギータに詰め寄るが、新たな姿で登場し たオーボゥが真実を明かす。母の元から魔族にさらわれ、偽りの復讐を与えられたサイザー。 魔族に逆らうサイザーに、ギータは超獣軍の手中にあるパンドラの姿を見せる。北の都から 運ばれた、水晶漬けの母。固唾を飲む一同の前で水晶は崩れ去り、パンドラは命を吹き返す。 そして母は、娘に語り掛ける…。 個人的感想 ◆さあ、ラスト3話に突入。もう大変です。12話並みにいろんなことが一度に起こる回… と言えば、内容も12話との対称性が意識されます。ハーメルがこれまでの過程を心情吐露 にて再確認、次なる目的に向けて主役然と戦った末に、母・パンドラの酷な言葉で閉じられ た12話。今回のサイザーは、この後を追ったかのようです。 ◆ただ魔曲が無い分、物語を透徹して彩る要素が欠けて…もいない。今回、魔曲に等しい力 で悲劇を痛烈に浮き彫りにしたもの…それは、あの「海」でありましょう。薄曇りの空の下、 不自然なまでにぎらぎらと光り輝く海。画面においてもそこだけが実写のごとくきらめく、 暴力的なまでに美しい水面…その絶対的な存在を主張してやまない海。 ◆ああ、等しく大自然から生まれる生命への、ロコツな賛歌が聴こえる。誕生・成長・繁栄 へのミもフタもない肯定。歓喜。祝福…なんて麗しく騒々しい輝き!…そして呑気な鳴き声 をあげて、自由に空を舞うカモメたち…。魔曲でお馴染み、逆要素混入による悲劇の研磨、 今回は舞台と事件の不協和音として奏でられるのです。 ◆そして私、TVアニメ究極の…これぞ本当の主役交替劇!というものを初めて見たのだが、 何たるキツさよ…。今までは辛苦ばかりをなめさせられる線の細いヒーローには同情を禁じ 得ず、圧倒的な力でこれを虐待する妖鳳王は脅威に満ちた存在であった…のが、終幕を前に 立場は逆転してしまうのだから。 ◆バイオリン弾きの端々しい美少年は今や禍々しく醜悪な体躯を晒し、中学生程度の語彙し か無さそうだったのが急に小ムズカシイ言い回しで切れる妹と堂々渡り合い、力はヒロイン の愛を得た自信もあるのか優勢で容赦ない。一方の妖鳳王は、その甲冑と大鎌を取り去って しまえば正体は両親の愛に飢えたハダカの少女でなくて何であろう…。ああ、これまでの主 人公側視点から描かれた物語が覆される感覚…。兄妹の肉弾戦には25語ラストシーンとは また違ったショックを受け、初見時は寝込みたくなりましたわ。 ◆しかも「これが見たかったあー!」と明言なさるシターン国王…。怨念の復讐手段に戦慄 しつつ、これぞドログチャにしてまっとうな人間臭さ!得心至ったものよ。人の心。その負 の暴走を描くアニメには以前から目の色変えてきましたが(状況によっては正方向にしか乗 っ取らない人格のほうが歪んだ描き方だとさえ思う)、生々しさの点に置いてただ今シター ン国王NO.1。本物の怨念はタダのキチガ…あイヤ、正気を痕跡もなく消失化現象でも、 安直なブラックナンタラ・ゼロナンタラ呼ばわりでも括れぬ威力だわ。…って、違うアニメ での怨念を持ち込むな〜。 ◆ただ惜しいのが、コレまたイキナリの「お前との将来」「今ひとつになった俺たち」発言。 …頼むから前フリを…後継者様…。22話でフルートの告白を受けた際に一言コメントでも あればハーメルの一時的なラブ運絶好調!はしかと展開上に鎮座し、切羽詰まってきた孤独 なサイザーとの対比においても、最後に本人が迎える末路との対比においても、よりキツい 素因となってもっともっと寝込みたくなれたものを…。アイキャッチの木陰で休む少年と、 この真っ赤な後継者様がイマイチ結び付かない気がするのです。それを父親との対比にて、 完全に魔族化しないとシャイな性格が直らなかった・おかげで童貞のまま封印されちまった 悲劇と見るテもあるんだけど。 ◆さて、兄妹の…世界の雌雄を決する戦いは、べースの「よーし!」の掛け声を合図のごと く始まる。「よーし!」って…そんなアッサリゲームでも始めるような軽さでいいのだろう か。いや、魔族の存在さえ無ければ…という物語で本末転倒だが、魔族の余裕に満ちた言動 って妙な救いに見える時がある。10話の大神官様相手に腕白坊主のケンカやってるドラム や14話の友好的な(!?)挨拶を残して退散するギータなんて、そんな筈はないのだが、 一瞬物語全体を光りさす方向へ導いてくれそうな錯覚を起こしてしまうのだ。軍王、みんな マイペースで滅多なことで取り乱さないし粘り強いし…。この錯覚(いや事実?)は、何と 物語の最後まで「ある救い」を残す。べースの言葉が、悲しみに満ちた結末唯一の突破口と も聞こえる皮肉。常に人間より一枚上手な魔族でありました。 ◆だけど人間は、「たち切れぬ絆」で強くも弱くも変化するあやふやな生き物。コキュウと シターン国王最後の行動はその好例でありましょう。父には「人形」と、サイザーには「デ ク人形」と…もうメタクソに言われながらも「絆」に殉じたコキュウ。子供たちを復讐の道 具に仕立て上げた父を責めることも見捨てることも出来た彼が最後に選んだ行動は、それで もなお父の愛を正面から信じればこそ…というよりは一種のヤケか開き直りか大いなる賭け にしか見えないんだが(「俺は…親父様をーっ!」という憤慨した気合いからして)、結果 は見事父を動かした。 ◆さっきまでの冷酷な笑みがいきなりウェットになる父、これじゃ場末の旅芸人の三文芝居 フォロワーじゃねえかぁ(泣)…とも思うが、結局は土壇場で意志を貫けなくなるライエ類 として描かれたのか…とも受け取れる。勝手な造語つくるな。登場人物がどんどん自分の事 しか考えなくなっていく終盤で、他者の情にモロく破れる存在もまたアリってことか。 ◆そしてスラー親子の絆はサイザーさえ放心させた。コキュウ最後の主張は、ズケズケマン 1号に「だまれ!」しか反論の余地を与えぬ凄味、これまでの言われっぷりを何倍にもして 突き返すかのような熱弁。サイザーはつゆ知らぬ「肉親に通い合う暖かな感情」…こんな正 論に実は一番弱そうな相手をここぞと攻撃。まったく逆の価値観を突き付けられて唖然とな るサイザーに、その育ての親・魔族の慇懃無礼な挨拶。ギータは普通に話し掛けただけだろ うが、今の彼女にとっては追い討ちを掛けるようなイヤミ…。 ◆さらに鍵を奪おうとするフルート。「この世でたった一人の」ハーメル、魔族の覚醒も愛 の告白も同時に受け入れた少女の本音が見える。彼女にとって箱を開けさせぬ根拠は、世界 の終末回避より何より自分の恋路の確保であった。ああ、ヒロイン…。常にストーリー展開 に抵抗を示し、作品世界を丸ごと恋心で包んでしまう…こんな面倒なキャラを敢えてヒロイ ンに配置し、少女キャラをここまでも生々しい女として描くアニメがかつてあったろうか、 いや無い、多分(感涙)。終盤に向けてフルートはその平凡さゆえに恐るべき存在感で君臨 し始めるのだが、サイザーもその驚愕は隠せない。たかが一人の娘の抵抗に…いや、だから こそ?何ともまあ律義にしてみみっちい鍵の所有権を訴えるのが精一杯。 ◆これにアワてたギータも本音ポロリ。突如出現のオーボゥも本音ポロリと、ポロリ族化が 始まっているのか!?…所でオーボゥって、年頃の娘の霰もない格好を衆目に晒して平気な んだろうか…。人間の女に心奪われ魔界を追放された元・妖鳳王は、その女性の子供を父の ごとく見守る他に何もできず、実の娘も再会するや重傷負わせる始末。 ◆一方、箱を開けさせる目的のみとは言えサイザーを立派な妖鳳王に育て上げた魔族。その 事実に打ちひしがれる姿に何の悪びれもしないべースの余裕綽々たる態度、大失態にもめげ ぬギータの根強さ。…サイザー、アナタもういっそのこと頑強集団・魔族に与した方がいい んじゃない?「愛」や「復讐」に心乱されぬこやつら、かえって信頼性高くて後々間違いな いよ…などとまた奇妙な錯覚を起こしてしまう私。どの道、結局サイザーは魔族に与する形 にはなるのだし、母・パンドラもそれは同じことではあったが…。 ◆今回、いや全話通しての本音ポロリ大将もついに登場。水晶の檻から、初めて外気に踏み 出たパンドラ。長い髪を潮風に靡かせ、潤んだ瞳が開く。慕情の波にとろけそうなサイザー のまなざし。しかし母は十数年振りの我が子との感動の再会も、その境遇・成長を思いやる 素振りも、ましてやもう一人の我が子への一瞥さえも…このような「まずあるべき段階」を 一切踏まなかった。その言葉は娘への冷静な呼び掛けと、「箱を開けて…」という要求だけ であった。 ◆今回でその真意は判明しない。この時点ではまだ、魔族に操られている・母は母なりに何 か壮大な企みがある・一刻を惜しむ急いた事情がある…などと推測するも可能。しかし残る 2話によって、パンドラの蘇生・嘆願の果てしない痛ましさを知ったとき…ラスト3話は、 この(音楽もズルいー!)場面に始まり、未だ涙なしでは見られないんですわ私。 |