ギャラクシーエンジェル〜満たされるもの〜
プロローグ
春を思わせる穏やかな日差しと柔らかな風に誘われたのか、緑が鮮やかな公園のベンチに青年が腰を落とす。
手にしていたケースから、書類の束と遅めの朝食だろうか、サンドイッチを取り出した。
新鮮なトマトとレタスを挟んだ、エンジェル隊のミルフィーユ・桜葉の特製サンドイッチを一口しながら書類に目を通す。
それは青年の預かる宇宙船エルシオールの状況をまとめたレポートである。
エルシオールはロストテクノロジーの結晶と言われた船だけあって、クロノストリング・エンジンは半永久的に動力を生み続ける。
その出力はケタ違いで、全施設・・・もちろん武装も含めフルに稼働させてもお釣りがくるほどだった。
「余裕を持って設計したのでしょうけど、それにしても過剰なのよ・・・エデン文明はこれだけのエネルギーをいったい何に使うつもりだったのかしらね」
白き月の技術者であるクレータが感慨深く呟いたことを思い出す。
彼女の知らぬことなので青年も答えようはない。
もっともクレータにしても回答など期待してはいないかったのだろう、すぐに紋章機の整備を再開していた。
エルシオールや五畿の紋章機に必要な資材についても艦内の施設で自給可能な状態だという。
よほど深刻な被害ならば白き月の工廠が必要になるが、という注釈はついたがこれにはさすがの青年も驚いた。。
ロストテクノロジーの結晶といえば心強いが、運用するとなるとかなり厄介だと考えていた。
補給の面で一番心配だったことは一先ず解消されたといってよい。
「とりあえず食料が先ということか」
青年は報告書の最後に記載してある内容に目を落とす。
エルシオール本来の能力から言えば食料についても問題はなかったが・・・。
水や人工タンパク質など必要不可欠なものはすぐにでも生産可能だが、生鮮物を供給する施設・・・簡単に言って田畑はどうしても人手と時間が必要となる。
報告書を読み終わり、食事を再開しようとサンドイッチに手を伸ばす青年。
「・・えっ?」
パンの手触りとはあまりにかけ離れた手触りに驚き思わず声をあげてしまう。
青年に体を掴まれながら、サンドイッチを入れた包みに小さな体で抱きついている動物
やや紫がかった体色と大きな耳が特徴あるそれに青年は見覚えがあった。
「・・ウギウギ・・・どこですか?」
近い所から不安そうに心配するような少女の声が聞こえる。
どうやら間違いないようだった。
「ウギウギならここにいるよ、ヴァニラ」
「えっ・・タクトさん?・・・あっ」
青年、タクト・マイヤーズに呼ばれ、ヴァニラ・アッシュが見た光景は、自分のペットが司令官の朝食を食べ終え満足そうにしている姿だった。
「・・申し訳ありません・・」
恥ずかしいやら情けないやらで、ヴァニラは消え入りたい気分になった。