小さな幸せ
夏の木陰、ひと吹きの風に、幸せを感じたことはありませんか。急な雨、ぬれるのを覚悟で歩き出し、思いがけない雨のやさしさに、ほっとしたことはありませんか。順番を待つ客同士、いつの間にか打ち解けて、会話が弾んだ経験はありませんか。寒風の中、ほのかに香る沈丁花。ベランダをチュンチュン跳ねる子雀の姿。ごく当たり前の、何処にでもある日常ですが、その場所にいられる小さな幸せを、ふっと感じさせてくれます。ベビーカーから笑いかける赤ちゃん。近づいてきたイヌとの、手と手のコミュニケーション。駐車場に居合わせ、共に見とれた沖の夕陽。手をつなぎあう父子。微笑を浮かべ、無言で歩くカップル。はじける笑顔、ふざけあう女学生。見ているだけで、心が温かくなります。お金をかき集め、物に取り囲まれ、人の注目を浴びる。それだけが、幸せというわけではありません。幸せの形は、実に多様です。今日の糧も乏しいアフリカの子ども達が、なぜ、あんなに明るいのか。誰もが不幸と思える状態でも、人間は、幸せを感じることができます。こんな惨めな思いをするなら、死んだ方がましだ。いえいえ、そうでもないのです。こんなに頑張っているのに、なぜ、幸せになれないの。確かに、物はあったほうがいいですが、無くても不幸とは限りません。小さい頃の夢は何でしたか。こうしたい、ああしたいと、様々に夢見たことでしょう。夢見るだけでも幸せだった、そう思いませんか。幸せの形を決めすぎるところに、一つの不幸があります。ベッドに縛り付けられた状態でも、幸せを感じることはできます。処刑を待つ死刑囚にも、幸せはやってきます。心の問題なのです。財の多寡を競う必要はありません。能力の優劣も競う必要はありません。にわか雨を恨むのか、楽しむのか。身近の生き物を邪魔にするのか、いとおしむのか。周囲の人を無視するのか、温かく見守るのか.。心のあり方で、違って見えるのです。今いるこの場所も、何処にでもある平凡な場所かもしれません。でも、青空があり、風が吹きます。周りにいて、常にふれあうのは、これといって素晴らしいものを持たない人達です。でも、そこにいて、同じ時を過ごしているのです。今、ここにいられる幸せ、そして、時を共に過ごす幸せ、そういう小さな幸せもあるのです。