「抱きしめながら」

 

夏の盛りを

よく生きた

ほんとうに

よく生きたと思う

 

蝉が一匹

透きとおる羽を

乾いた地面の上にひき

六本の脚を空に向け

かきかき かきかき

何かをつかもうとしていた

 

脚をぎゅっとして

見えないものを

抱きしめながら

動かなくなった






      
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