半透明の半分の馬
白い馬が半分になっていた
凍った湖面に下半身を沈め
上半身もすでに半透明になってきている
ところがやっこさん
のんきに氷柱を前足で抱え
前歯でシャーシャー
摩擦音を奏でているのだ
その透きとおる音を聞きつけ
雪山を降りてきたつむじ風が
引き上げる力は自分にないので
たてがみの霜を払ってやりながら尋ねてみた
どうして氷を削っているのですか?
いいえ、私は歯を磨いているのです
青い眼まで氷のような
生涯嘘をついたことがないだろう
天使のつるつるの馬はそう答えた
つむじ風はその答えに満足したわけではなかったが
色んな世間を渡ってきているので
そんなものだろうと思い
つまりだれでも死ぬ前はそんなものだろうと考え
命あるとはこんなものだとも感じ
同情はすまいと結論し
美しい半透明の半分の馬をおきざりにするしかなかったのだ
(2003.2.25)