この世の遊園地には
もう飽きていたけど
お互いの体がお互いに
玩具であることの発見
この世に
人を果物にして
その薄皮をはぐような
快楽があると
夏の休みに
二人はお互いの皮を
しゅるしゅるむいた
これは愛ではないけど
愛している振りをして
これは恋の物語ではないけど
物語にしてしまおうと
ひと夏の共犯だった
明日に残るのは愛でもない
快楽でもない
断じて恋物語でもない
そんなことは
二人は知っていた
若いけれど もう
未来から今を見ていた
文化祭のつまらない映画のように
すべてまねして作られて
忘れられていくことを
正気に戻り
羞恥を取り戻したのは
別れのプラットホーム
車掌の
鋭い笛が鳴り
別れの一瞬だった
「死ぬまで忘れないでね」
と、食べ尽くされた君
初めて君の真顔を見たようだった
愛などないのに泣けるんだ
愛などないから泣けるんだ
飛び乗った君の肩甲骨が
閉まるドアにあたり
もう一度 車掌の
ホイッスル!
快楽はことごとく忘れてしまった
覚えているのは やぼな
一生に一度のホイッスル
(2002.12.1「愛でも恋でもなくて」を改題))