産卵



嘆き悲しむような夕日が沈みました
秋の終わりの冷たい風が
紫色の草むらを揺らめかせております
わたしは忘れられたコオロギです

希望はないのです
愛だの恋だのと
ふざけた唄はもう忘れました

かさこそして
わたしより重い枯葉をめくります
真っ暗な大地の中心をめざして
ゆるり 卵管をさしこみます
わたしの管は
真っ赤に焼けた剣のように輝いております

美しすぎる星のまばたきを見据えながら
ぷつ ぷつ ぷつと
いとしいわたしの卵を産みつけます

わたしはコオロギですからお祈りはできません
そのかわりひとつ命を生むたび
誰かの祈りが聞こえるのです

怖ろしいほどの静寂に包まれて
この苦しみの意味
この哀しみの意味を

わたしは ひとりぼっちで
もうすぐ死ぬでしょう
暗い地につながりながら
美しい天を仰ぎ見て

(2002.7.7.しろうおさんへ、ふくろう)

センチメンタルキャメラ