台湾先住民族権利宣言

 

台湾先住民族権利促進会1987年討論1988年発表

中国語からの翻訳:中村 平

 台湾先住民族は炎帝や黄帝の子孫[1]ではありません。先住民は南島語系(オーストロネシアンまたはマラヨ・ポリネシアン)に属し、自分たちを炎帝や黄帝の子孫で、かつ漢族に属していると考える閩南人、客家人と外省人とは異なります。

 台湾先住民族は台湾島の主人です。西暦1620年に外来勢力が侵入する前、先住民は台湾島の唯一の主人でした。西暦1624年にオランダとスペインが台湾に入り、1949年に中華民国政府が台湾に移るまでのおよそ四百年間、オランダとスペインは強力なモノの力と熱狂的宣教により先住民に影響を与え、鄭氏と清帝国は漢人の圧倒的な人口とより効率的な農耕と土地経営の技術により先住民を脅かし、日本はその南洋植民地の目標にのっとり、台湾の経済資源を開発する行動により先住民を圧迫しました。中国が台湾を取り戻した後は、「台湾は中国に属す」という理念と「先住民の漢化は絶対の真理」という信念のもと先住民を同化しようとしました。台湾先住民族は台湾島の「唯一の主人」、「主人のひとつ」から、主人の地位を完全に失うところまで来ました。

 台湾先住民族は現在、種族絶滅の大きな危機に直面しています。西暦1949年中華民国政府が台湾に移った後、この四十年余り、執政当局の憲法の精神に違反する同化政策により、更に台湾先住民族の生計と生産方式が市場をその傾向とする資本主義経済体系に巻き込まれ、台湾先住民族の経済・社会システムはこれまでになかった挑戦にさらされています。今日、台湾先住民族が直面している経済的搾取、社会的差別、政治的圧迫および文化的軽視は、既に台湾先住民族を民族絶滅の危機にさらしています。

 

 上の情勢に基づき、「台湾先住民族権利宣言」の声明を特にここで行う。

 

1.        先住民の一切の人権は尊敬を受ける必要がある。

2.        先住民は生活上の基本的保障権(生存権、仕事の権利、土地権、財産権と教育権を含む)、自決権、文化アイデンティティ権を有する。つまり、自己の政治的地位を決定し、自由に自己の経済、社会と文化発展の方向を希求する権利を持つ。これらの権利は、強権的システムの圧迫や侵犯を受けてはならず、剥奪されてはならない。

3.        台湾先住民族の伝統的居住地域は、区域自治を実行する。自治機関の発達と、先住民事務を主管する行政機構は中央レベルのものとなす。国家は先住民が自治権を行使すること、ならびに先住民が政治、経済、社会と文化の各方面での発展を十分に保障しなければならない。

4.        国家の各種議会はすべて、先住民各族の代表を有しなければならない。各種議会のうち、先住民の各議案に関しては、先住民代表が最終的否決権を持つ。

5.        国家は「同化ではなく尊重、圧迫ではなく平等」の先住民政策を制定しなければならない。

6.        先住民の地位と権利は、国家がこれを立法し保障する。

7.        国家は先住民の人口、地域と社会組織を承認しなければならない。

8.        先住民は土地と資源の所有権を有し、法的ではなく奪われ占拠されたすべての土地は、先住民に返還されなければならない。

9.        土地権は、地上、地下と海域を含む(国際法の制限に則る)。

10.    先住民は、自分たちの資源を利用し先住民の需要を満足させる権利を有する。

11.    先住民は、誰が先住民であるかを決定する権利を有する。

12.    先住民は、自分たちの社会組織の構造と権利の範囲を決定する権利を有する。

13.    先住民の文化は、全人類の祖先から受け継いだ財産である。

14.    国家は先住民の文化と習俗を尊重しなければならない。先住民は自分の言語、文字を発展させ、自分たちの風俗習慣を維持あるいは改革する自由を持つ。

15.    先住民は、自分の母語で教育を受け、自分たちの学校を設立する権利を有する。国家は先住民の母語の平等な地位を尊重しなければならない。先住民の住む地域は、各民族語と漢語の双方の併用による教育政策をとらなければならない。

16.    先住民は、自己の民族語と文字を使用し、訴訟を進める権利を持つ。裁判所は、台湾地区において通常使われる言葉と文字に通暁していない先住民当事者に対し、通訳と翻訳を行わなければならない。

17.    先住民は、固有の姓・氏名を回復する権利を有する。



[1] 原文「炎黄的子孫」。中国語で「炎黄子孫」と言えば、一般に中国人を指す。